予算概算要求 復興に「便乗」した無駄ないか

毎日新聞 2011年10月06日

概算要求98.5兆 聖域設けず絞り込みを

財政難の中、年々厳しさを増す予算編成だが、今年は一段と難航が予想される。今夏の首相交代劇の影響で作業が大幅に遅れているうえ、大規模な震災復興費用を盛り込む11年度第3次補正予算と連動して進める必要があるからだ。野田佳彦首相の強いリーダーシップと民主党の結束、野党の建設的関与が欠かせない。

来年度一般会計予算の概算要求総額が過去最高の約98・5兆円となった。膨張の要因はいくつかある。まず、復興や原発事故関連など震災対策費を特別扱いとし、上限を設けず省庁の要求を認めたことだ。結果、3・5兆円に膨らんだ。

政府が来年度予算の“目玉”に掲げる「日本再生重点化措置」の特別枠(7000億円)に約2兆円の要望が集まったこともある。これに年々増加する社会保障費や国債の償還・利払い費がのしかかった。

政府の財政健全化計画に沿った形で歳出を目標圏内まで圧縮する作業が始まる。安住淳財務相は「鬼となって(絞り込みに)頑張りたい」と言うが、1人の頑張りには限界がある。政府と民主党が一丸となって総額の圧縮に取り組まねばならない。

要求に重複や無駄がないか、緊急性や効果が低いものが含まれていないかなどをチェックする際に大事なのは、社会保障関連も含め、聖域を設けないことだ。

震災関連も聖域であってはならない。放射性物質の除染など、歳出を惜しむべきでないものは当然ある。しかし、省庁間の重複や、「復興」の名を借りただけで実質は通常の予算扱いとすべきものも概算要求に少なからず含まれているようだ。

復興関連は他の予算と違い、増税などであらかじめ財源を確保しておくことになっている。だからといって野放図に認めるようでは、納税者は到底、納得しないだろう。本当に被災地が必要としているか、目指している復興に貢献するものなのか、厳しく査定しなければならない。

重点化枠も同じだ。「成長基盤の強化」「安心・安全社会の実現」など、定義が抽象的で何でもあてはまりそうなものだったため、「日本再生」になるのかと疑問に思える要求もあるようだ。

復興枠にしても重点化枠にしても、本来なら省庁ごとに要求させるのではなく、関係閣僚でまず具体像を固めるべきだった。政府・与党の代表者による予算編成会議が今後、配分を議論するが、省庁の利害にとらわれず、政権としての優先順位を明確にしてもらいたい。

無駄の削減では、行政刷新会議のフル活用が必要だ。政権交代前に民主党が強く唱えていた、省庁ごとの縦割り予算に「横串を刺す」手法のまさに出番である。

読売新聞 2011年10月05日

予算概算要求 復興に「便乗」した無駄ないか

財務省が締め切った2012年度予算の概算要求が出そろった。

東日本大震災の復興費や、成長分野に重点配分する「日本再生枠」への要求が膨らみ、一般会計の総額は過去最大の98兆円台に達した。

震災復興を急ぐには、思い切った予算措置が必要である。だからといって、財政難の中で、各省庁が復興に名を借りた要求を上乗せすることは許されまい。

財務省は年末に向け、厳しく査定し、メリハリのある予算編成を目指さなければならない。

今回の概算要求では、政策経費を1割カットし、削減分の1・5倍まで再生枠に要求できるようにした。歳出の大枠を11年度当初予算並みに抑える一方、復興費は別枠扱いで、要求に上限を設けない「青天井」としたのが特徴だ。

復興費の要求は約3・5兆円にのぼった。被災地の道路整備や、がれき処分などは理解できるが、全国的な公共施設の耐震化、都内の文化財補修、途上国向け防災研修など直接、復興に役立つのか疑問が残る事業も含まれている。

政府は5年間の復興費を19兆円と見込む。すでに成立した11年度第1、2次補正予算と、近く国会に提出する第3次補正に、来年度の要求額を単純に合計すると早くも18兆円を大きく上回る。

まだ要求額を示していない原発事故の関連費用などが加われば、規模はさらに拡大しそうだ。

復興費の大半は所得税などの臨時増税で賄われる。国民負担を抑えるためには、真に必要な事業に絞り込まねばならない。

来年度予算の復興費は、今年度補正予算と連動し、実効性が期待できる内容にすべきである。

復興予算を円滑に執行できるよう、政府と自治体が連携を強化して、被災地の再生計画の策定などを急ぐことも重要だ。

一方、7000億円の再生枠には、各省庁から3倍近い約2兆円の要求が殺到した。景気回復を確実にするため、再生枠を有効に活用することが欠かせない。

だが、再生可能エネルギー普及や雇用対策などに交じって、省庁間で重複する事業や復興策と似た事業もある。精査を欠いた駆け込み要求がみられるのは問題だ。

民主、自民、公明の3党合意で見直しを検討するとしていた高校無償化、農家の戸別所得補償も今年度並みの要求となっている。これらも予算査定の焦点だ。

財政再建と成長に目配りし、政策効果をどう見極めるか。野田政権の真価が問われよう。

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