中間貯蔵施設 除染の促進で生活再建を急げ

毎日新聞 2011年11月01日

中間貯蔵施設 「3年後をメド」着実に

政府は、放射性物質に汚染された土壌や廃棄物の処理についての工程表を発表した。

放射能汚染の拡大を踏まえて、環境省は一時、福島県を含む8都県に汚染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の設置が必要との認識を示したが、福島以外は既存の処分場を活用する方針に転換した。

来年度中にも福島県内の中間貯蔵施設建設場所を決め、3年後をメドに運用を始める方針という。

避難を余儀なくされている福島県民の帰還を実現するため、被ばく線量が年間1ミリシーベルト以上の地域は、国が責任を持って除染するという政府方針の実行は欠かせない。だが、汚染廃棄物の保管方針が決まらなければ、除染は進まない。政府には工程表の着実な実行を求めたい。

工程表では、中間貯蔵施設に移すまでの市町村ごとの仮置き場での保管を「3年程度」と明示した。これによって、長期化を懸念して多くの市町村で決まっていない仮置き場の設置が進むと期待する声がある。また、政府は福島県内にある国有林を用地として提供する姿勢も示す。

だが、たとえ仮置き場とはいえ、地域の利害が絡み合う。設置が順調に進むとは限らない。廃棄物の適切な保管方法を示すことはもちろん、周辺環境の安全性についても、政府が積極的にかかわって説明を尽くし、地元住民の不安解消と理解に全力を挙げるべきだろう。

その後にまず立ちはだかるのが、中間貯蔵施設の場所選定だ。除染の範囲が広がったため、最大東京ドーム23杯分という収容量の試算がさらに膨らむ可能性がある。

福島県の佐藤雄平知事は「精査させてほしい」と、回答を留保した。その上で、施設の規模や条件を早期に明示することを政府に求めた。当然の反応だ。

工程表によると、最長30年保管することになる施設だ。しかも、その後、県外に運ぶという最終処分場のメドは全く立っていない。地元には、そのまま最終処分場にされてしまうとの懸念が強い。

中間貯蔵施設の周辺環境をいかに整備し、地域の振興をどう図るのか。県や市町村の声をしっかりと受け止め具体化しなければ、場所の選定は前に進まないだろう。

また、通常の処分場でなく、放射性廃棄物を長期にわたって保管する役割を持つ。地元住民に対し、持ち込まれる廃棄物の汚染濃度や、水や大気の環境モニタリング結果について繰り返し丁寧に説明することが何より肝心だ。安全を徹底するため、施設の管理・運用にできるだけ地元住民にかかわってもらう姿勢も、政府は示してほしい。

読売新聞 2011年10月31日

中間貯蔵施設 除染の促進で生活再建を急げ

東京電力福島第一原子力発電所の事故で放射性物質に汚染された土壌などの処理には、長期間の埋設が可能な中間貯蔵施設の設置が不可欠だ。

細野環境相は29日、この施設整備について、「3年程度をメドに福島県内に建設する」との工程表を佐藤雄平知事らに提示した。

施設設置のメドを示したのは、住民の不安を軽減するためだろう。汚染土の受け皿を可能な限り早期に設けてもらいたい。

それが、住民の生活再建の第一歩となる除染を円滑に進めることにもつながる。

大切なのは、中間貯蔵施設設置までの仮置き場の確保だ。用地選定が容易ではない。周辺住民の間には「ずっと置かれ続けるのではないか」といった懸念も強い。

林野庁は、国有林を仮置き場用地として自治体に無償貸与する方針だ。仮置き場の確保にも政府が積極的に関与していくべきだ。

用地確保が難しいのは、中間貯蔵施設も同じである。工程表に設置場所は盛り込まれなかった。候補地さえ絞り込まれていない。

佐藤知事は、細野環境相に対し、貯蔵施設の立地の条件や規模を早急に明らかにするよう求めた。設置には、数キロ・メートル四方の用地が必要との見方もある。

環境省は遅くとも来年度中に設置場所を特定する方針だ。そのためには、中間貯蔵施設の必要性や安全対策を丁寧に説明し、県などの理解を得なければならない。

工程表は、中間貯蔵施設での保管期間を30年以内と規定している。その間に、福島県外に最終処分場を確保するという。県内での最終処分に反発する県や地元に配慮したものだろう。

除染をいかに効率的に実施するかも、今後の重要な課題だ。

今月、除染現場を視察した国際原子力機関(IAEA)調査団は「どこを除染すれば住民の被曝(ひばく)線量低下に最も効果的か」を考えるのが重要だと指摘した。森林など効果の低い場所の過剰な除染は避けるべきだとも提言している。

効率化すれば、最大で東京ドーム23杯分にもなると予想される汚染土を減量できるし、一括保管する中間貯蔵施設の規模を抑えることも可能になろう。

一方、環境省は、中間貯蔵施設を福島県以外には建設しないことを決めた。

福島県周辺や首都圏の除染作業で出た汚染土などは、その都県内の既存の廃棄物処分場に埋設する方針だ。こうした処分場の安全対策にも万全を期す必要がある。

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