ギリシャ発の金融危機の拡大を防ぐため、先進国と新興国が結束し、震源地の欧州に迅速な行動を求めたと言えよう。
日米欧と中国、ブラジルなどが参加し、ワシントンで開かれた主要20か国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、緊急の共同声明を採択した。
声明が、「世界経済の新たな課題に力強く協調する」と表明し、「金融システムと市場の安定のために必要なすべての行動を取る」と強調したのは妥当だ。
会議前、ニューヨーク株式市場の株価が一時、500ドル以上も値下がりし、世界同時株安の様相になっていた。通貨ユーロも対円で約10年ぶりの水準に急落した。
G20が当初予定していなかった声明をまとめたのは、こうした市場の動揺や、世界の景気減速に対する危機感の表れだろう。
G20は、3年前のリーマン・ショック後の金融危機を各国の政策総動員でひとまず克服した。
しかし、今回、ギリシャの財政危機が、イタリアなどの信用不安に飛び火し、世界経済に深刻な打撃を与えている。
国際通貨基金(IMF)は「世界経済は危険な状況に陥りつつある」と警告していた。
欧州の金融機関が抱える潜在的な損失が2000億ユーロ(約21兆円)に上る、との試算も示した。ギリシャ国債のデフォルト(債務不履行)懸念を考慮したものだ。
ギリシャ発の悪循環を食い止め、市場の安定を図らねばならない。声明の決意を具体的に推し進めていく協調策が重要である。
なかでも焦点は、これまで対応が後手に回ってきた欧州だ。
声明は、ユーロ圏が7月末に合意した欧州金融安定基金(EFSF)の機能拡充などを、「10月中旬までに実現しているだろう」と遠回しの表現で注文を付けた。
EFSFは、ギリシャのほか、イタリアなども対象にした支援策だが、欧州各国の足並みの乱れで機能拡充が遅れている。
欧州はG20の要求を重く受け止め、独仏両国の主導で早期実現を図るべきだ。金融機関の資本増強も検討してもらいたい。
一方、年金減額など追加的な財政再建策を決めたギリシャは、着実な財政赤字削減が急務だ。
米国は景気減速が鮮明で、金融緩和策に手詰まり感がある。日本は震災復興が課題で、中国など新興国の物価は上昇している。
3年前に比べ、各国が難しい経済運営を迫られている中、G20の結束の真価が問われよう。
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