朝日新聞 2011年10月20日
臨時国会 政治の信頼 取り戻せ
国会議員の評判は、さんざんだ。いまに始まった話ではないが、東日本大震災このかた、ますますひどくなった。
先日の復興関係の参院中継を見た読者から、「まるで予算獲得の陳情合戦。いまの国会論議には政治哲学が欠けている」という意見が、この隣の声欄に寄せられていた。
未曽有の大災害の前には、与党も野党もない。みんなで力を合わせて難局をしのぐのだ。多くの国民はそう期待したが、そうはならなかった。
与党では内輪もめが起きて、首相が交代した。野党は政権を追い込むことに目の色を変えていた。そして、復興対策が遅れている。
これでは、「ダメ国会」の汚名を返上できるわけがない。
きょう、野田政権になって2度目の臨時国会が召集される。
復興対策の第3次補正予算案や、その財源確保のための増税法案、復興庁の設置法案などが主な課題になる。衆院の一票の格差を是正するための関連法案も控えている。
果たして、国会での審議はすすむのか。
新政権の「顔見せ」のようだった先月の18日間の国会とは違って、こんどは51日間の会期をとっている。それでも、早くも日程がきゅうくつだとの声が聞こえてくる。
補正予算案の提出が今月28日にずれこむうえに、復興増税の期間などをめぐり与野党の折り合いはついていないためだ。11月にはG20首脳会議など、首相が出向く国際会議も続く。
いずれは会期の延長も視野に入ってくるかもしれないが、ここはまず、与野党とも会期内に課題をこなすように努力してほしい。
なにも拙速に法案を成立させればいい、というのではない。ただ、閣僚の失言や国会運営の不備を理由に、野党が審議の日程を引き延ばすような駆け引きはもうやめよう。「55年体制の遺物」のような手法は、国会全体の評価を下げるだけだ。
とくに自民党は復興増税の中身について、水面下の事前折衝ではなく国会で議論したいといってきた。その通り、公の場で堂々と審議し、しっかりと結論を出せばいい。
もちろんそのためには、政府・与党側の誠実で丁寧な国会運営が欠かせない。野党が求めてきた、小沢一郎元民主党代表の国会での説明も速やかに実現するのが筋だ。
国会議員が信頼を取り戻すには、粛々と議論し、法律をつくって結果を示すしかない。
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毎日新聞 2011年10月21日
臨時国会召集 もう懸案を積み残すな
第179臨時国会が召集された。東日本大震災被災地の本格復興予算となる11年度第3次補正予算案のみならず、国会が放置してきた懸案に与野党がどこまで結果を出せるかが問われる。
震災復興の具体的な方向が決められ、野田佳彦首相が意欲を示す環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉参加などの課題が会期中に節目を迎える。自民党など野党にも論戦への建設的な参画を求めたい。
さきの国会が閉会してまだ3週間足らずで、しかも年明けに通常国会を控える。だからといって、決して「つなぎ」のような位置づけの国会というわけではない。
近く政府が提出する3次補正予算案は被災地の将来ビジョンを左右する極めて重要な予算だ。復興行政の担い手となる復興庁の設置法案や復興特区、住民の集団移転の制度化などもこの国会のテーマとなる。
復興問題の関心は財源問題に集中しがちだ。だが、そもそも「何をするか」の議論が重要なはずだ。政府の施策が本当に地域主体の復興に足る内容か、論戦を通じもう一度じっくりと吟味すべきだ。それが立法府の責任であろう。
これまで国会が放置してきた懸案も待ったなしだ。特に最高裁が違憲状態と判断した衆院の1票の格差是正や、国家公務員給与の約8%の減額はこの国会で「結果」を出さないと政党全体が不信に覆われかねない。危機感を持って対処すべきだ。
とりわけ野党、自民党がさまざまな懸案処理に担う責任は大きい。政治資金問題をめぐり民主党の小沢一郎元代表の国会での説明を強く求めることは当然だ。だが、国会の日程戦術を優先し、重要案件の審議が滞ることがあってはならない。
就任以来、発信の乏しい首相にも注文がある。さきの国会閉会後TPPへの参加問題が再浮上し、厚生労働省による厚生年金支給年齢の引き上げ案公表など重大な動きがあった。だが、首相から国民にていねいな説明がなされたとは言い難い。
原発政策で必ずしも方向性が明確でない首相の対応に師匠格の細川護熙元首相は「ねずみ色の旗じゃ困る」と苦言を呈している。所信表明演説では内外の課題にのぞむ指針をより踏み込んで語ってほしい。
国会召集にあたり衆参両院は憲法改正案の審査や発議を行う憲法審査会の委員を選任した。同審査会は国民投票法成立を受け置かれたが、委員はこれまで選ばれていなかった。
今すぐ改憲が政治日程にのぼる状況にはないが、冷静に議論を進め問題点を整理する機会でもある。当面の課題への対処と同時に、各党には論憲の輪を広げる努力も求めたい。
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読売新聞 2011年10月21日
臨時国会召集 自公も復興の責任を自覚せよ
不毛な与野党対立で、貴重な時間を浪費してはならない。
臨時国会が始まった。
会期は51日間。野田政権の国会運営と政策実現の力量が正面から問われよう。
震災の本格復興策である2011年度第3次補正予算案のほか、復興庁設置法案や国家公務員給与削減法案、選挙制度改革など重要課題が目白押しだ。国会に原発事故調査委員会が設置され、衆参両院の憲法審査会も動き出す。
最大の焦点は、臨時増税などによる巨額の復興財源で与野党が合意できるかどうかである。
民主、自民、公明3党の政調会長が協議を重ねている。参院で多数を占める野党の協力なしに法案の成立は難しい、というねじれ国会の現実を踏まえたものだ。
震災復興に向けて、自公両党も責任の重さを自覚すべきだ。
民主党と公明党の間では、たばこ増税や復興債の償還期間延長などで見解の差が縮まっている。自民党も譲歩して、早期合意を図ってもらいたい。
3党協議は、社会保障・税一体改革を実現するためにも必要だ。来年の通常国会で、消費税率を10%に引き上げる法案を成立させるには、このための3党協議を早期に開始する必要がある。
自民党は、安住財務相が主要20か国・地域(G20)の会議で、財政再建の具体策としてこの法案に言及したことに反発している。
民主党の政権公約(マニフェスト)になかった消費税増税の法案を出すのなら、衆院解散・総選挙で信を問うべきだと言う。
だが、自公政権の09年に成立した税制改正関連法の付則には、今年度までに消費税を含む必要な法制上の措置を講ずると明記されている。しかも、消費税率の引き上げは、自民党が政権に復帰すれば必ず直面する課題ではないか。
民主党が自民党に歩み寄っているのに、はね付けるだけでは「党利党略」のそしりを免れまい。
自民党は、政府・与党との対決姿勢を強めているが、公明党は必ずしも同一歩調ではない。自民党の強硬路線には限界があろう。
民主党も、小沢一郎元代表の政治資金規正法違反事件に関連する説明を求める野党側に対し、最大限配慮する必要がある。
日本は復興と原発事故という難問とともに、ギリシャ危機に端を発する世界経済の混迷にも適切に対処しなければならない。与野党は足を引っ張り合っている場合ではない。政治を前に動かす合意形成の道を真剣に追求すべきだ。
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