原子力政策 危険な原発から廃炉に 核燃サイクル幕引きを

朝日新聞 2011年08月07日

原子力安全庁 原発仕分けを担え

福島第一原発の事故を受けて政府が検討していた、原子力規制機関の再編に向けた試案が示された。

経済産業省から原子力安全・保安院を切り離し、内閣府の原子力安全委員会や文部科学省内の原子力関連業務などと統合して「原子力安全庁(仮称)」を新設する。

原発を推進する立場にあった経済産業省内に、規制機関の保安院があったこと自体がおかしかった。原発立地などの住民説明会に際し、推進側の発言者を確保するよう電力会社に依頼していた事実も判明した。分離は当然の判断だ。

ただ、新たな所属先については、環境省か内閣府か、閣内の調整がつかず試案では両論併記となった。よりふさわしいのはどちらか。それぞれに一長一短がある。

大事なのは、新しい原子力行政の中で、新庁の役割と位置づけを明確化することだ。

国策として原発を推進している中では、規制機関は原発の新設・稼働にお墨付きを与える存在にすぎなかった。

しかし、政府は原発への依存度を減らしていく方針を明確にしている。新庁は、原発の段階的な削減に向けて、新たな機能を果たさなければならない。

すでに私たちは、老朽化した原子炉や大地震などへの備えに不安が拭えない原発から廃炉にしていくよう提言している。そうした高リスク原発の「仕分け作業」を、新たな組織が担っていく必要がある。

また、原子力安全委には首相を通じて関係省庁に勧告できる強い権限があった。新しい態勢で、こうした独立性や機能をどう担保するかも、議論を尽くしてほしい。

組織づくりとともに大事なのは「人」の問題だ。

新庁の大半の職員はまず、元の組織からの横滑りとなる。古巣を向いたまま仕事をするようなことにならないよう、職員全体の意識改革をはからなければならない。

役所の慣例となっている内部昇格主義を改める。民間からの登用も含めて各部署の要所に新しい人材を入れる。

新しい役割に向かって仕事をすることが評価の対象となり、一人ひとりが責任感とやる気をもてる人事管理体系をつくる必要がある。

エネルギー政策を抜本改革するには、経産省や資源エネルギー庁自体の見直しにも踏み込まなければならない。保安院の分離と新庁の創設はその第一歩であることを忘れないでほしい。

毎日新聞 2011年08月09日

原子力安全庁 中途半端で終わるな

原子力の安全規制を担う組織をどう再構築するか。東京電力福島第1原発の事故を踏まえた政府の試案が公表された。

第1段階で、原子力安全・保安院を経済産業省から分離し、原子力安全委員会と統合する。第2段階で、原発政策・エネルギー政策の見直しを新組織のあり方に反映させる、という内容だ。

安全規制機関である保安院が原発推進の経産省に属することの弊害は再三指摘されてきた。明らかになった保安院の「やらせ」は、日本の原子力安全規制のゆがみを白日の下にさらしたといっていいだろう。経産省から分離するのは当然のことだ。

しかし、保安院を切り離すだけでは問題は解決しない。今度こそ「独立性」「専門性」「危機管理力」をしっかり担保する体制作りが必要だ。改革を中途半端に終わらせないようにしたい。

そのために、どういう組織にすればいいのか。試案は、新設する原子力安全庁(仮称)を内閣府の外局か環境省の外局に設置する選択肢を示しているが、一長一短がある。

経産省からの独立という観点では環境省の方が適しているとの見方が強い。一方、環境省は危機管理や調整力が弱いとの指摘もある。

現在の試案に欠けている視点として、「政治からの独立」も見逃せない。国民から信頼を得るには、経産省の影響力を排除するだけでは不十分ではないか。

そうした観点から、米国の原子力規制委員会(NRC)のような組織も考えられる。委員会形式については、細野豪志原発事故担当相が、危機管理の際の意思決定に適していないとの判断を示した。

だが、危機の際には、自治体や警察、自衛隊、電力会社などをまとめて動かす必要がある。内閣府や環境省に置いても、安全規制組織だけで対応できる問題ではないだろう。

緊急時の体制を別に整えるという前提に立てば、委員会形式にも再考の余地がある。原子力災害に限らず、米国の連邦緊急事態管理局(FEMA)のような危機管理組織を検討する必要もある。

どこに設置するにしても、最初は保安院など既存の組織から職員を配属することになるだろう。過去のしがらみにとらわれず、原子力のリスク管理を「本職」とするプロ集団にすることが大事だ。安全規制組織と推進組織の間を行き来する人事の規制も必要だ。

