民自公党首会談 課題解決へ協議機関の設置を

毎日新聞 2011年09月02日

党首会談 まず与野党で復興を

野田佳彦新首相(民主党代表)は谷垣禎一自民党総裁、山口那津男公明党代表と党首会談を行った。野田氏は東日本大震災の本格復興策となる3次補正予算案編成などに向けた重要3政策を実務者が協議する場の設置を提案した。

野田氏が当初意欲を示していた「大連立」に直接言及せず、政策主体の対話路線を優先した判断は現実的だ。ねじれ国会に伴う混乱を防ぐうえで、3次補正予算案やその財源対策は与野党協調の試金石となる。自民党は速やかに協議の開始に応じるべきである。

党首会談で野田氏は「子ども手当」廃止を柱とする菅内閣時代の民自公3党合意の順守を確約した。さきの代表選で海江田万里経済産業相は合意の白紙化に言及したが、それでは国会運営は最初から大混乱してしまう。合意尊重は当然である。

会談で谷垣総裁は3次補正予算案処理後の衆院解散を求めた。自民党には新政権との対話路線に慎重な意見もあるようだが「ねじれ」の下で政治を動かすには、与野党協議の枠組みが欠かせない。3次補正のみならず、税と社会保障の一体改革や国会の混乱を防止するルール作りなどに柔軟に対応すべきだ。

3次補正のたたき台として菅内閣は復興基本方針をまとめたものの、高台への住民移転の支援策や「特区」の優遇措置など肝心な部分はまだ決まっていない。復興基本法が定めた復興庁設置のスケジュールもあいまいなままだ。こうした状態を一日も早く解消し、予算の中身と財源規模を決めるのが政治の責任だ。臨時増税など財源を並行して議論することも至極当然である。

また、野田新首相は前原誠司政調会長に閣僚を兼任させず、政府の提出法案を事前了承する権限を認めた。これは09年衆院選で民主党が掲げた「内閣への政策決定の一元化」の事実上の撤回を意味する。

ねじれ国会で法案を修正する与野党協議の比重が増し、多くの議員からは「政策決定に全く関与できない」との不満が噴出していた。こうした事情はわかるが、かつての自民党政権に近いシステムを取るのであれば、議員の族議員化や党の合意形成が長期化する懸念にどう対処するのか。前原氏の手腕が問われよう。

官房長官に腹心の藤村修前幹事長代理の起用が内定するなど、新政権の骨組みも固まってきた。党役員人事で挙党態勢、対野党で対話路線をそれぞれ鮮明にした格好だが、融和を重視するあまり肝心の政策の筋まで曲げるようでは元も子もない。

新内閣の発足にあたり、政権が目指す理念と政策の柱を明確に示すよう、改めて野田新首相に求めたい。

読売新聞 2011年09月02日

民自公党首会談 課題解決へ協議機関の設置を

新政権でも民自公路線を堅持することが改めて確認された。与野党連携へ一応、順調なスタートを切ったと言えよう。

野田新首相が谷垣自民党総裁、山口公明党代表とそれぞれ会談した。内閣の発足前に、与野党の党首が会談するのは極めて珍しい。

日本が直面する待ったなしの課題を解決するには、与野党協力が不可欠だ。政策実現へ建設的な協議を進める必要がある。

党首会談で、野田氏は、民主党の政権公約(マニフェスト)の大幅な見直しを前提とした民自公の3党合意の順守について、「私が約束したわけだから信頼してほしい」と伝えた。

小沢一郎元代表に近い輿石幹事長も「3党合意をしっかり守る」と表明している。

野田氏は党首会談で、本格的な震災対応のための第3次補正予算編成に向け、震災の復旧・復興や税制改正、総合経済対策に関する、三つの実務者プロジェクトチームの設置を提案した。

政府・与党が政策決定過程に、自公両党との協議を組み入れようとする意味合いは小さくない。

野田氏は既に、政府が意思決定をする際は原則、政調会長の了承を得ることを決めた。民主党政権が掲げてきた「政策決定の政府への一元化」を修正するものだ。

菅政権では、政府の意思決定に党がどう関与するのかが不明確だった。新政権では、政調会長の権限が強化され、与野党協議の重みも増すだろう。

野田民主党は与野党連携へ積極的姿勢を示した。次は自民党が応える番だ。野田氏の提案したチーム設置に応じるべきである。

谷垣氏は党首会談で、復旧・復興には協力するとした上で、第3次補正予算成立後の衆院解散・総選挙を改めて求めた。だが、仮に衆院選で自民党が政権に復帰しても、ねじれ国会が続く以上、与野党協議の必要性は変わらない。

谷垣氏は6月の党首討論で、菅首相の退陣を条件に、「党派を超えて新しい体制を作る工夫はできる」と明言したではないか。

今や、谷垣氏が求めた首相退陣が実現し、野田新体制は民自公路線を堅持している。

谷垣氏は、自民党内の対民主党強硬論者を説得し、民主党との連携に動く時である。

民主党だけでも、自公両党だけでも、衆参両院で合意を形成するのは困難だ。3党が話し合う「枠組み」を整えた上で、信頼関係を深め、協議の実を挙げたい。

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