北アフリカの産油国リビアで、最高指導者カダフィ氏の42年にわたる独裁体制が、崩壊への秒読みに入った。
東部から広がった独裁打倒の波は、ついに首都トリポリに達した。
反体制派の蜂起による内戦が始まって半年、米英仏の軍事介入から5か月が過ぎた。この間に多数の犠牲者が出たのは痛ましい。
カダフィ氏はなお、徹底抗戦を叫んでいるが、これ以上の流血は許されない。リビア再建のため、直ちに戦闘をやめ、身を引くべきである。
カダフィ氏は改革を求める国民の声に耳を貸さず、傭兵を使って武力弾圧一辺倒で応じた。それが政権崩壊の引き金となった。国民の武力抵抗と欧米諸国などの軍事介入を招き、孤立化した。
リビア同様に、国民の民主化要求デモを武力弾圧し続けているシリアのアサド政権には、強い警告となるだろう。
リビア情勢は、東部を制圧した反体制派と首都を拠点に西部を掌握するカダフィ政権側との間で、一進一退の攻防が続いていた。
だが、カダフィ政権は、国際社会の経済制裁や、北大西洋条約機構(NATO)が指揮した空爆と海上封鎖で補給路を断たれた。これでは自滅するしかあるまい。
元首相や石油相が政権から離反するなど、政権幹部のカダフィ氏への忠誠心は失せ、政権側部隊の士気が衰えたのも当然だ。
反体制派が頑強な抵抗に遭遇せずに首都に進攻できたのは、その証しと言える。
反体制派による首都完全制圧が成功しても、難題が待ちかまえている。「カダフィ後」の新体制をどう築くかという問題である。
リビアには、エジプトやチュニジアと異なり、憲法や議会制度を持った経験がない。
カダフィ氏は「人民大衆による直接民主主義」を掲げたが、それは名ばかりで、カダフィ一族の恣意的統治に過ぎなかった。独裁崩壊は、ゼロからの国家再建を迫ることになる。
リビアには、封建的な部族社会が残っている。反体制派はさまざまな部族や諸勢力の寄せ集めであり、部族対立が社会を不安定化させる可能性も常にあろう。
反体制派を代表する「国民評議会」は、「正当な対話相手」「リビアの代表」として、国際的に認知されつつある。日本を含む国際社会は当面、この評議会と連携を深め、リビアの再建と安定化への道を模索していくべきだ。
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