電力制限解除へ それでも原発再稼働は必要だ

毎日新聞 2011年09月02日

電力制限解除 経験を次につなげよう

今夏の電力不足に対応するため政府が発動している電力使用制限令が前倒しで解除されることになった。

東京電力と東北電力の管内にある契約電力500キロワット以上の大口の需要が対象で、7月1日から平日の午前9時~午後8時の間、最大使用電力を昨夏のピークに比べ15%削減するというのが制限令の内容だ。違反した場合には、100万円以下の罰金も設けた。

当初の終了予定は東電管内が9月22日だった。しかし、9日としていた東北電力管内と同時に、東電管内も解除する。また、東日本大震災と新潟・福島豪雨の被災地は2日に前倒しする。

節電に努めたほか自家発電の導入など企業や家庭の対応の一方、気温上昇が昨夏ほどではなかったことから、東電管内を中心に供給力に余裕もできた。そして、暑さのピークも過ぎたことから、制限令を解除しても電力不足に陥る可能性は低いと政府は判断したようだ。

他の先進国と比べても停電の頻度が格段に低い日本では、電力は使いたいだけ供給されるというのが、これまで“常識”となっていた。それが、東日本大震災直後の東京電力管内での計画停電によって覆った。

さらに、原子力発電所が定期検査に入り停止した後、再稼働のめどが立たないことも重なって、電力不足への懸念は、東日本だけでなく西日本にも広がった。

今夏の電力不足は回避されたが、展開された節電の努力の中には、省エネの推進のために、今後も生かしていきたいものもみられた。

太陽光など自然エネルギーによる発電や、LED電球も含めた省エネ性能に優れた家電製品への買い替えは、電力危機により弾みがついた。

熱中症につながるような過度な節電はやめるべきだが、駅やオフィスなどの照明のように、これまでが逆に明るすぎたのではと考えさせられるケースもあった。

原発が停止したままだと、発電余力が乏しい状態が続く。今冬や来夏の電力不足への対策も必要だ。電力の適切な使い方に今後も努めなければならない。

さらに、節電や省エネへ向け企業や家庭が今回示した能動的な努力を、電力改革にもつなげたい。

電力のピークを抑制しつつ自然エネルギーの活用を促すとして注目されているのがスマートグリッドだ。通信と組み合わせ、需給や料金によって電力を使うタイミングを選択できるようにすれば、発電設備への投資を抑え、電気料金の節約にもつながる。

そうした次の課題にも、積極的に取り組んでほしい。

読売新聞 2011年09月02日

電力制限解除へ それでも原発再稼働は必要だ

東京電力と東北電力の管内で、昨年夏に比べて15%の節電を義務づける電力使用制限令が、予定より早く解除される。

深刻な電力不足の恐れが薄れたためで、東京電力管内は9月22日としていた制限の終了日を9日に前倒しする。東電、東北電管内にある東日本大震災などの被災地については、2日で使用制限を終える。

官民をあげた節電努力に加え、残暑がやわらいできたことも追い風になったのだろう。

電力制限は、原子力発電所の事故の影響による電力不足に対応し、大規模な工場やビルを対象に7月1日からスタートした。多くの企業が節電と生産を両立させるため、工場の操業を平日から休日に移すなどの工夫を重ねた。

自主的な節電を求められた家庭を含め、冷房の設定温度の引き上げや、余分な照明の消灯など、節電の動きが広がった。省電力の発光ダイオード(LED)電球などの普及にも弾みがついた。

こうした努力によって、震災直後のような「計画停電」は回避された。省電力に取り組んだ経験を生かして、電気を無駄にしないライフスタイルを定着させたい。

ただし、暖房などで電力需要が高まる冬に電力不足が再び深刻になる恐れが強い。

菅首相が引き起こした無用の混乱のせいで、定期検査で停止した原発の再稼働にメドが立たないからだ。このままでは、来年春までに全原発が停止しかねない。

野田新首相は民主党代表選で、場当たり的な「脱原発」政策を継承せず、安全確認できた原発を再稼働させると公約した。その実現に指導力を発揮すべきだ。

今回の電力制限は、電力不足が経済活動を大きく制約することを改めて裏付けた。

震災で減った発注がようやく戻ったのに、節電によって思い通りの生産ができなかった工場は多い。4月から順調に回復していた鉱工業生産は、7月にブレーキがかかった。電力使用制限の開始が影響した可能性がある。

電力供給への不安から、企業が生産拠点を海外移転させる動きも出ている。空洞化が加速し、雇用の減少に波及しないか心配だ。

東電など電力各社は、原発停止の電力不足を火力発電の追加で補っているが、そのコストは年3兆円と巨額にのぼる。いずれ電力料金の上昇につながろう。

原発の再稼働は、産業空洞化を防ぎ、日本経済が震災から本格的に立ち直る必要条件である。

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