新組織の要となるのは、なんといっても人材だ。技術的な専門知識はもちろん、国際的視点を持ち、安全規制のあり方を多方面から分析できる優秀な人材を育てる。そのための体制作りに知恵を絞ってほしい。

読売新聞 2011年08月06日

原子力安全規制 組織一元化で信頼を取り戻せ

福島第一原子力発電所の事故を受け、原子力安全規制に関する行政組織を再編する試案を政府がまとめ、公表した。

原発推進を担う経済産業省から原子力安全・保安院を分離し、内閣府の原子力安全委員会と統合して、「原子力安全庁」(仮称)を新設する。

安全庁には、文部科学省など関係各省に分散している安全規制の関連部門も一元化して、規制体制を一新する方針だ。

現体制では、福島第一原発の事故を防げず、事故後の対応も後手に回った。安全庁は安全対策を徹底し、国民の信頼を得られる組織とならなければならない。

経産省からの保安院分離は、当然の措置である。

国際的にも、規制組織の独立は鉄則とされている。国際原子力機関(IAEA)からも、かねて日本の課題と指摘されてきた。

規制部門でありながら、保安院が、住民説明会で原発推進の発言を増やすよう、電力会社に働きかけたことも発覚した。

経産次官や保安院長など幹部を更迭したところで、不信を払拭できるわけではない。

問題は、安全庁を政府のどこに位置づけるかだ。再編案は、内閣府と環境省の両論を併記した。

より中立性が高く、規制に力を発揮できる組織とするために、どちらがふさわしいか、閣内で見解が分かれたからだ。

内閣府に置くなら、少子化対策や防災など他の分野との兼務ではなく、安全庁担当の専任閣僚を設ける必要がある。

環境省は、産業活動の規制で実績を持つ。一方で、地球温暖化対策の観点から、温室効果ガスをほとんど出さない原発を後押ししてきた、とも指摘されている。

再編案は近く閣議決定される予定だ。ただ、退陣する菅首相のもとで決める問題なのか、との指摘も出ている。禍根を残さぬよう議論を尽くしてもらいたい。

再編案は、知識や専門性を備えた人材の育成も課題として掲げている。重要な問題だが、脱原発や減原発が議論される中で、優れた人材が集まるだろうか。

原子力規制の関連法も、欧米のように、重大事故の発生を前提とした内容になっていない。抜本的な見直しが求められる。

政府は来年4月には安全庁を発足させる方針だ。関連法案をまとめ、国会で審議するには、時間的余裕はあまりない。

原子力政策をどう進めるかを含め、議論を急ぎたい。

毎日新聞 2011年08月02日

原子力政策 危険な原発から廃炉に 核燃サイクル幕引きを

自然は予測がつかない。原発事故は広い範囲に回復不能なダメージを与える。その影響の深刻さにたじろぐ5カ月だった。

地震国日本で重大な原発事故のリスクはこのまま許容できない。私たちは「原発の新設は無理」との認識に立ち、「既存の原発には危険度に応じて閉鎖の優先順位をつけ、減らしていこう」と提案してきた。

こうした仕分けを実行に移していくには、それぞれの原発のリスクの見極めが必要だ。

東京電力福島第1原発では、大津波が重大事故の引き金を引いた。備えの甘さや、初動の遅れなど、人災の部分は検証を待つ必要があるが、地震や津波のリスクはあらゆる原発で見逃せない。

私たちが「まず考慮を」と指摘した浜岡原発は、政府の要請に応じて停止された。東海地震の被害に予測不能の部分があることを思えば、今後は廃炉を考えていくべきだ。

ただし、忘れてはならないのは、大地震のリスクは日本中にあり、浜岡さえ止めれば安心というわけにはいかないことだ。「過小評価」と指摘されたことのある活断層の再検討はもちろん、津波堆積(たいせき)物などから過去の地震を積極的に推測し、考慮に入れる。それでも想定できない地震があることまで念頭に入れ、リスク評価することが大事だ。

「老朽原発」のリスクも多くの人が心配している。日本には法律で規定された原発の寿命はない。30年で老朽化の評価と国の認可を義務づけ、40年、50年と延命策をとる。背景には、新たな立地の難しさや、運転を延長するほど電力会社の利益になるという経済の論理がある。

しかし、古い原発には弱点がある。原子炉や発電所の設計に安全上の欠点があっても、新たな知識を反映させにくい点だ。構造物自体の経年劣化が見逃される恐れもある。

福島第1原発1~4号機はマーク1型の原子炉を使い、33~40年運転してきた。マーク1は米ゼネラル・エレクトリック(GE)社が1960年代に開発した旧型炉で、米国でも危険性を指摘する声があった。

