パリバ不正取引 証券市場担う資格がない

朝日新聞 2009年10月18日

BNPパリバ 市場を裏切り続ける罪

こんなに市場と投資家、監督当局をあなどったやり口は珍しいだろう。証券取引等監視委員会は、仏大手証券BNPパリバの東京支店に金融商品取引法違反で行政処分などを下すよう、金融庁に勧告した。

不正は2件ある。第1は昨年11月、東京証券取引所の取引終了間際、ソフトバンク株に大量の買い注文を出して取引を成立させなかった作為的相場形成の疑いだ。

パリバは同株にまつわる複数の金融派生商品(デリバティブ)契約を結んでいたが、この日の相場の終値が決まれば、大量の現物株を買い付けてデリバティブ契約を終わらせる必要があった。そこで、大量の買い注文を高値で出し、「買い気配」のまま値がつかなくなるよう工作したとされる。

動機はデリバティブ解消に伴う様々な負担の回避にあり、貪欲(どんよく)に利益を狙ったわけではないという。しかし、市場への投資家の信頼を踏みにじる行為であることは間違いない。同支店は02年にも終値の操作で業務停止命令を受けている。内部管理体制は一体どうなっているのか。

東証では、いろんな銘柄の終値が異常に乱高下する現象が頻繁に起き、かねて問題視されてきた。パリバは氷山の一角だろう。監視委や東証には厳重な監視を求めたい。

不正の第2は、昨夏に破綻(はたん)した不動産会社アーバンコーポレイションが発行した転換社債(CB)をパリバが引き受けた際、秘密の裏契約をしていた問題に由来する。

この契約でアーバンは調達したはずの300億円をパリバに渡し、パリバはCBを株式に転換して市場で売った金額の9割をアーバンに渡すことになっていたという。差額の1割がパリバに入る。アーバンは結局、必要な金額を調達できず、経営破綻した。

この件で、パリバは昨年11月に金融庁から業務改善命令を受けたが、その際にパリバが提出した報告書に事実と異なる記載がいくつもあった。売買審査など管理体制も報告書とは裏腹に、ずさんなものだった。

だが、意図的に事実を隠した「虚偽報告」だったのかどうかまでは、わかっていない。監視委は、パリバが業務改善命令に違反した点を重視しているが、このアーバン事件の全体をみれば、市場と投資家を裏切った不正という印象はぬぐえない。

勧告を受けた金融庁は、厳正な処分を下すべきである。

不正の背景には、目先の成果を重視する報酬体系の問題もあるという。金融危機後、主要国間で報酬規制が議論されているのは当然だ。

中長期的な業績に連動させるように改めるなど、常識にかなった報酬体系に手直しすることも必要だろう。

産経新聞 2009年10月18日

パリバ不正取引 証券市場担う資格がない

証券取引等監視委員会が仏金融大手BNPパリバ証券を行政処分するよう、金融庁に勧告した。破綻(はたん)した不動産会社の増資引き受け問題で、金融庁に虚偽の報告をしていたほか、上場株式をめぐって金融商品取引法が禁止する「作為的相場形成」をしていた。

売買の意思がないのに取引所の終了間際に高い価格で大口の買い注文を出し、取引が成立しないよう画策するなどして自社の損失を回避したという。市場を歪(ゆが)める行為には厳しい処分が必要なのは言うまでもない。

パリバに対する処分は3度目になる。平成14年に今回と同様の不正取引で業務停止の処分を受けた。昨年は、不動産会社の資金調達にからみ、投資家にとって重要な契約条件の情報を開示しないよう働きかけ、業務改善命令を受けた。その際、金融庁に事実関係を正しく報告しなかったことが今回の勧告につながった。

同社の順法姿勢はいったいどうなっているのか。こう違反行為が続くようでは、市場の担い手としての資格がないと判断されても仕方あるまい。「法に触れなければ何をやってもいい」ということではない。公平、公正な市場維持のために証券会社としての倫理観が求められる。それでこそ、個人投資家らも安心して市場に参加できるのである。経営トップの責任が厳しく問われよう。

監視委側にも改めて、市場での監視強化を求めたい。特に投機的資金などは、規制の網の目をかいくぐってでも制度や監視の緩い市場をターゲットにする。これまでも監視委は、粉飾決算に利用するため違法な金融商品の販売をしていた海外企業について、営業免許を取り消すなど断固たる措置を取った例がある。

市場を萎縮(いしゅく)させてはならないが、「(国際的に)日本市場は侮れない」との緊張感を伝えることも必要だ。

金融工学を駆使した証券化の技術によって複雑な金融商品が次々に生まれている。昨秋来の金融危機を招いた要因として、そうした商品や投資銀行などの行動に対する米証券取引委員会の監督体制の不備が指摘されている。

その反省から金融危機の再発防止を話し合う主要20カ国(G20)の首脳会議では金融監督当局間の緊密な連携で合意した。日本も公正な市場形成に向けて監督体制の充実を怠ってはならない。

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