北アフリカのリビアで42年にわたり最高権力者として君臨してきたカダフィ氏が殺害された。
内戦勃発から8か月、「アラブの春」と呼ばれる中東・北アフリカの変革の波は、ついにカダフィ時代の終わりをもたらした。
反カダフィ派組織の国民評議会は、出身地シルテに潜伏していたカダフィ氏が反カダフィ派兵士に拘束された後、銃撃戦で死亡したと説明している。
反対派を容赦なく弾圧してきたカダフィ氏に対しては、国際刑事裁判所から「人道に対する罪」で逮捕状が出ていたが、結局、法廷に立つことはなかった。
その死は、強権をふるう大統領が権力を手放さないでいるシリアやイエメンにも、何らかの影響を及ぼすだろう。
ほぼ全土を掌握したのを受け、リビアの国民評議会は22日にも全土解放を宣言する。カダフィ後の政治体制を速やかに構築することが最優先課題である。
憲法や選挙による議会制度を持たないリビアは、いわばゼロからの出発だ。
国民評議会自体、寄り合い所帯でまとまりがない。9月には暫定政権発足を目指したが、閣僚人事の調整ができず、失敗した。
親欧米の世俗勢力とイスラム勢力の軋轢や、根強い地域・部族対立に起因する権力争いがすでに始まったとの指摘もある。カダフィ政権関係者を過度に排除すれば、混乱が広がる恐れもある。
国民和解を優先し、暫定政権をまず発足させ、選挙など民主化日程を決めていく必要がある。
治安の回復も重要だ。評議会は、傘下各派の民兵を軍や警察の指揮系統に組み入れ、育成していかねばならない。
内戦中、携行型地対空ミサイルなどの火器類が散逸したことも懸念される。大量に拡散した小火器を含め、武器回収が急務だ。
リビアは石油の確認埋蔵量世界8位の資源国だ。その富を有効に生かし、自由や基本的人権も保障して、国民が民主化の果実を実感できる政治体制が求められる。
カダフィ政権の崩壊には、北大西洋条約機構(NATO)が英仏主導による空爆などで決定的な役割を果たした。英仏は責任を持って、新体制作り、民主化プロセスを支えなくてはならない。
日本もリビア再建に貢献すべきだ。玄葉外相は医療分野で人道支援を行うと表明した。歴史的なしがらみが薄いからこそ、欧米とは違った支援も工夫できよう。
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