与野党が不毛な対立を脱し、協力し合えるかどうかが問われている。
野田首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まった。
首相の答弁は、所信表明演説と同様、淡々とした語り口だった。菅前首相を反面教師としたのだろう。挑発的な質問にムキになることもなかった。低姿勢で野党に協力を求めるのは理解できる。
自民党の谷垣総裁は、民主党の政権公約(マニフェスト)見直しを前提とする民主、自民、公明の3党合意について、「守られるかどうか、大きな危惧を抱かざるを得ない」と指摘した。
首相が党内融和を優先し、内閣や党人事でマニフェスト見直し慎重派も要職に起用したからだ。
首相は「政策は3党合意を踏まえて進めていく」と改めて強調した。特に、子ども手当の見直しについて、「3党で十分に協議し、年末までに制度をまとめてほしい」と述べたのは、民自公の協調路線を重視する意向の表れだ。
だが、鉢呂吉雄前経済産業相の辞任に関して、首相は「誠に残念だ」と述べるにとどめ、自らの任命責任には言及しなかった。首相が言う「適材適所」について説明がなかったことも残念だ。
与党が臨時国会の会期をわずか4日間にしたことについて、谷垣氏は「国会軽視も甚だしい」と批判した。首相は野党との「徹底的な議論と対話」を重視するなら、野党7党がそろって求める会期延長に応じるべきではないか。
当面の政策課題に関しては、首相の現実的な姿勢が目立った。
例えば、原子力発電では「脱原発と推進という二項対立」を否定し、「安心できるエネルギーのベストミックス」を目指すとした。定期検査後の再稼働も言明した。菅前首相の無責任な「脱原発」路線を継承しないのは当然だ。
環太平洋経済連携協定(TPP)については、「高いレベルの経済連携協定の締結を戦略的に追求する」と述べただけだった。TPP参加を早急に決断すべきだ。
ねじれ国会と国難が重なる今、野党が担う責任も重い。
谷垣氏は大震災の復旧・復興を「党派を超えた責務」と認め、政権への全面的協力を明言した。
そう言う以上は、本格的な復興のための第3次補正予算案の早期成立に向け、与野党協議に応じるのが筋である。
自民党は近く、執行部人事を予定している。与党との協議を進めるため、それにふさわしい体制を整える必要がある。
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