東日本大震災から7か月が過ぎた。多くの報道機関で、震災と原発事故をめぐる報道の検証作業が始まっている。
読売新聞は今週、社内の「報道と紙面を考える」懇談会で、本紙の一連の報道について外部有識者らから意見を聞いた。
国松孝次・元警察庁長官は「全般的に行き届いた報道だった」とする一方、「ただ情報を流すのではなく、専門記者が情報の中身を『こなして』、読者にどう行動すべきかの『選択肢』を与える記事が重要だ」と述べた。
東京・世田谷で12日、毎時2・71マイクロ・シーベルトの放射線量が検出されたとするテレビ、新聞報道を引き合いに、国松氏は「原因、数値の意味、安全性を知りたい。少しでもリスクがあれば『さあ大変』と大扱いするのは疑問だ」と言う。
報道側には事実を掘り下げ、冷静に伝える努力が欠かせない。
上田廣一・元東京高検検事長は「原発事故に関する記事は、読者にわかりやすく書いてほしい。風評被害の拡大を監視することも新聞の役目だ」と述べた。
長尾立子・元法相からも「防波堤や避難誘導などには地域差があった。津波対策の盲点を指摘し、新たな街づくりに生かせる報道を望む」との発言があった。
いずれももっともな指摘である。読者の理解を助ける解説記事や、復興を後押しするような論説、提言報道を続けていきたい。
報道各社の記者らを集めた先月のマスコミ倫理懇談会全国大会でも震災・原発報道を検証した。
ゲストの元原発設計技師は「記者側に専門知識が不足していた」と指摘した。専門記者の育成は各社に共通する課題だろう。
原発事故からしばらくは、政府や東京電力の出す膨大な情報を記事化するだけで精いっぱいだった、という反省もある。当時の取材状況を分析し、非常時の報道のあり方を考える必要がある。
読売新聞の世論調査では、新聞の震災・原発報道を「評価する」と答えた人は73%に上った。
一方で、新聞報道全般について「信頼できる」とした人は1年前から7ポイント下がり、80%だった。
この数字を真摯に受け止めたい。日々の報道を点検し、課題や反省点を洗い出して紙面作りに反映させていくことが大事だ。
きょうから新聞週間。日本新聞協会が選んだ今年の代表標語は和歌山市の会社員、田中克則さんの「上を向く 力をくれた 記事がある」だ。そんな記事を一本でも多く、読者のもとへ届けたい。
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