サイバー攻撃 情報共有し防御対策に生かせ

毎日新聞 2011年10月28日

サイバー攻撃 防御の基本動作徹底を

「標的型」と呼ばれる情報の窃取を目的とした電子メールが防衛関連企業に送られ、外務省や在外公館も攻撃の対象となっている。さらには、衆院議員の公務用パソコンや衆院のサーバーでもウイルス感染が確認されている。サイバー攻撃に対する備えが改めて注目されている。

ワクチンソフトの導入のほか、他から取り込んだ情報やプログラムが本体に残らないようなパソコンを使用する企業が増えるなど対策もとられている。

今回、問題となっているのは、防衛産業や外務省、在外公館といった機密情報を扱う機関が「標的型」の攻撃を受けて被害も出ているうえ、国会のシステムへも不正侵入が行われ、公的部門の備えへの疑問が生じているからだ。

政府は、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)を設置して政府内のシステムの監視と政府機関内での情報共有や連携を進める一方で、総務省や経済産業省がそれぞれ対策をとり、警察庁が取り締まりの役割を担っている。

ネットワークの弱点を突いて侵入するケースでは、弱点を取り除きシステムの安全性の向上を図ることが不可欠だ。しかし、メールに添付されてくるファイルや、ウェブサイトの住所にあたるURLを不用意に開いてしまい被害に至るケースが多くみられる。

そのため、政府は現在、標的型の不審メールを模したメールを政府機関の職員に送り、ファイルの開封など不適切な行為をした場合には、教育用の画面に誘導するといった訓練を行っている。

ただし、国会側の対策は政府とは別という。三権分立だからだそうだが、統一した対応が必要ではないだろうか。

日本の場合、政府の対策は政府が指示や徹底を促すという枠組みが多いように感じる。NISCを設けているものの、具体的な対策は総務省や経産省というように縦割りの弊害も指摘されている。官民が一体となってサイバー攻撃のリスクを軽減する統括的な仕組みを求めたい。

政府機関の職員への訓練には遅すぎの感もある。しかし、USBメモリーの使い回しを防ぐといった基本動作の徹底が必要で、教育の強化を進めたい。また、高いセキュリティー技術を持つ人材育成も欠かせない。

「ハッカー」は本来ならコンピューター技術に精通した人々に対する尊称だが、他人のコンピューターのデータやプログラムを盗み見たり、改ざんや破壊を行う「クラッカー」と混同されている。「ハッカー」を危険視するのではなく、彼らに協力を求めることも重要だ。

読売新聞 2011年10月27日

サイバー攻撃 情報共有し防御対策に生かせ

日本の安全を脅かすサイバー攻撃が拡大する様相を見せている。

三菱重工業など防衛産業へのサイバー攻撃が判明したのに続き、衆議院のサーバーや議員の公務用パソコンのウイルス感染が発覚した。

アジアや北米などの在外公館でも今年6月以降、コンピューターが外部から情報を抜き取るウイルスに相次いで感染していた。

防衛、内政、外交の各分野の機密情報を標的にしたサイバー攻撃の可能性が高い。

極めて深刻な事態だ。サイバー攻撃に対する防御体制の構築を、重要な国家戦略として位置づける必要がある。

それには、まず官民が連携して情報を交換、共有することが大事だ。攻撃の手口を分析し、迅速に対策を講じなければならない。

経済産業省は25日、三菱重工やIHIなどの防衛関連企業と情報セキュリティー会社で構成する情報共有の会議を発足させた。

被害情報の相談窓口を設けて専門家がウイルスの特徴を調べる。企業秘密保持を前提に会員企業へ情報を提供し、二次被害防止に役立ててもらうのが狙いだ。

警察庁も8月、国内企業4000社と情報共有のネットワークを作った。こうした仕組みを有効に機能させねばならない。

政府は、内閣官房情報セキュリティセンターで各省庁の情報を集約している。しかし、セキュリティセンターが十分に役目を果たしているとは言い難い。

今回の在外公館のウイルス感染については、報道される直前まで外務省からの報告はなかった。衆院事務局も「立法府が行政府に報告する立場にない」として被害情報を提供せず、警察当局にすら相談していなかった。

情報共有の遅れが新たなサイバー攻撃を助長し、感染の拡大にもつながる危険があることを、関係機関は肝に銘じてもらいたい。

個々のパソコンの利用者も、ウイルス感染に十分な注意を払う必要がある。不審な添付ファイルを不用意に開封して感染するケースが後を絶たない。

本人が気づかないうちに個人パソコンが感染し、大規模なサイバー攻撃に悪用された例もある。

最近のサイバー攻撃は新種のウイルスを使ったり、海外のサーバーを経由させたりするなど巧妙化かつ複雑化している。

防御システムの開発を進めるとともに、サイバー空間の監視を怠らず、国際的な捜査連携を深めていくことが肝要だ。

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