民主党政権のもとで重要政策の停滞が目立っている。政策決定の「司令塔」を機能させることが肝心だ。
政府は21日、主要政策の基本方針を策定する「国家戦略会議」の新設を閣議決定した。月内をメドに初会合を開く。
野田首相を議長に、主要閣僚、日銀総裁、有識者、財界人、労組代表がメンバーだ。産官学の知恵を生かす狙いだろう。
これに伴い、新成長戦略実現会議など18会議を廃止した。
民主党政権では、類似した会議が複数作られ、バラバラに議論されてきた。政策決定過程が不透明で、責任の所在も不明確だ。それを反省し、政策を総合的に立案する体制を整えることは正しい。
東日本大震災からの復興や経済成長の回復に向けて、政策課題は山積している。「国家戦略」の看板にふさわしい成果を、着実に出してもらいたい。
当面は、年内に策定する日本再生戦略が主要テーマとなる。菅政権時代にまとめた成長戦略は、各府省の政策の寄せ集めだった。民間の声を取り込み、実効性の高い戦略に練り直さねばならない。
超円高と海外経済の減速の影響で、このところ、景気はもたつき始めている。21日の外国為替市場で、円相場は一時、1ドル=75円台後半に急騰し、戦後最高値を更新した点も懸念される。
政府は中小企業支援などの円高の総合対策をまとめたが、対症療法が中心だ。戦略会議では、効果的な為替介入を含め、円高是正や産業空洞化策について、さらに深く検討すべきである。
電力不足を解消するための原子力発電所再稼働、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加決断など、緊急性の高い課題は多い。
来年度当初予算の編成方針や、消費税率引き上げを含む社会保障と税の一体改革などにも道筋をつけなければならない。
首相がリーダーシップを発揮して論議を加速させ、具体的な政策実現につなげる必要がある。
重要なのは、戦略会議の決定に「重み」をもたせることだ。
自公政権で政策の推進役となった経済財政諮問会議は、内閣府設置法で規定され、首相への意見具申や各府省への資料提出要求などの権限を持っていた。
これに対し、戦略会議の設置は閣議決定されただけで、法的な根拠がないのは心もとない。
戦略会議を法律で定め、役割や権限、責任の範囲を明確に位置づけることが求められる。
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