福島第1原発では、重要な機器が津波の被害を受けやすい場所にあったり、ベント(排気)の不調が指摘されるなど、古さが事故の一因となった可能性が否めない。

国内54基のうち、運転開始から30年以上40年未満のものが16基、40年以上が3基ある。今後は、「40年以上」「旧型」を指標に老朽原発を廃止していく。30年を超えた原発も老朽化の影響を再検討すべきだ。

強い地震動に揺さぶられたリスクも徹底検証すべきだろう。今回の地震でも福島第1以外に、東北電力女川原発などで一部の揺れが耐震指針の想定を上回った。07年の新潟県中越沖地震で想定を超えて揺れた東電柏崎刈羽原発についても、福島の経験を踏まえた再検討が必要だ。

こうしたリスクを認識した上で、私たちは既存の原発を一度に廃止することは現実的でないと考えてきた。他の電源で十分な電力供給ができない場合には、再稼働も必要となるだろうが、その場合には安全性を厳格に審査すべきだ。

老朽化も含め、想定外の事象にどれほど余裕をもって耐えられるか総合的に評価し、リスクに応じた仕分けを行う。弱点を明らかにして対策を取り、安全対策コストが割に合わないものは廃炉につなげる。

国が進める安全評価(ストレステスト)は、それをめざしているはずだが、根本的に検討する姿勢が見られない。少なくとも福島の事故調査を踏まえて評価する。規制機関が信頼を失っている以上、独立した専門家チームの点検や、公開訓練なども求められる。

現在、原子力安全委員会は、福島の事故で不備が明らかになった安全設計審査指針や耐震指針などの抜本的見直しも進めている。これが終わらないうちは、政府のストレステストに「合格」しても、仮免許にすぎない。そうしたこともよく説明した上で、地元や国民の判断をあおぐ必要がある。

建設中の原発についてもそのまま進めることには疑問がある。凍結してリスクを再評価すべきだ。新設はせず、今後の政策を考えたい。

こうしたリスク評価の際に気をつけなくてはいけないのは、「動かすために、リスクを低く見積もる」という落とし穴に陥らないようにすることだ。あくまで、「リスクに基づき、動かすかどうかを判断する」という姿勢に徹しなくてはいけない。

今回の事故では防護壁のない使用済み核燃料プールの危険性も明らかになった。小手先でない安全策を取ることも求めたい。

日本はこれまで、核燃料サイクルを原発政策の要としてきた。原発で燃やした後の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で燃やす政策だ。

しかし、今回の大事故が起きる前から核燃料サイクルの実現性と安全性には大いなる疑問があった。サイクルの両輪をなす再処理工場(青森県六ケ所村)と、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、いずれも度重なるトラブルで、将来の見通しが立たない。

再処理工場は当初97年に完成予定だったが、すでに18回延期され、コストは3倍近くに膨れ上がった。もんじゅは、運転開始直後に火災で止まり、昨年、14年半ぶりに起動したとたんに事故を起こした。もんじゅの先にある実用化は予定が公表されるたびに先延ばしになり、実現性は見えない。

二つの施設が抱えるリスクも見逃せない。再処理工場では大量の使用済み核燃料がプールに保管されている。もんじゅは、冷却材に水ではなくナトリウムを用いる。ナトリウムは水と反応して激しく燃える。福島のように冷却機能が停止した場合に、外から水をかけ続けて冷やすことはできない。

政府は先月「減原発」の方針を示した。原発を減らしていく以上、核燃料サイクルは、すみやかな幕引きに向かうべき時だ。サイクルにかける費用は、福島対策に回した方がいい。使用済み核燃料は直接処分する。再処理してもしなくても最終処分場の場所探しは困難だが、原発を減らしていけば、たまり続ける使用済み核燃料の増加も抑えられる。

サイクルをやめても国内外で再処理した日本のプルトニウムは推定で40トンを超える。核不拡散の観点から、その処理方策も早急に考えたい。

原発や核燃料サイクルからの脱却を進めていく際に人材が失われることを危惧する声は強い。当面の間、原発を動かし続けつつ、安全で効率的な廃炉を進めるためには、一定の人材を育成・確保しておかなくてはならない。

そのための工夫を考える必要がある。たとえば、福島を原子力安全や廃炉技術、放射線管理や放射性物質の除染などの研究拠点とし、世界から人材を集める。そこで得た知識を国際的に役立てることを考えてはどうだろうか。

今後、世界では原子炉の安全管理や廃炉技術の重要性が増す。日本が今回の経験を生かすことは事故を起こした国の責任でもある。

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