民主党代表選 大連立への道筋を主要争点に

朝日新聞 2011年08月19日

民主党代表選 拙速は禍根を残す

民主党代表選が27日告示、29日投開票で検討されている。26日に菅首相の「退陣3条件」が満たされ、首相が正式に辞任を表明するというシナリオだ。

日程案を練る岡田克也幹事長が、政治空白を短くしたいという気持ちはわかる。確かに、東日本大震災からの本格復興のための第3次補正予算案や、来年度予算案づくりをこれ以上、遅らせることは許されない。

だが、民主党の代表選びは、首相選びだ。所属国会議員の投票で決めるにしても、わずか3日間で「次の首相」を決めるのは拙速に過ぎる。

日程の再考を強く求める。

民主党執行部には、昨年、鳩山前首相が政権を投げ出したときも、退陣表明の2日後には菅代表が誕生したという思いがあるのだろう。しかし、菅氏は当時、副総理であり、比較的、順当な継承といえた。

それに比べて、今回の代表選に意欲を示す顔ぶれには、世代交代をめざす中堅が多い。政治家としての力量も、政治理念ややりとげたい政策も、ほとんど知られていない。

さらに昨年より、新首相の責務は厳しく、重くなっている。

2代続けて挫折した民主党政権への失望感に加えて、震災という国難に際しても、政争に明け暮れる与野党に、国民はほとほとあきれている。新首相は、こんな政治への信頼を回復する先頭に立たなければならない。

その上で、震災復興や原発事故を受けたエネルギー政策の大転換を担うのだ。

これほどの重い使命を果たせる政治家なのかどうか。民主党は有権者に示す責任がある。

そのためには、候補者同士が公開討論を重ね、公約の中身を確かめ合う作業が欠かせない。そのやりとりへの有権者の反応を、民主党議員は地元や関係者から聞いた方がいい。

それには最低でも1週間程度の論戦は必要だろう。そうなると、国会での首相指名選挙は8月末までの今国会中には終わらないが、それでもとくに問題はあるまい。9月早々に臨時国会を召集すれば済む話だ。

この2年間の政権党としての民主党を振り返れば、拙速が禍根を残すのは見えている。

たとえば、3次補正の財源を賄う増税には、民主党内に強い異論がある。議論を尽くさなければ、後で蒸し返され、党内での足の引っ張り合いが続くだけだ。エネルギー政策もマニフェストの見直しもしかりである。

新代表の政策で党がまとまるために、代表選での政策論争にもっと時間をかけるべきだ。

毎日新聞 2011年08月16日

大連立論議再燃 実現性と大義はあるか

菅直人首相の退陣確定を受けた民主党代表選に向けた動きが活発化している。出馬の意向を固めた野田佳彦財務相は新代表に選出された場合、自公両党との大連立を目指す考えを表明した。

東日本大震災直後、緊急危機管理で民主、自民が一定期間、連立することはひとつの方法だった。だが、現時点の実現には基本政策一致や来年度予算編成の扱いなどハードルはかなり高いうえ、単純に政権を安定させるという目的では国民理解も得られまい。与野党協調体制について、幅広く議論を深めるべきである。

野田氏は「与野党が胸襟を開いて話し合い、救国内閣を作るべきだ」と大連立を提起した。前原誠司前外相も1年程度、期間を区切る形での実現に賛意を示した。岡田克也幹事長は新代表選出後に野党と政策を協議し、首相指名は9月の次期臨時国会とする展開についても言及した。

大連立構想は震災発生直後だけでなく、菅首相が退陣の意向を示した今年6月にも浮上した。野田氏の掲げる財政再建路線や政権公約見直しは自民にも評価する声がある。協調路線を、自らをアピールする材料とする狙いもあるのだろう。

確かに首相が交代しても「ねじれ国会」の壁が民主党政権には立ちはだかる。たとえ衆院選で政権を維持したとしても、衆参ねじれは続く。野党との協力体制をどう構築するかという路線問題は、代表選の大きなテーマである。

だが、大連立には実現性と大義名分の双方に疑問がつきまとうのも事実だ。自民党の谷垣禎一総裁は「復興で協力するのは当然だが、そのほかは是々非々だ」と慎重姿勢を示している。震災から5カ月以上を経て、しかも菅内閣の実質崩壊を経ての代表選である。外交など基本政策や、来年度予算の扱いなどの問題をていねいにこなさないと、自民もおいそれと議論に乗る環境にあるまい。

民主党の政権運営能力への国民の疑念は深まっている。それを自覚しての大連立構想というのであれば、政権公約を完全にほごにするのか、首相を自民に譲るつもりなのかも問われよう。

3次補正予算案や財源対策など復興行政や、税と社会保障の一体改革に道筋をつけるのであれば、政策ごとの合意や、閣外協力などさまざまな方策があるはずだ。大連立構想に縛られず、議論すべきではないか。

政権公約見直しをどう進めていくかの具体策、増税問題への対応など政策の中身が伴わないまま、路線論議に熱中することは不毛だ。名乗りを上げる候補は一日も早く態度を表明し、党の立て直しに向けた論戦に参入してほしい。

読売新聞 2011年08月16日

民主党代表選 大連立への道筋を主要争点に

民主党は鳩山、菅両政権による国政の停滞と混乱を反省し、野党と大胆に連携することで政治を動かさねばならない。

菅首相の後継を選ぶ党代表選で、出馬の意向を固めた野田財務相が、自民、公明両党に連立政権への参加を求め、「救国内閣」を目指す考えを表明した。

新政権の枠組みとなる大連立や野党との連携のあり方が主要な争点に浮上してきたのは必然だ。衆参ねじれ国会の下で政権運営を進めるには、自公両党など野党との連携は欠かせない。

今回の代表選で問われるのは、野党から信頼を得られる新代表を選べるかどうかである。

菅首相も東日本大震災の直後、大連立を模索した。国家的危機だとして自民党の谷垣総裁に電話で「責任を分担してもらえないか」と入閣を迫った。その唐突で独善的な態度が信頼されず、大連立の最大の障害となったのである。

野党に対して、大連立を提案するのであれば、民主党がまず、その目的や、期間、取り組むべき共通の政策課題について明確にすることが前提となろう。

野田氏は、目的について「東日本大震災からの復旧・復興、原発事故収拾など当面の課題を乗り越えるためだ」と説明している。

消費税増税も肯定し、「昔言っていたことにしがみついていたら与野党協議はできるはずがない」と述べ、政権公約(マニフェスト)も見直す考えを示した。

増税や政権公約の見直しについて、民主党内では小沢一郎元代表のグループなどに反対論が根強い。代表選には、小沢氏らが推す候補も出馬するだろう。この問題に決着をつけねばならない。

政治手法も重要な論点だ。官僚と不毛な対立を生むような「政治主導」を見直し、官僚を使いこなす体制を構築する必要がある。

大連立を実現するには、民主党が、政権内の情報収集、判断、官僚への指示という政策遂行の道筋を大事にして、与野党協議の環境を作ることが肝要だ。

仮に大連立を組むことになっても、連立政権では政党間協議による政策調整が欠かせない。民主党が迅速に意思決定できる体制を整えることが急務である。

民主党は代表選後、今国会中に新首相を選出する方向だ。

だが、大連立か、閣外協力かなど新政権の枠組みをどうするかは極めて重要な問題だ。政策はもとより、政権の意思決定の仕組みの協議が拙速とならぬよう、十分時間をかけるべきではないか。

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