ギリシャの財政危機が波及し、資金繰りに行き詰まった欧州の金融大手が、公的支援下で、解体されることになった。
2年前にギリシャ債務問題が表面化して以来、金融大手の処理は初めてだ。新たな局面に入ったと言えよう。
金融危機の拡大と、世界経済への悪影響を食い止めなければならない。金融システム安定に向け、独仏両国が主導して、欧州の結束を強化すべきである。
問題の金融機関は、フランスとベルギーに拠点を持つデクシアだ。大量保有のギリシャ国債が値下がりし、経営危機に陥った。
フランス、ベルギー、ルクセンブルクの3か国政府が決めた処理策は、デクシアを解体し、このうちベルギーの銀行部門に公的資金を投入して一時国有化する。不良債権は切り離し、巨額の政府保証で資金繰りを支援する内容だ。
欧米や日本など世界の株式市場の株価は上昇している。ひとまず安心感が広がったようだ。
しかし、懸念されるのは、ギリシャのほか、イタリア、スペインなどの財政赤字国の国債を大量に保有している欧州の銀行は、デクシアに限らないことだ。
ギリシャに続き、イタリアやスペイン国債の格付けが引き下げられた。欧州当局が対応を誤れば、「デクシアの次はどこか」という疑心暗鬼が広がりかねない。
国際通貨基金(IMF)の推計によると、欧州財政赤字国の国債保有に伴う損失に必要な資本増強額は、2000億ユーロ(約20兆円)規模にも上る。
欧州連合(EU)は主要銀行のストレステスト(特別検査)の結果を7月に公表した。だが、デクシアが「合格」していたように、検査の甘さは否定できまい。
EUは、各銀行の財務内容を厳しく再査定すべきだ。たとえ保有国債に損失が発生しても対応できるよう、各行があらかじめ資本増強を急ぐことが求められる。
メルケル独首相とサルコジ仏大統領が会談し、銀行の資本増強で一致した。デクシアに危機感を強めた結果で、当然の判断だ。
焦点は、両首脳が月内にまとめると表明した銀行の資本増強策を含む包括的な安定策である。
今週末にパリで主要20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)が開かれ、23日にEUとユーロ圏の首脳会議が予定される。
欧州金融安定基金(EFSF)の一層の拡充や、公的資金の大胆な投入など、欧州は明確な方策を打ち出さねばならない。
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