台風被害 身近な備えの総点検を

朝日新聞 2011年09月22日

台風被害 身近な備えの総点検を

台風15号は日本列島を縦断して、各地に大きな爪痕を残している。この台風は雨に弱い都市部も直撃した。

広い範囲に避難勧告や避難指示が出た。名古屋市では100万人がその対象になった。

11年前の東海豪雨では避難が夜になり、被害が拡大した。その教訓から名古屋市は今回、早めの対応をとり、人口の半数近くに避難を呼びかけた。

だが、勧告や指示を受けた人の多くが避難したわけではないだろう。100万人の避難場所を確保するのは難しい。

東海豪雨の後、名古屋市は全戸に洪水ハザードマップを配った。地域ごとに浸水の深さを色分けし、避難場所を指定した。「避難行動の目安」では、自宅が何階か、浸水が何メートルかによって、自宅にとどまる選択肢も示している。

避難を呼びかけられたらどう行動するか。ふだんからハザードマップを読んでおき、備えておきたい。

今月初めの台風12号では、90人を超える死者・行方不明者が出た。紀伊半島では豪雨で崩れた土砂が川をせき止め、何カ所も土砂ダムができた。そこに今度の15号による雨で、一部で決壊の危険が高まっている。

その一つ、奈良県五條市にある土砂ダムが決壊すれば、流域の20キロの範囲に土石流が押し寄せるという。

土砂ダムの警戒区域で暮らす人たちは、学校や公民館に身を寄せている。避難所での生活は半月になる。住み慣れた集落にいつ戻れるのか。疲労の色も濃い。せめてゆっくり休めるように、自治体は旅館などの宿泊施設を借り上げてもらいたい。

そうした土砂ダムには崩れた土砂に阻まれてなかなか近づけず、対策に長い期間がかかりそうだ。長引く避難を考え、災害救助法にもとづく仮設住宅の建設も急がなくてはいけない。

二つの台風に共通するのは、ゆっくりした速度で大量の雨をもたらしたことだ。

自治体は避難を呼びかけた後も、きめ細かな情報を提供し続けなくてはならない。

例えば、緊急地震速報や避難勧告を知らせるNTTドコモのエリアメールは、全国で300以上の自治体が使える。同社の携帯電話なら登録も必要なく、一部の機種を除いて自動的に受信する。こんな技術も役立ててゆきたい。

東日本大震災の大津波に続いて、相次ぐ台風被害だ。自然に恵まれた列島ならではの災害が続く。住民も自治体も、身近な対策を総点検しよう。

読売新聞 2011年09月23日

台風列島縦断 早めの避難や帰宅心がけよう

日本列島を縦断した台風15号は、西日本から東北の広範な地域に被害をもたらして22日、北海道の東方海上に抜けた。

首都圏でも久々に台風の猛威を実感させられた。最接近した21日午後は、東京都内で最大瞬間風速36メートルを観測した。

鉄道の運休が相次ぎ、主要駅は帰宅する人であふれた。駅前のバス乗り場にも長蛇の列ができた。近くのホテルに泊まった人、長時間、歩いて帰宅した人もいた。

東日本大震災での「帰宅難民」大発生を思い出した人も多かったことだろう。

小中学校や企業が早めの帰宅を促したのは適切な判断だった。一方で鉄道各社も早々に運休を決めたため、駅で足止めを食う人が少なくなかった。夕方のラッシュと重なって混雑したが、それほど大きな混乱は起きなかった。

災害時の公共輸送体制や道路渋滞対策、学校や企業の対応など、帰宅困難者対策は日ごろから詳細に検討しておく必要があろう。

11年前の東海豪雨の教訓から、今回、早めの住民避難を徹底したのが名古屋市だ。台風が接近する前の20日、約110万人に避難勧告・指示を出した。

実際には110万人を収容する施設はなく、避難所に移動した人も約4600人にとどまったが、これを過剰な対応と言うことはできまい。自治体は引き続き安全な避難場所の確保と、的確な避難誘導に努めてもらいたい。

ただ、避難勧告などの一斉解除のタイミングには課題が残った。これから台風の接近が予想され、気象庁も最大限の警戒を呼びかける中での解除だったからだ。

市は「安全確認ができたため」としているが、納得できる説明を住民が求めるのも当然だ。避難勧告・指示がうまく機能するよう、自治体は留意する必要がある。

今月上旬の台風12号で奈良、和歌山両県にできた土砂崩れダムも水かさが増し、一部で水があふれ出した。大規模決壊の恐れもあり、厳重な警戒が必要だ。避難所生活が半月以上になる地域住民への、自治体の支援も欠かせない。

大震災の被災地にも、台風15号は爪痕を残した。仮設住宅が浸水し、再び避難所へ移った人もいる。津波で堤防が決壊し、修復中の河川の氾濫も心配だ。

自治体は、新たに被害を受けた一人ひとりの状況を把握し、必要十分な支援をしてほしい。

今後も台風襲来は続く。早めの情報で早めの避難を心がけ、ゆとりをもって対処したい。

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