小沢氏初公判 「4億円」の出所をどう語る

朝日新聞 2011年10月07日

小沢氏初公判 雄弁の後に残る不審

「法廷で真実を述べる」。そう言って国会での説明を拒んできた民主党元代表・小沢一郎被告の刑事裁判が始まった。

約束の場で小沢氏は何を語るか。罪状認否に注目したが、見事な肩すかしとなった。

氏は無罪を訴え、激烈な検察批判を展開した。政治資金収支報告書に間違いや不適切な記載があった程度のことで捜査するのは、政治活動を阻害し、国民の主権を侵害する――と。

収支報告書は、まさに主権者である国民が、政治家の動きを資金面から監視・批判する大切なよりどころである。問われたのは単年度の少額な記載ミスではない。法の精神と氏の認識との溝はあまりに深い。

そして、社会の関心が集まる問題の土地購入資金4億円の原資には一切触れなかった。

刑事被告人には黙秘権があるし、原資の解明は裁判の直接の争点になっていない。だが疑惑の核心はここにある。

元秘書3人に有罪を言い渡した東京地裁判決は、捜査段階の小沢氏の供述の揺れと資金の流れを丁寧に検討したうえで、原資は手元にあった現金だという当時の氏の言い分を「信用できない」と退けている。

小沢氏は初公判後に短い記者会見を開いたが、捜査や裁判所の批判にほぼ終始し、原資についても「私のお金です」と一言述べただけだった。このまま沈黙を貫く作戦だろうか。

国会でも、法廷でも、会見でも、しっかり説明しない。

一方で、日本が混迷を抜け出すには「政党政治への国民の信頼を取り戻す以外にない」と唱える。同じ初公判での陳述だ。もちろん異論はない。ではそのために、責任ある政治家として自ら何をすべきか。よく考えてもらいたい。

裁判の行方は、検察審査会の議決で強制起訴になったという経緯もあって、軽々しく予想できない。検察官役の弁護士は、細かなことも報告させ指示に従わせていた日ごろの秘書との関係や、銀行融資申込書に小沢氏が署名している事実などを踏まえ、氏もうその記載を承知していたと主張する方針だ。

自白など犯罪事実に直接結びつく証拠がなくても、物証や証言から一定の事実を証明し、それらを積み上げて立証する手法は珍しくない。自白偏重の弊害を考えれば、むしろ時代の要請に見合うやり方ともいえる。要はその積み上げの過程が合理的で、納得できるかどうかだ。

冷静な目で、来春の判決に向けた法廷での攻防の一つひとつを追っていきたい。

毎日新聞 2011年10月07日

小沢元代表初公判 冷静に審理を尽くせ

民主党の小沢一郎元代表が「罪に問われる理由はない」「裁判を打ち切るべきだ」と無罪を主張した。資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件の初公判だ。

04年に東京都世田谷区の土地を陸山会が購入した際の金銭の出入りに絡み、元秘書らと共謀して政治資金収支報告書にうその記載をしたとして刑事責任を問われた。

検察が不起訴としたのに対し、市民から選ばれた検察審査会が2回の審査を経て「起訴すべきだ」との結論を出した。政治家が強制起訴された初めてのケースでもある。

強制起訴という新制度の下での公判だが、刑事裁判のルールに基づくのは当然だ。元代表の有罪を立証する責任は検察官役の指定弁護士にある。元代表には黙秘権があり、個々の質問に証言を拒むこともできる。

それを前提とした上で、元代表には公判の場で正面から証言することを期待したい。透明であるべき政治資金について国民の不信感を招いたのは間違いないからだ。

元代表は初公判で、激烈な検察批判を展開した。その後の記者会見でも、事実関係を問う質問に正面から答えなかったが、法廷では証拠に基づいた冷静な攻防こそ望まれる。

土地購入のために元代表が提供した4億円の原資にまず注目したい。元秘書3人の公判では、土地取引を巡る資金操作の不自然さが「隠蔽(いんぺい)工作」とみなされ、有罪の根拠となった。元代表の4億円提供はその出発点だ。東京地裁は3人の判決で、4億円の原資について「元代表ですら、明快な説明ができていない」と、厳しく指摘した。

