信用危機とG7 互いの背中押す会議に

毎日新聞 2011年09月07日

信用危機とG7 互いの背中押す会議に

世界経済の先行きに対する不安が一向に収まらない。欧州の債務危機が銀行の信用不安に発展するなど、事態は深刻化の様相さえ見せている。円相場の上昇、株価の連鎖安をもたらし、日本経済にも、大きな影を落としている。

そんな中、先進7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議がフランス・マルセイユで今週末、開かれる。それぞれの経済が抱える問題について率直に懸念をぶつけ合い、困難な対策の実施に向けて互いの背中を押すような会議にしてほしい。

最大の懸案は何と言ってもユーロ圏の債務問題だ。ユーロ加盟国は7月、ギリシャへの追加金融支援などを決めたが、ギリシャ国債が再び暴落するなど、緊張が高まっている。不安はイタリアに飛び火し、こうした国の国債を大量に保有している金融機関の株が売り込まれている。

放置すれば重大な金融危機につながる恐れが出てきた。ユーロ債の導入など加盟国の債務をユーロ圏全体で保証するような抜本策が避けられない事態だが、カギを握るドイツのメルケル政権は拒み続けている。

ユーロ圏の信用不安が解消しない限り米国や日本の経済もずるずると悪化の方向に引きずられよう。ユーロ圏外の国は結束し、独仏に政治決断を迫るべきだ。

米国に対しては、一段の量的緩和などドルの信用低下につながる政策に走らぬよう求めておきたい。景気の二番底懸念が強まってはいるが、量的緩和が解決策とならないことは、過去の実施で明らかだ。

日本は「円高阻止」で他国の協力を仰ぐというのではなく、為替市場の混乱や新興国の資産バブルなど、ゆがみをもたらす量的緩和は米国にも世界経済にも有害となることを強調すべきだ。

ユーロ不安のあおりで通貨高となったスイスが対ユーロ相場の上限を設けて市場介入するという。こうした「目には目を」の通貨戦争が過熱するのをG7は防ぐ責任がある。

日本の課題は野田佳彦首相が表明した通り経済成長と財政再建である。迅速で質の高い復興事業により、震災前より強い経済に生まれ変わる意思を表明しなければならない。そして、先進国共通の課題である財政再建で、歳出、歳入の両面から根気よく改革を実行していく決意を明確に伝えることだ。

今月下旬には、中国、インドなど新興国を加えたG20(主要20カ国・地域)の財務相・中央銀行総裁会議が控えている。G7が先進国らしく問題解決に動かなければ、G20という新体制を主導することもできず、世界経済を不安定にしてしまいかねないことを忘れてはならない。

読売新聞 2011年09月11日

欧州財政危機 ギリシャ支援加速求めたG7

欧州の財政危機が世界的な金融不安に発展しかねない。日米欧が、そうした危機感を共有し、財政再建へ協調していく方針で一致した。

仏マルセイユで9日開かれた先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、世界経済の安定に向けた合意文書を採択した。

今回のG7は当初、共同声明の発表を予定していなかったが、声明に準じる文書をまとめた。欧州問題が市場の混乱要因になっており、メッセージを打ち出す必要があると判断したのだろう。

ユーロ圏は7月、財政危機に陥ったギリシャに対する第2次支援策を決めた。しかし、各国の足並みの乱れと議会承認の遅れなどを理由に支援策は滞っている。

ギリシャの景気後退で危機は再燃し、イタリアやスペインにも信用不安が飛び火した。

これに伴って通貨ユーロが急落し、ニューヨーク株式市場などの世界的な株安も止まらない。

G7文書が、「ユーロ圏は債務問題などを解決する約束を完全履行する決意を再確認した」と言及した意味は重い。日米が欧州各国に対し、ギリシャ支援策の着実な実施を促した結果といえる。

文書は、世界経済に減速の兆しがあると警告したうえで、「経済活動を支援しつつ、財政健全化を達成するという困難な道を歩まなければならない」とも指摘した。経済成長と債務削減を両立させるG7の決意を示したものだ。

とくに今、問われているのは欧州の具体的な行動である。仏独両国が主導して、ギリシャなどの財政再建を急ぎ、危機封じ込めに全力を挙げるべきだ。

欧州の財政危機は、日米にとっても対岸の火事ではない。

オバマ米大統領は財政赤字削減を目指す一方、追加雇用対策を発表した。景気が二番底に陥らないように配慮しながら、財政を立て直す難しい(かじ)取りが必要だ。

野田政権発足後、初めての国際会議となった今回、安住財務相は震災復興の方針を説明した。復興財源は「将来世代に先送りしない」と述べ、財政赤字を拡大させない方針を表明したのは妥当だ。

日本は先進国で最悪の財政赤字を抱える。安定的な復興財源を確保することが求められる。

歴史的な超円高について、G7文書は、「過度な変動や無秩序な動きは経済・金融の安定に悪影響を与える」という従来の表現にとどまった。政府・日銀は超円高の是正へ、介入を含めて断固とした措置を取るべきである。

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