環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題をにらみながら、農林水産業をどう立て直し、競争力を高めていくか。
政府が「再生のための基本方針・行動計画」をまとめた。高関税に守られたコメ農業を念頭に置きつつ、今後5年間の取り組みが記されている。
ただ、具体策に乏しい。栽培から加工、販売まで手がける「6次産業化」を後押しする官民共同ファンドの設立を打ち出した程度で、長年の課題集といった趣だ。
真っ先にあげられたのは「ヒト」と「土地」の問題である。
仕事として主に農業をしている人は平均年齢が66.1歳に達し、70歳代後半~80歳代の昭和1ケタ生まれが4分の1強を占める。このままではあと数年で農家が大幅に減ってしまう。
農家の耕地面積は平均で2.2ヘクタール。欧州連合(EU)の2割弱、米国の1%程度だ。一方で、耕作放棄地は39万ヘクタール強と、埼玉県の面積に匹敵する。
若い世代を呼び込みながら規模を拡大するには、企業の力をいかすことが有力な解になる。
個人で農地や資金を確保するのは容易ではない。基本方針には、就農者への支援の充実に加え、法人に雇われる形での就農促進が盛り込まれた。
規模拡大では、「平地で20~30ヘクタール、中山間地域で10~20ヘクタール」と、今の10倍程度に広げることを掲げた。集落単位での経営を前提とした目標で、その担い手の一つが法人だ。
しかし、どうやって法人経営を広げるのか、具体策がない。
農業生産法人の設立や一般企業の農業参入は、09年の改正農地法で規制が緩和された。
生産法人では、小売りや食品加工など農業に関連する企業を対象に出資制限が緩められたが、それでも50%未満。生産法人の役員の過半は常に農業にかかわらなければならない。一般の企業には農地の所有が認められておらず、一定の条件を満たしながら賃借するしかない。
財政難の中、農業予算には限度がある。一般の企業が農業にかかわる際の制約を減らし、民間資本をもっと引き込みたい。農業関係者は「企業はもうからないとすぐに撤退する」と反対するが、農業で収益があがる仕組みを整えるのが第一だ。心配なら、農業経営を一定期間続けるよう義務づければよい。
大規模化を進めるには、バラマキ色が強い戸別所得補償制度を見直すことも欠かせない。
農業再生への取り組みは時間との戦いである。思い切った改革を急がねばならない。
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