世界で最上級だった米国債の格付けが、史上初めて引き下げられた。
“格下げショック”を受け、週明け以降、世界同時株安や、ドル安に拍車がかかりかねない。市場の動揺を食い止めるには、米国の着実な財政再建策が不可欠である。
米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は5日、米国の長期国債格付けを最上級の「AAA(トリプルA)」から、「AA(ダブルA)プラス」に1段階引き下げた。
S&Pは国債格下げの理由として、「中期的な財政安定化が不十分」と指摘している。
オバマ大統領と与野党は、政府の借金枠である債務上限の引き上げと財政再建で合意し、10年間で2・4兆ドルの赤字削減を柱にした予算管理法が2日に成立した。
しかし、具体的な赤字削減策を巡る主張の隔たりは大きく、削減幅も大統領の当初案だった3兆~4兆ドルに比べて小さい。S&Pはこうした状況を評価し、格下げを決めたと言えよう。
米国政府は格下げに反論したが、予算管理法の実効性が厳しく問われている。
大統領と与野党は歳出カットと増税を含めた協議を加速し、市場の信認を得られるような財政再建の方策を打ち出すべきだ。
一方、今回の格下げが、世界の金融市場に与える悪影響を懸念せざるを得ない。
米欧経済の減速をきっかけに、ニューヨーク株式市場の平均株価は4日、500ドル超も急落し、5日も乱高下した。欧州や日本などアジア市場でも、軒並み、株価が全面安となった。
外国為替市場では、政府・日銀の円売り介入で超円高にいったんブレーキがかかったが、再び、ドル安圧力が強まっている。
国債格下げでドルに対する信認がさらに揺らぐと、債券市場を含めた混乱は避けられまい。
日本は中国に次ぐ世界2位の米国債の保有国だ。国債下落の影響にも注意する必要がある。
当面の焦点は、米連邦準備制度理事会(FRB)が9日開く会合で、景気てこ入れのため、追加緩和策に踏み切るかどうかだ。
財政赤字を抱えた政府は景気刺激策に動きにくく、FRBに期待する声は強い。ただ、追加緩和策は円高ドル安を誘導し、日本には厳しい展開も予想される。
世界経済は、主要国の結束で金融危機を克服した後、景気拡大を続けてきた。危機の再燃を防ぐ連携が改めて求められよう。
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