国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)総会が、パレスチナの加盟を賛成多数で承認した。
主要な国連機関で、パレスチナの正式加盟が認められたのは初めてだ。自治政府のマリキ外相は採決後、「歴史的な瞬間だ」と意義を強調した。
パレスチナは、独立国家としての国際的な承認取り付けに拍車をかける戦術として、ユネスコ加盟を狙ったのだろう。
パレスチナは、将来の国家領土と考える、ヨルダン川西岸にある聖書ゆかりの史跡をユネスコ世界遺産に登録させたい立場だ。その動きに弾みがつくのは確実だ。
だが、加盟によって、かえって肝心の和平交渉が遠ざかることになりはしないか。懸念は残る。
反対票を投じた米国は、ユネスコ予算の支払い停止を表明した。イスラエルとの和平合意がない現状で、パレスチナを国家扱いする国連機関には資金拠出を禁じる法律があるからだ。
イスラエルも強く反発した。報復措置として、ヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地建設を加速することを決めた。
この背景に、パレスチナが9月に申請した国連加盟問題がある。安全保障理事会で審議中だが、米国は拒否権を行使する構えだ。
パレスチナは、加盟が比較的容易なユネスコに入ることで、国連加盟問題での立場を強めようとしたのではないか。
パレスチナでは、和平プロセス停滞などからアッバス自治政府議長の人気が低迷していたが、国連加盟申請で上向いている。
その支持の広がりを、パレスチナの政治的分裂状態の解消へつなげることが、議長の課題だ。
自治政府が統治するのはヨルダン川西岸だけで、地中海に面したガザ地区は、イスラエルとの共存を認めないイスラム原理主義組織ハマスの支配下にある。
この現状を正さないことには、イスラエルとの交渉は進むはずもあるまい。
一方、イスラエルは、パレスチナ側が交渉開始の前提とする、入植凍結に応じるべきだ。
パレスチナにとっての究極の目標は独立国家の樹立だ。それにはやはり、イスラエルとの交渉で、領土や首都を確定し、共存を図るしか現実的な方策はない。
米、露、欧州連合(EU)、国連の4者は、両者を交渉の場に着かせる努力を倍加すべきだ。パレスチナのユネスコ加盟に棄権を表明した日本も、交渉再開への支援を惜しんではならない。
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