民主、自民、公明の3党が子ども手当の見直しに合意した。
現在は、子ども一人あたり月額1万3千円。これを、子どもの年齢や人数で差をつけて、1万~1万5千円を支給する。
来年度からは「年収960万円程度」を基準に、所得制限を設ける、という内容だ。
民主党が鳴り物入りで掲げたマニフェストの目玉政策の失速に、公約不履行という批判も出るだろう。制度の変更で、窓口業務を担ってきた自治体が混乱するのも避けられまい。
だが、この転換はやむをえない。財政が逼迫(ひっぱく)しているなか、公約自体に無理があった。そのうえ、東日本大震災の復興財源を捻出しなければならなくなっているのだ。
問題は、与野党が大騒ぎをした割に、合意の中身が空疎なことだ。肝心の来年度からの制度設計も先送りしている。所得制限を受ける世帯に、どんな目配りをするのか。手当を減らすのか、税金を控除するのか、その額はいくらなのか。
それが定まらないと、捻出できる財源の規模もわからない。
野党にすれば、「民主党のバラマキ4K」の一つを覆し、旧来の「児童手当」を復活させたと胸を張るのだろうが、どれほどの見直しなのかは、まだあやふやだ。
これは3党の折衝が、相手をおとしめようとする政争であり、メンツの張り合いに過ぎなかったからだ。
いったん辞意表明した首相を退陣に追い込むための手順を踏むという側面もあったろう。
本来もっと論ずべきは、安心して子どもを産み、育てられる環境をどのようにしてつくるかだったはずだ。
日本の少子高齢化は、世界に例を見ない速さで進む。このままでは、お年寄りを支えきれなくなる。なのに日本は他の多くの主要国に比べ、子育てを支援する支出が少なすぎる。この現実をどうするのか。
まず、できるだけほかの政策を見直し財源を確保しよう。将来的な年金の支給開始年齢の引き上げなども対象になりうる。
同時に、限られた財源でも成果が上がるよう知恵を出すことだ。現金給付とサービスをどう組み合わせ充実させるのか。
与野党は、子育てを含む社会保障制度改革の協議のテーブルに、一刻も早くつくべきだ。
この見直しを機に、被災地の子どもにもっと目を向けてほしい。放射能の不安にさらされる子どもの健康、親が亡くなったり失業したりした子の教育など、課題は山積している。
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