朝日新聞 2011年08月13日
再生エネ法案 新電力の成長促そう
再生可能エネルギー特別措置法案が今の国会で成立する見通しになった。民主、自民、公明の3党が合意した。風力や太陽光による発電を大きく成長させる道が開く。
これらのエネルギーは電力会社に買い取らせる。3党の話し合いで、その価格が種類ごとに妥当かどうかを判断する第三者委員会を作ることになった。委員の人事は国会の同意を必要とし、価格を算定する方法も国会に報告する。
買い取り費用を負担するのが電気の利用者である以上、価格や買い取り期間がどういう根拠で決められたかを広く公開し、納得を得る必要がある。与野党協議で透明化への努力がはらわれたことは評価したい。
新たに作る委員会は重要な役割を担う。価格が低すぎれば普及が進まない。保護が行き過ぎれば電気料金が不当に高くなるだけでなく、発電事業者の経営努力や自然エネルギー産業の自律的な成長を阻みかねない。
専門知識とともに、技術革新の動向や量産による効果を見極めながら合理的な買い取りへと導く力が求められる。
与野党協議で、電力を多く使う業界への軽減措置も盛り込まれた。コスト上昇を嫌う経済界に配慮して自民党が求めた。
だが、大口需要家への売電価格はすでに自由化されている。電力会社間で料金体系を競争するよう促し、あるいは企業の省エネ努力を軽減の条件にするべきだ。割引のための負担が安易にほかの企業や一般家庭に回されてはならない。
新法では、電力会社は発電業者の求めに応じて自然エネルギーを自社の送電線に接続することが義務づけられる。悪質な違反には罰金を科す。
気になるのは「安定供給に支障が出る場合」は除外が可能という規定だ。これまでも、電力会社はこの言い分で、新たな風力発電計画への接続を何度も断ってきた。
同じことが繰り返されては、独占を守りたい電力会社の都合が優先され、自然エネルギーが伸びてゆかない。例外規定が抜け道に使われないよう、厳しく監視する必要がある。
法案の元々の目的は、温暖化ガス削減のための自然エネルギー普及だった。だが、原発事故を経験した日本にとって、多様な代替エネルギーの開発は、原発を減らしてゆくためにも必須のものへと変わった。このことを私たちは直視すべきだ。
法成立後も、送電網の開放や広域運用によって再生エネルギーの開発をさらに進めたい。
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毎日新聞 2011年08月17日
再生エネ法 着実に取り組む体制を
再生可能エネルギー固定価格買い取り法案が成立の見通しとなった。解決が必要な問題が数多く残されているものの、持続可能なエネルギーシステムの構築は、避けては通れない課題だ。利用が着実に拡大するよう、後押ししたい。
太陽光や風力、地熱など再生可能エネルギーによってつくられた電力を電力会社が買い上げ、そのコストを電力料金に上乗せして回収するのが、この法案のポイントだ。これまでは自家使用を除く余剰分の買い取りだったが、純粋に販売目的の電力も新たに買い上げの対象となる。
温室効果ガスの排出抑制がこの法案のもともとの目的だった。しかし、東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所の事故を経て、原発への依存の見直しという観点が加わった。
法案策定段階と状況が大きく異なっており、修正が加えられたのは当然の成り行きだ。
買い取り価格は、人事に国会の同意が必要な第三者委員会の検討をもとに決める。また、電力使用量が多い産業には負担軽減措置をとるといったことが、新たに盛り込まれた。
価格の決定過程を透明化し、影響の大きな産業に配慮することは必要な措置だ。
ただ、買い取り価格がある程度高くないと、参入意欲は高まらない。かといって、価格が高くなりすぎると負担が大きくなり、産業の空洞化による雇用などへの影響も心配しなければならなくなる。バランスのとれた価格設定が重要だ。
また、太陽光や風力による発電は、発電量が不安定なのに加え、電圧や周波数といった電力の質の面での問題も抱えている。現在の電力会社ごとの送電網運用では導入に限界があるため、送電網の広域運用など導入量を増やす仕組みを構築する必要がある。
家庭や事業所に設置した電池にいったん蓄え、安定化を図るといった方策も、再生エネルギーの活用拡大につながるだろう。
再生可能エネルギーの活用に期待されていたのは、温室効果ガスの抑制だったが、原発の停止にともない当面は、石油や天然ガス、石炭といった化石燃料に頼る分を増やさざるを得ない。
その分も含め、原発への依存度を下げつつ温室効果ガスの排出抑制も目指さなければならない。ハードルは高い。
ただ、持続可能なエネルギー供給の実現は不可避の課題だ。また、そこには新しい産業を育てる面があることも忘れてはならない。通信と連携して賢い電力の使い方を探るスマートグリッドなどだ。
省エネなど他の方策とも合わせて、着実に取り組んでいきたい。
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読売新聞 2011年08月10日
公債法案成立へ 首相退陣の環境が整ってきた
米国債の格下げを契機に世界同時株安が進む中で、日本の財政危機を回避しなければならない、との判断が与野党ともに働いたのだろう。
民主、自民、公明の3党幹事長は、2011年度当初予算の財源となる赤字国債を発行するための特例公債法案を速やかに成立させることで合意した。
法案は週内に衆院を通過し、今月中に成立する見通しだ。予算の一部が執行できない事態は回避される。与野党が互いに譲歩し、合意を得たことは評価できる。
3党の確認書では、民主党の政権公約(マニフェスト)のうち、高速道路の無料化について「来年度予算の概算要求に計上しない」と明記した。高校授業料無償化や農家の戸別所得補償は「必要な見直しを検討する」としている。
民主党は、バラマキ政策の問題点を認め、見直しに踏み込まざるを得なかった。
一方で、公明党は、震災復興を置き去りにするような政争と見られることを嫌い、柔軟姿勢に転じた。これまで法案の成立阻止の強硬論を唱えてきた自民党も、最終的に歩み寄った。
特例公債法案の成立は、菅首相が掲げる退陣条件の一つだ。首相は3党合意を受け、「これまで自分が言ってきたことに責任を持つ」と述べた。退陣の環境は整いつつあると言えよう。
問題は、民主党の岡田幹事長が高速道路無料化について、「来年度は計上しないが、政策そのものの撤回とはまったく違う」と述べ、これまでの旗を降ろさない構えを見せていることだ。
子ども手当の事実上の廃止に続く、看板政策の断念に対し、民主党内の反対論が根強いことを念頭に置いた発言と見られる。
だが、ねじれ国会では、野党の協力が欠かせない。野党が納得できるよう、民主党執行部は党内をまとめるべきだ。
「ポスト菅」体制を築くに当たって、この与野党協調の流れを変えてはならない。
特例公債法案は、そもそも3月に、当初予算案とともに成立させるべきだった。今後、与野党が取り組まなければならないのは、本格的な震災復興のための財源をいかに確保するかである。
確認書では、復興債の償還財源などについて、「第3次補正予算の編成までに各党で検討を進める」としている。
3党による政策協調態勢を維持し、迅速に課題を処理できる政治体制を築くことが必要だ。
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