元代表の弁護側は初公判で4億円の原資に言及せず、元代表は会見で「私のお金です」と言うにとどまった。銀行融資、相続遺産など元代表の原資の説明は変遷した。実際はどういう金なのか改めて聞きたい。

先月の判決で、元秘書の大久保隆規被告は、西松建設の違法献金事件でも有罪を認定された。判決が指弾したのは、「天の声」を背景とした小沢事務所とゼネコンとの長年の癒着だ。今回の公判で裁かれるのは、元代表を巡る「政治とカネ」疑惑の一断面に過ぎないとも言える。

1審とはいえ、元秘書3人の有罪認定は重い。少なくとも政治倫理審査会の場で、秘書を監督する政治家としての説明責任を果たすべきだと改めて指摘したい。

国会の自浄力も問われる。公明党が一昨年、「秘書がやった」と言い逃れできないように、報告書の虚偽記載の際は議員の公民権を停止させる政治資金規正法改正案を国会に提出した経緯もある。さらに議論を深めてもらいたい。

読売新聞 2011年10月07日

小沢氏初公判 「4億円」の出所をどう語る

長年、政界に影響力を及ぼしてきた民主党の小沢一郎元代表の政治生命を左右しかねない、注目の裁判が幕を開けた。

自らの資金管理団体・陸山会の土地取引を巡る事件で政治資金規正法違反に問われた。

小沢氏が用意した土地購入原資4億円を隠蔽するため、石川知裕衆院議員ら元秘書と共謀し、政治資金収支報告書に虚偽の記載を重ねた、というのが起訴内容だ。

一般の市民で構成される検察審査会の議決に基づき、強制起訴された事件の初の裁判である。

被告人となった小沢氏は法廷で、「直ちに裁判を打ち切るべきだ。罪に問われるいわれはない」と、全面無罪を主張した。

この事件では、東京地裁の別の裁判官が元秘書らに有罪判決を言い渡したばかりだ。裁判の焦点は、検察が「起訴するには証拠が足りない」と判断した、小沢氏と元秘書の共謀を、検察官役の指定弁護士が立証できるかどうかだ。

小沢氏がこの日、意見陳述で展開した一方的な検察批判には、首をかしげざるを得ない。

まず、自らの政治資金疑惑が捜査されたことについて、「国民の負託を受けていない検察が、権力を乱用し、議会制民主主義を踏みにじった」と言い切った点だ。

選挙で選ばれた政治家に、検察は手を出すべきでない、という傲慢な主張ではないか。

小沢氏は捜査中から検察批判を繰り返し、検察が嫌疑不十分で不起訴とすると、「公平公正な捜査の結果」と態度を一転させた。被告席についた途端、再び検察に批判の矛先を向けるのは、ご都合主義以外の何ものでもなかろう。

「収支報告書の不適切な記載は自主的な修正が原則で、検察が捜査すれば、自由な政治活動が阻害される」との発言も疑問だ。

政治活動が国民の不断の監視の下で公正に行われるよう、政治資金の流れを公開するのが政治資金規正法の趣旨である。順守されていない疑惑があれば、司法が解明を目指すのは当然だろう。

現に先の地裁判決は、元秘書らの違法行為を認定した上で、「規正法の趣旨にもとる悪質な犯行」と断じている。

政治資金の透明化と規制の厳格化を目指し、国会で改正が重ねられた経緯も忘れてはなるまい。

小沢氏が、説明を変遷させてきた土地購入原資の4億円の出所について、法廷でどう語るかが注目される。裁判とは別に、国会の場などで政治家としての説明責任を果たすことも改めて求めたい。

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