オリンパス 早く真相を明らかに

朝日新聞 2011年10月28日

企業の規律 形だけでは信頼戻らず

日本企業への国際的な信用が失墜しかねない出来事が相次いでいる。

精密機器大手のオリンパスでは、過去の企業買収をめぐる不透明な資金の流れが明らかになった。社長を務めていた英国人のマイケル・ウッドフォード氏が、当時の菊川剛会長にこの問題を追及したところ、突然、解任されたという。

問題となっている企業買収は4件。このうち英医療機器メーカーの買収には約2100億円かかったが、その3割にあたる666億円が助言会社に払われた。数%といわれる業界相場をはるかに超えている。

他の3件は国内のベンチャー企業。計734億円を投じながら、企業価値が目減りしたとして557億円もの損失処理をしていた。そもそも何のための買収だったのか、疑念が膨らむ。

菊川氏は買収が適正だったと主張し、「日本の企業文化を理解しない」とウッドフォード氏を切り捨てた。しかし、買収をめぐる謎は深まるばかり。株価が急落し、社長兼務となっていた菊川氏はトップを辞任した。ただ、「不正行為は一切ない」とし、新社長からも買収について納得のいく説明はない。

ウッドフォード氏は日英などの関係当局に調査を要請している。証券取引等監視委員会は厳正に調査すべきだ。

経営トップの不祥事では、大王製紙でも創業一族の会長が子会社から個人的に100億円を超す借金を重ねて辞任し、東京地検特捜部が捜査に動く事態に発展している。

日本ではバブル崩壊後、企業事件が相次ぎ、株主代表訴訟なども相まって経営規律が強く迫られるようになった。

08年度からは、日常業務から不正を除くため、米国の法律にならって、内部統制を強化する日本版SOX法が施行された。社内の不正に声をあげるよう促す内部通報制度の導入も広がっている。

しかし、経営トップを監視する仕組みには、なかなか妙案がない。社員OBが就くことが多い監査役制度は以前から効果に疑問が持たれている。社外取締役の起用も、機能しているとはいえない。

オリンパスは第三者委員会を設けて真相を究明するという。だが、九州電力のやらせ問題でもわかるように、立派な委員会を作っても、経営陣の意識が変わらなければ意味がない。

形だけの取り繕いを続けると、ますます信用を失う。経営陣は株主、従業員、そして社会への責任を自覚してほしい。

毎日新聞 2011年10月26日

オリンパス 早く真相を明らかに

オリンパスの経営に国内外から厳しい目が向けられている。発端は英国人社長が突然解任されたことだが、その背景に加え、過去の企業買収にからむ不可解な資金の流れなど、謎が次々と露呈したためだ。

オリンパスの株価は25日、8営業日ぶりに反発したものの、社長解任前の半値以下の水準である。2週間足らずで、時価総額にして約3500億円を失った。グローバル・ブランドであることから海外メディアの関心も高く、日本企業のイメージダウンにもつながりかねない状況だ。オリンパスには迅速で徹底した真相解明と情報開示を求めたい。

菊川剛社長に「強いリーダーシップ」を期待されてウッドフォード氏が後任社長に就任したのはわずか半年前のことだ。突然の解任について菊川氏は「コミュニケーションや文化の壁」といった経営手法の違いを挙げたが、ウッドフォード氏は、過去の買収をめぐる不明朗な支出を調べ、菊川氏の責任を追及したことが理由だとメディアに説明している。

ウッドフォード氏が特に問題視したのは、08年の英医療機器メーカー買収でオリンパスが海外の投資助言会社に支払った金額の大きさや、同時期に行った国内3社の買収の経緯だ。オリンパスは「取引に不正や違法性はない」としているが、不自然と言わざるを得ない点が多すぎる。

英メーカーの買収では、なぜ通常の助言手数料の数十倍にも相当する額を支払ったのか。さらに優先株の売買を伴う支払い手法も分かりにくい。国内3社の方は、オリンパスの事業との関連性が薄いものばかりであるうえ、買収後わずか1年で560億円もの減損処理に至るなど、株主に重大な不利益を負わせた。それにもかかわらず同社は、これまで詳細を開示してこなかった。

気がかりなのは、今回の問題が、日本企業の経営風土を象徴する例として海外で報じられていることだ。事実究明が長引けば、「日本の企業社会は相変わらず情報開示に消極的で事なかれ主義だ」とのマイナスイメージを増幅させかねない。

オリンパスは弁護士などによる第三者委員会を作り調査するというが、時間稼ぎや自己正当化の道具となってしまえば、市場の信頼は一段と低下することになろう。

米英のメディアによれば、助言会社への支払いについて米連邦捜査局(FBI)が調べに入ったという。一方、ウッドフォード氏は重大な詐欺などを調査する英国の機関に今回の件を報告すると同時に、日本の証券取引等監視委員会にも関係資料を送付したそうだ。監督当局の厳正な対応も、日本の企業社会に対する信頼を培う上で欠かせない。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/866/