ロシアのプーチン首相が、来年3月の大統領選に立候補し、返り咲きをめざす。
想定されていたとはいえ、あまりに強引な権力継承であり、ロシアの民主主義の行く末を危惧せざるを得ない。
プーチン氏は2008年まで2期8年、大統領を務めた。憲法が連続3選を禁じているため、前回選挙では腹心のメドベージェフ氏に譲った。そして自身は首相になり、「双頭政権」で実権を振るってきた。
その2人が来春、入れ替わるという算段だ。次期大統領から任期は6年に延びるため、24年間、権力の座にあり続ける可能性さえささやかれている。
確かに、プーチン氏はソ連崩壊後の社会の混乱を安定に導いた。主要産業の石油や天然ガスなどの高値で、経済を急成長させた実績もある。
だが、ロシアはいま転換期にあり、これまでの統治モデルは時代遅れになっている。
たとえば、安定のために経済への国家関与を強め、出身母体の治安機関などで野党やメディアを厳しく締めつけたことは、汚職や腐敗を深刻化させた。資源に過度に依存する経済も、世界の景気動向に左右され、国民生活を不安定にしている。
こうした事情を反映して、12月の下院選に向けて、プーチン氏が率いる与党「統一ロシア」の支持は伸び悩む。
なのに、プーチン氏は「双頭政権」を微調整して乗り切りを図ろうとしている。
そのために用いる手法は、どうしても強権的にならざるを得ない。与党を脅かしそうな政党は、書類の不備などを理由に下院選から締め出す。御用政党をつくって、野党勢力に流れそうな批判票を取り込む。過去の選挙でさんざん使われた策が、またも繰り返される。
選挙戦本番でも野党陣営には、ほとんど運動の機会を与えない。そして、いつものように政府機関やメディアが与党を強力に後押しするパターンで勝利を狙うのだろう。
こんな政権では、十分な正統性を得られない。逆に国民の不信はつのり、いまロシアに必要な「経済の現代化」や「法治国家の確立」、「司法の独立」といった改革の実現を、一段と困難にしてしまう。
ロシアがソ連共産党の支配を終わらせ、民主国家として再出発してもう20年になる。
「プーチン流選挙」が通じるようでは、民主主義が大前提の主要国首脳会議(G8)に、ロシアが入っていることへの異議がさらに強まるに違いない。
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