管制官情報漏洩 組織管理の再点検も必要だ

毎日新聞 2011年09月15日

管制情報流出 規律立て直しが必要だ

外交や危機管理にかかわる情報がこれほど軽く取り扱われていたことに驚くばかりだ。国家公務員としての規律意識の低さは深刻であり、組織的な検証と改善が必要である。

羽田空港に勤務する50代の主任管制官が、インターネット上のブログに米大統領専用機「エアフォースワン」の飛行計画などの管制情報を掲載していた。国土交通省は国家公務員法の守秘義務違反の可能性があるとみて調べている。

飛行計画は、離着陸地点や飛行ルート、高度、速度などを記載したもので、この管制官が管制室のモニター画面に表示された同計画を自分のデジタルカメラで撮影したという。「広く知人に見てほしかった」と話しているが、情報流出の影響に対する無自覚ぶりは重大である。

エアフォースワンの飛行計画は、昨年11月にオバマ大統領が来日した際に撮影したものとみられる。大統領が搭乗した航空機の飛行ルートなどは米国でも最高度の機密事項である。たとえ飛行後の情報流出であっても、今後の大統領専用機の飛行計画に影響を与える可能性がある。

米国に限らず、各国首脳の行動に関する情報の流出は、テロなど不測の事態を招く危険性がある。今回、米側が日本政府に抗議し、再発防止策を求めたのは当然のことだ。

また、管制官のブログには、福島第1原発の事故後、上空から情報を収集した米軍無人偵察機「グローバルホーク」のものとみられる情報も掲載されていたという。

日米間では、これまで日本側の情報管理のずさんぶりが幾度か問題になった。行き過ぎた情報統制は避けなければならないが、外交、安全保障に関する情報の流出にはもっと敏感になる必要がある。

この管制官は羽田空港に30年前から勤務しており、ブログ開設は10年前だ。情報流出が他になかったのか、解明しなければならない。また、管制官が職場に私物のカメラを持ち込み、モニター画面を撮影することがなぜ可能だったのか、組織上の管理の問題も検証する必要がある。

最近、管制官の不祥事が相次いでいる。昨年10月、福岡航空交通管制部の管制官が中学生に飛行中の旅客機への管制指示の一部を代行させていたほか、今年7月には、東京航空交通管制部の管制官が短文投稿サイト「ツイッター」などで知り合った知人らを招き、身元確認を十分にしないまま管制業務を見学させていた。13日には、那覇空港の管制官が業務中に居眠りし、航空機の離着陸に遅れが出るトラブルもあった。

政府は今回の情報流出をはじめ一連の不祥事を踏まえ、緩みきった規律の立て直しに取り組むべきだ。

読売新聞 2011年09月14日

管制官情報漏洩 組織管理の再点検も必要だ

信じがたい情報漏洩(ろうえい)事件が明るみに出た。

羽田空港の主任航空管制官が、個人のブログに米大統領専用機「エアフォースワン」などの飛行計画の画像を掲載し、公開していた。

テロ対策に神経をとがらせる米国では、大統領専用機の飛行計画は秘匿すべき機密情報だ。専用機の高度や速度などがテロリストに知られれば、今後の運航に重大な影響が及ぶ恐れもある。

米側が日本政府に抗議し、再発防止の徹底を求めたというが、当然だろう。外交や安全保障面で、日米の信頼関係を損なう可能性もある深刻な事態だ。

政府は情報漏洩の経緯や、管制官の行動の背景事情などを徹底的に調査して、米側にきちんと説明する必要がある。

この管制官は、福島第一原子力発電所のデータを収集していた米軍無人偵察機「グローバルホーク」の情報もブログに載せていた。本来は撮影禁止の管制室内の模様などを撮った写真もあった。

管制官は「10年前にブログを開設した。知人に見てほしかった」と話しているという。自らの職責の重さや、行動がもたらす影響の大きさへの認識が欠けている。

厳格な行政処分が必要だ。国家公務員法(守秘義務)違反での刑事告発はやむを得ないだろう。

疑問なのは、この管制官が30年も羽田空港勤務を続けていたことだ。通常は、数年ごとに転勤するが、管制官は「本人の強い希望」で羽田にとどまっていた。

このため、管制室内での撮影などを目撃しても、誰もとがめられなかったという指摘もある。

国土交通省幹部は「労働組合の組織率が高く、プロ意識も高い。無理が通ってしまうことがある」と語る。人事制度や組織管理に問題はなかったか、検証が要る。

近年、管制官のミスや不祥事が相次いでいる。

職場体験中の中学生に旅客機への管制指示を行わせたり、簡易投稿サイト「ツイッター」で見学ツアーを募集し、立ち入り制限区域を見学させたりしていた。

国交省は先月、不祥事防止に向けた有識者会議を設置し、対策を協議し始めたばかりだった。管制官の倫理教育は喫緊の課題だ。

日本では、4年前にも海上自衛隊でイージス艦の機密情報が流出する事件があった。重要情報の管理のずさんさは再三、米国から指摘されてきた。

信頼の回復へ、政府は情報管理体制を総点検する必要がある。

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