代表質問 対決よりも復興進めよ

朝日新聞 2011年09月15日

代表質問 谷垣さん、広い度量で

野田政権で初めての衆院の代表質問がきのう、あった。

攻撃型の菅首相から、「論破ではなく説得」を心がける野田首相に代われば、与野党対立の激しさも緩和されるのではないか。そんな見方をかき消すかのように、自民党の谷垣禎一総裁は厳しく詰め寄った。

批判の中身には、うなずける点もあった。

たとえば、民主党のマニフェスト。谷垣氏は「夢、空論がことごとく採用され、『最大公倍数』のような安易な積み上げで作られた。実現可能性に乏しいのは当たり前だ」と批判した。

確かに、マニフェストの財源確保のいい加減さは、もう疑いようがない。

野党の予算委員会の開催要求が無視され、この国会が4日間で閉じることには「断固抗議する。場外の与野党協議ばかりを求め、国会審議を行わないとは本末転倒だ」と訴えた。

その通りである。首相の「3次補正の準備に全力を尽くす」という答弁では理由説明にならない。私たちも改めて会期延長を求める。

民主党への批判は尽きない。ただ、谷垣氏に対しても言うことがある。

予算委が開かれないことを理由に与野党協議に難色を示し、「(復旧・復興以上の課題を)ともに解決していこうという思いがあるなら、党の綱領を作っていただきたい」というのは、どういうことか。

党内がばらばらの民主党への不信感は当然だとしても、野田首相が協議を呼びかけているのは震災復興、社会保障と税の一体改革、経済対策だ。いずれも民主党のための施策ではなく、この国のために解決を急ぐテーマばかりではないか。

自民党は協議の場で堂々と主張を通す努力をした方がいい。それは、批判するだけでなく、建設的な政策論議を主導できる政党としての度量の広さを示す好機でもある。

谷垣氏が、早期解散を唱える事情はわかる。党内の落選組や政権に戻りたい議員らの早期解散論をないがしろにできないのだろう。

だが、いま多くの国民が求めているのは総選挙ではなく、与野党激突で停止状態の政治の再起動なのだ。

ここは、与野党とも是と非を切り分け、妥協できるところは妥協しよう。

いたずらに争うよりも、話し合って合意を探る。そんな真摯(しんし)で紳士的な「大人の政治」を期待する。本当は、谷垣氏はそれができる政治家のはずだ。

毎日新聞 2011年09月15日

代表質問 対決よりも復興進めよ

野田佳彦首相の所信表明演説に対する代表質問が行われた。首相の低姿勢路線に対して最大野党の自民党がどう出てくるのか、首相が初の答弁でどこまで説得力のある政策や方針を打ち返せるかが注目された。

自民党の谷垣禎一総裁の質問は、総じて対決色の濃厚なものだった。大震災の復旧・復興対応についてこそ全面協力を約束したものの、民主党に綱領がないことを挙げ、そのことが国家の大事に無定見のまま右顧左眄(うこさべん)する結果を招いている、と批判、失言で辞任した鉢呂吉雄経済産業相の任命責任も首相に問うた。

また、子ども手当を見直す、などとした3党合意について、「守られるかどうか大きな不安を抱かざるをえない」と疑念を表明、改めて民主党マニフェストの全面撤回を要求した。税制改革法の付則で次期通常国会に消費税率引き上げ法案が提出される段取りになっていることに関連し、「むしろ(税率引き上げの)施行を前倒ししてその前に信を問う判断も必要になる」として早期の解散・総選挙の意向をただした。

前日の所信表明演説で、首相が何度も議場に頭を下げては与野党協調を懇請したのに対して、簡単には妥協しない姿勢を示したものと見られる。ただし、菅政権の時に執拗(しつよう)に要求した解散については微妙にトーンを下げ、自民との距離を置き始めた公明党に配慮した形となった。

一方、首相答弁は前日の演説よりも歯切れが良かった。綱領については、今の民主党が結党された98年時点で基本理念を綱領として届け出ている、と反論、人事については「適材適所」を強調し被災者支援にまい進することで政治責任を果たしたいと切り返した。3党合意についても「誠実に履行する」と明言、解散については「しかるべき時に信を問うが、今は時期ではない」と述べた。

マニフェストについては、その理念は生きている、としながら、財源について検証不十分なところがあったと認め、あくまでも低姿勢路線を続けていく構えを強調した。

さて、自民党である。対決強調の背景には、一日も早い解散を求める各派領袖(りょうしゅう)クラスのプレッシャーがあるが、一方で、当面選挙が望みにくくなった以上は協調路線を取るべきだとの意見もある。そこで提案する。低姿勢には取りあえず低姿勢でお返ししたらどうか。そもそも菅直人首相さえ交代すればおのずと協調体制が取れる、としたのは自民党だった。

4日間という短過ぎる会期ではあるが、最優先課題の被災地の復旧・復興とその財源捻出で与野党が協力し速やかに第3次補正予算を成立させる、という環境を作ってほしい。対決はそれからでも遅くない。

読売新聞 2011年09月15日

代表質問 与野党協調の国会へ転換せよ

与野党が不毛な対立を脱し、協力し合えるかどうかが問われている。

野田首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まった。

首相の答弁は、所信表明演説と同様、淡々とした語り口だった。菅前首相を反面教師としたのだろう。挑発的な質問にムキになることもなかった。低姿勢で野党に協力を求めるのは理解できる。

自民党の谷垣総裁は、民主党の政権公約(マニフェスト)見直しを前提とする民主、自民、公明の3党合意について、「守られるかどうか、大きな危惧を抱かざるを得ない」と指摘した。

首相が党内融和を優先し、内閣や党人事でマニフェスト見直し慎重派も要職に起用したからだ。

首相は「政策は3党合意を踏まえて進めていく」と改めて強調した。特に、子ども手当の見直しについて、「3党で十分に協議し、年末までに制度をまとめてほしい」と述べたのは、民自公の協調路線を重視する意向の表れだ。

だが、鉢呂吉雄前経済産業相の辞任に関して、首相は「誠に残念だ」と述べるにとどめ、自らの任命責任には言及しなかった。首相が言う「適材適所」について説明がなかったことも残念だ。

与党が臨時国会の会期をわずか4日間にしたことについて、谷垣氏は「国会軽視も甚だしい」と批判した。首相は野党との「徹底的な議論と対話」を重視するなら、野党7党がそろって求める会期延長に応じるべきではないか。

当面の政策課題に関しては、首相の現実的な姿勢が目立った。

例えば、原子力発電では「脱原発と推進という二項対立」を否定し、「安心できるエネルギーのベストミックス」を目指すとした。定期検査後の再稼働も言明した。菅前首相の無責任な「脱原発」路線を継承しないのは当然だ。

環太平洋経済連携協定(TPP)については、「高いレベルの経済連携協定の締結を戦略的に追求する」と述べただけだった。TPP参加を早急に決断すべきだ。

ねじれ国会と国難が重なる今、野党が担う責任も重い。

谷垣氏は大震災の復旧・復興を「党派を超えた責務」と認め、政権への全面的協力を明言した。

そう言う以上は、本格的な復興のための第3次補正予算案の早期成立に向け、与野党協議に応じるのが筋である。

自民党は近く、執行部人事を予定している。与党との協議を進めるため、それにふさわしい体制を整える必要がある。

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