基準地価 底入れのカギは復興と防災策

毎日新聞 2011年09月22日

基準地価 安心が投資呼び込む

底入れ傾向にあった地価の動きに大震災が水を差した。国土交通省が発表した基準地価(7月1日時点)によると、全国平均の前年比下落率は縮小したものの、東日本大震災をはさんだ半年をその前の半年と比べると下落率は拡大している。

地価の動向は基準地価と1月1日時点の公示地価で知ることができる。その調査地点は約1640が共通しており、そのデータを用いると半年ごとに地価を比較できる。

これでみた地価の動きは東京、大阪、名古屋の3大都市圏でも全体としては全国平均と同じ傾向だ。ただし、大阪圏だけは下落率が縮小している。下落率が拡大した東京圏、名古屋圏とは対照的だ。

東京圏の場合、住宅地の下落率は0・7%から1・0%に、商業地で1・1%から1・4%に拡大した。一方、大阪圏は住宅地で1・0%から0・7%へ、商業地で1・4%から1・1%へ縮小している。

震災の影響で東京圏では高層マンションの買い控えなどの動きがあったものの、大阪圏は震災の影響をほとんど受けなかったことが反映しているという。

実際、東京圏の動向を細かく見ると、臨海部の高層マンションで買い控えの傾向がみられる一方で、東京の多摩地区は地価の下落率が縮小している。液状化などの被害が目立った臨海部から、地盤が安定しているとみられている内陸方面の地域へ人気が移っているようだ。

これには原発事故による影響も含まれているはずだ。震災後の人の動きは、東日本から西日本への方が、西日本から東日本へより多くなったという。地価の動きと連動している印象を受ける。

バブル崩壊後、日本では長期にわたり地価が傾向的に下落してきた。さらにリーマン・ショックの影響も受けたものの、このところは下落傾向に歯止めがかかりつつあった。

欧米の不動産バブルが崩壊し、新興国の不動産価格の上昇も限界にきていると指摘されている。日本の不動産は相対的に安価になっており暴落の危険性も低いとみられている。

投資の対象として見直されていいはずなのに、大震災と原発事故は日本の不動産市場に対しても暗い影を落としている。

不動産価格は担保価値や資産効果を通じて経済に影響を及ぼす。地価が上昇に転じれば、経済を取り巻く景色も大きく変わるだろう。

大震災と原発事故から不動産市場が受けたダメージを克服するには、震災復興を急ぎ、原発事故を早期に収束させて、安全で安心な国という日本のイメージを回復することが不可欠だ。

読売新聞 2011年09月21日

基準地価 底入れのカギは復興と防災策

地価の底入れに向け、政府は震災復興に全力を挙げなければならない。災害に強いまちづくりが急務である。

国土交通省が、震災後初の調査となる7月1日時点の基準地価を発表した。

全国の地価は、住宅地が前年比3・2%、商業地が4・0%下落した。住宅地は20年連続、商業地は4年連続のマイナスだ。半年ごとの下落率は、昨年後半より震災後の今年前半の方が拡大した。

地価が下げ止まらない状態が続けば、デフレはさらに長期化し、景気回復の足を引っ張る。

不動産を担保にした借り入れが多い中小企業などの資金調達に悪影響を及ぼし、個人資産の目減りで消費も冷え込むだろう。

特に懸念されるのが、被災地である東北の住宅地、関東の商業地の落ち込みが目立つことだ。

岩手、宮城、福島の3県では、津波被害が甚大な沿岸部を中心に住宅地の下落率が拡大した。

原発被害に直撃された福島県は商業地の下落も際立っており、郡山市の下落率は15・0%で、全国の商業地で最大となった。

震災と原発事故の影響は、全国に及びつつあるようだ。

東京圏では、液状化や停電の不安などで湾岸部の高層マンションの買い控えが強まっている。

高知県は、都道府県別の下落率で住宅地、商業地ともに1位だった。南海地震による津波被害への懸念がうかがえる。

一方、個人や企業の西日本への移動が増えたことを反映し、大阪圏では、地価が上昇や横ばいとなった地点が増加している。

震災を契機に不動産市場に変化が生じていると言えよう。

住宅やオフィス選びでは、防災に優れた免震構造のマンションやビル、地盤が安定している地域などが重視されている。

政府は、液状化対策を強化するなど防災に配慮した施策を拡充することが必要だろう。

国交省は7月に打ち切った住宅エコポイント制度を復活させる方針だ。省エネ基準を満たした住宅の新築や改修を優遇する内容で、住宅の需要喚起策が地価安定にもつながることを期待したい。

今回の調査結果では、住宅地の地価が下落した被災地であっても、津波被害を免れた一部の地点で地価が上昇した所があった。

復興計画が遅れている隙を突かれ、被災者の高台移転を当て込んだ土地投機の兆候だとすれば問題である。政府は地価を監視するとともに復興計画を急ぐべきだ。

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