G20声明 欧州が危機の悪循環を断て

毎日新聞 2011年09月24日

ユーロ危機とG20 欧州は困難を避けるな

世界経済が直面する難題に主要国は協調し、力強く対応する--。ワシントンで開かれた主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は声明を出し、急拡大する市場の不安心理を鎮静しようと努めた。だが市場が求めているのは声明ではなく、大胆で具体的な行動だ。そしてその行動を取れるのはユーロ加盟国をおいて他にない。

世界的な株価急落に危機感を募らせたG20は、当初予定していなかった声明を急きょ発表した。不安心理が連鎖する形で膨張し、これまで世界経済のけん引役だった新興国にまで混乱の渦が及んできたからだ。

過剰な悲観ならじきに修正されるだろうが、ユーロ圏の信用不安は深刻度を増す一方である。ギリシャに始まった財政危機は欧州内の民間銀行の経営を直撃し、金融危機の様相も強めながら世界の経済を揺らしている。日本への影響も強まりかねない。世界的な金融危機と不況の再来を防ぐため、とにかく欧州諸国が直ちに行動する必要がある。

まずは金融不安に歯止めをかけることだ。国際通貨基金(IMF)によると、ギリシャなど財政難の国の国債が大幅に値下がりしたことで、それを保有する欧州内の銀行の損失が総額2000億ユーロ(約21兆円)に膨らむ恐れがあるという。経営が比較的健全な銀行まで資金調達に支障をきたすことのないよう、問題銀行の資本増強や再編を急がねばならない。欧州諸国の政府が連携し主導することが求められる。

次に危機の震源となったギリシャの救済だ。債務不履行懸念が高まってはギリシャが新たな財政緊縮策をまとめ、欧州連合(EU)とIMFが追加の低利融資をする。そんなパターンの繰り返しはもはや限界だろう。ギリシャでも、ドイツなどギリシャを支援する側の国においても、国民の不満が充満しており、加盟国政府による新たな合意が、さらに困難になりそうな状況だ。アプローチを転換すべき時ではないか。

「欧州単一通貨制度そのものの存続が危ぶまれている」。欧州中央銀行のリポートが、かつてない調子で警告した。ユーロを崩壊の危機から救うには、財政統合の道を踏み出すべきではないか。加盟国間の調整や、各国民の説得に相当な政治エネルギーを要することだが、逃げていては結局、欧州の人々が多大な痛みを強いられる。通貨統合を主導してきた独仏のリーダーの覚悟が問われている。

金融市場へのドル資金供給など、G20が協調できることは、もちろんある。しかし欧州が通貨安定化に向けた新たな一歩を踏み出さない限り、世界的な市場の混乱が収まることは望めない。

読売新聞 2011年09月24日

G20声明 欧州が危機の悪循環を断て

ギリシャ発の金融危機の拡大を防ぐため、先進国と新興国が結束し、震源地の欧州に迅速な行動を求めたと言えよう。

日米欧と中国、ブラジルなどが参加し、ワシントンで開かれた主要20か国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、緊急の共同声明を採択した。

声明が、「世界経済の新たな課題に力強く協調する」と表明し、「金融システムと市場の安定のために必要なすべての行動を取る」と強調したのは妥当だ。

会議前、ニューヨーク株式市場の株価が一時、500ドル以上も値下がりし、世界同時株安の様相になっていた。通貨ユーロも対円で約10年ぶりの水準に急落した。

G20が当初予定していなかった声明をまとめたのは、こうした市場の動揺や、世界の景気減速に対する危機感の表れだろう。

G20は、3年前のリーマン・ショック後の金融危機を各国の政策総動員でひとまず克服した。

しかし、今回、ギリシャの財政危機が、イタリアなどの信用不安に飛び火し、世界経済に深刻な打撃を与えている。

国際通貨基金(IMF)は「世界経済は危険な状況に陥りつつある」と警告していた。

欧州の金融機関が抱える潜在的な損失が2000億ユーロ(約21兆円)に上る、との試算も示した。ギリシャ国債のデフォルト(債務不履行)懸念を考慮したものだ。

ギリシャ発の悪循環を食い止め、市場の安定を図らねばならない。声明の決意を具体的に推し進めていく協調策が重要である。

なかでも焦点は、これまで対応が後手に回ってきた欧州だ。

声明は、ユーロ圏が7月末に合意した欧州金融安定基金(EFSF)の機能拡充などを、「10月中旬までに実現しているだろう」と遠回しの表現で注文を付けた。

EFSFは、ギリシャのほか、イタリアなども対象にした支援策だが、欧州各国の足並みの乱れで機能拡充が遅れている。

欧州はG20の要求を重く受け止め、独仏両国の主導で早期実現を図るべきだ。金融機関の資本増強も検討してもらいたい。

一方、年金減額など追加的な財政再建策を決めたギリシャは、着実な財政赤字削減が急務だ。

米国は景気減速が鮮明で、金融緩和策に手詰まり感がある。日本は震災復興が課題で、中国など新興国の物価は上昇している。

3年前に比べ、各国が難しい経済運営を迫られている中、G20の結束の真価が問われよう。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/832/