米韓首脳会談 日本のTPP参加促すFTA

毎日新聞 2011年10月20日

日韓首脳会談 摩擦小さくする知恵を

まずは無難な2国間外交の滑り出しになったのではないか。野田佳彦首相は韓国の李明博(イミョンバク)大統領とソウルで会談し、未来志向の日韓関係を引き続き目指していくことなどで一致した。困難な課題は少なくないが、さまざまな分野で交流を深めることで両国の絆を一層太くし、摩擦や対立を深刻化させない知恵を双方が出し合っていきたい。

今回の訪韓は野田首相にとって政権発足後初の、相手国との首脳会談を目的とする外国訪問だった。日本の首相が2国間会談のため訪韓するのは、09年10月の鳩山由紀夫元首相以来2年ぶりのことだ。

首相がまずどこに外遊するかは、その政権の外交姿勢と密接にからんでいる。初訪米前にアジア諸国をまわって足場固めをした岸信介首相、電撃訪韓で日韓関係重視を強調した中曽根康弘首相、対中関係改善のため中国を初訪問先に選んだ安倍晋三首相。最初の外遊を戦略的に活用した歴代首相は多い。

中国の台頭で不透明さを増す東アジア情勢などを考える時、野田首相が初外遊先を韓国としたのは賢明な判断だった。民主主義や自由、市場経済といった価値観を共有する韓国との緊密な関係は、日本のアジア外交の基盤でもある。「最も重要な隣国」(野田首相)である韓国との首脳相互訪問はもっと気軽に、頻繁に行われるべきだ。

野田首相の訪韓に続き、李大統領がシャトル外交の形で年内に訪日することも検討されるようだ。来年は韓国の総選挙や大統領選があり、政治家や世論が反日にふれやすい季節に入るが、首脳同士の信頼関係があれば、摩擦の芽を大きくさせないことも可能になる。今回の首脳会談で竹島の領有権問題や旧日本軍の元従軍慰安婦問題を取り上げなかったのは、双方の政治判断だろう。歴史や領土にかかわる問題は互いのナショナリズムに気を配りつつ、外交問題として先鋭化しないよう慎重に取り扱っていくべきである。

一方、欧州連合(EU)や米国との自由貿易協定など、グローバル化戦略で先行する韓国への焦りが日本側にあるのは否めない。その遅れを取り戻し、日韓経済連携協定(EPA)を軌道に乗せるためにも、日本は外に開かれた国として生きていくという外交戦略、国家戦略を早急に固めることが必要だろう。

安全保障でも経済でも、日韓は互いに切り離せない関係だ。東アジアを代表する二つの民主主義国家として、地域の安定にも責任を持っている。政治や経済だけでなく、文化や人的交流も含む両国間のパイをもっと大きくし、摩擦や対立を相対的に小さくする努力を重ねたい。

読売新聞 2011年10月20日

日韓首脳会談 未来志向で成果を上げたい

様々な懸案がある時だからこそ、日韓の首脳が頻繁に会い、率直に意見交換することが大切だ。未来志向で建設的な協議を重ね、両国間の課題を一つ一つ前進させたい。

野田首相がソウルを訪問し、韓国の李明博大統領と会談した。首相が、国際会議出席を除く最初の外遊先に韓国を選んだのは、野田政権として韓国重視の姿勢を鮮明にしたものと言える。

台頭する中国と向き合い、北東アジアの平和と安定を確保するには、日韓両国が緊密に連携するとともに、米国との同盟関係を強化することが戦略的に重要だ。

民主党政権で2年間中断していた日韓首脳のシャトル外交を復活させたことは、前向きな動きと評価できよう。

首脳会談では、2004年に中断した日韓経済連携協定(EPA)交渉の再開に向けて実務者協議を加速させることで合意した。

EPA交渉の再開は、08年の李大統領就任以来の課題だ。韓国は米国や欧州との自由貿易協定(FTA)締結を優先し、対日赤字拡大への懸念から日韓EPAには消極的な姿勢を続けている。

日本が本気で交渉再開を目指すなら、韓国側の関心の高いノリなど農水産品市場の開放や非関税障壁の廃止など、国内産業の痛みを伴う措置にも、相応の覚悟を持って取り組む必要がある。

大胆な市場開放は、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加にも欠かせない。日韓EPAと同時並行で取り組むべきだ。

北朝鮮の核と拉致の問題で、日韓両首脳は、双方が引き続き連携していくことで一致した。

重要なのは、ウラン濃縮活動の停止や核施設の査察といった具体的な行動を北朝鮮から引き出すことだ。拉致問題でも、情報共有などの日韓協力が可能だろう。

日本との関係を重視する李大統領の13年2月までの任期中に、一定の成果を出したい。

李大統領は「韓日間には難しい懸案がある。首相は積極的姿勢で臨んでおり、期待している」と語った。「懸案」は、従軍慰安婦問題を念頭に、あえて直接の言及を避けたと受け止められている。

首相は「大局的見地で前進させる気持ちがあれば、困難な問題は乗り越えられる」と応じた。

歴史認識をめぐる問題が日韓関係全体に悪影響を及ぼすのは避けることが肝要だ。ただ、民主党政権は、関係改善を重視して、韓国に過剰な配慮や譲歩をする傾向がある。この問題では禁物だ。

読売新聞 2011年10月16日

米韓首脳会談 日本のTPP参加促すFTA

経済関係の強化によって米韓同盟は新たな次元へ深化したと言える。

韓国の李明博大統領がワシントンでオバマ米大統領と会談し、米韓の自由貿易協定(FTA)の早期発効を目指すことで一致した。

米韓FTAは4年前にいったん合意したのに、批准が遅れていた。首脳会談の前日、米議会が実施法案を可決し、韓国も年内の国会承認を目指している。来年1月にも発効する見通しだ。

発効から5年以内に、95%の物品で両国の関税はゼロとなる。

オバマ政権は、米韓FTAによる経済効果を、年間110億ドル(約8500億円)、7万人以上の雇用創出と見込んでいる。

来年11月の米大統領選に向け、失業率が9%に高止まりする中、雇用は米政権の最優先課題だ。カナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)以来の大型FTAにかける期待は大きい。

韓国も、国内総生産(GDP)を5・7%押し上げ、35万人の雇用増につながると試算する。欧州連合(EU)とすでにFTAを発効させた韓国は、市場圏拡大で輸出に一段と弾みがつこう。

韓国は、交渉中のものまで含めるとFTA相手国・地域との貿易額は全体の6割以上に達する。4割に満たない日本の出遅れが目立つ。日本の自動車など輸出産業界が、韓国企業との競争で不利な条件を強いられることに危機感を募らせるのも当然だ。

野田首相は、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を、速やかに決断すべきである。

オバマ大統領は来月、ハワイでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を機に、TPPの大枠合意を目指している。

米国にとってTPPは、世界経済の成長拠点であるアジアで、米国が主導する経済圏を作り、影響力を強めようとする中国を牽制(けんせい)する狙いがあろう。

地政学的にも、中国に近接する同盟国・韓国との関係強化は大きな意味を持つ。米国が主要20か国・地域(G20)首脳会議のソウル開催を後押しし、米韓同盟を「太平洋地域の安全保障の礎」と位置づけるのも韓国重視の表れだ。

米韓首脳は今回、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、迅速で実効性ある対応ができるよう連携を強化する点でも一致した。

18日に訪韓する野田首相は、北朝鮮への対処は無論、経済連携協定(EPA)交渉の早期再開も含めて、戦略的な観点から日韓関係の強化に努める必要がある。

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