政府・日銀が、1ドル=76円台という行き過ぎた円高を阻止するため、円売り・ドル買いの市場介入に踏み切った。
さらに日銀は、国債買い入れなどのための基金を10兆円上積みする、追加的な量的金融緩和策も決めた。
為替介入後、円相場は一時、80円台に急落した。ひとまず円急騰にブレーキがかかり、一定の効果があったと言えよう。
東日本大震災後の3月中旬、戦後最高値の1ドル=76円25銭をつけたことから、日米欧の通貨当局は協調介入を実施し、円高にいったん歯止めをかけた。
しかし、最近になって、円が再び急騰し、最高値を更新しそうな展開となっていた。今回は日本の単独介入にとどまったが、政府・日銀が介入効果を高める金融緩和を組み合わせ、機動的に対応したことを評価したい。
野田財務相は、「(円急騰が)日本経済や金融の安定に悪影響を及ぼしかねない。投機的な動きや無秩序な動きには、断固たる措置をとる」と述べた。
日本経済は、大震災による打撃を何とか乗り切り、成長軌道に戻りつつある大切な局面にある。
ここで過度な円高に歯止めをかけておかないと、自動車や電機など輸出産業の業績悪化を招き、景気も腰折れする懸念が強まる。政府・日銀が決断した背景には、そうした危機感がある。
今後も為替市場の動向を注視し、必要に応じて断続的に介入するなど、円高を阻止する姿勢を明確にしなければならない。
ただし、今回の円高は、米国経済の減速や、財政危機に伴う米国債の格下げ懸念を背景とした「ドル安」の側面が強い。
日本の単独介入だけでは、円高是正の流れを定着させるには限界もあるだろう。
政府・日銀は、欧米の通貨当局と緊密に連携し、協調介入の可能性を探ってほしい。
日本経済への逆風は円高にとどまらない。福島第一原子力発電所の事故に起因する電力不足も重なり、海外に工場を移す「産業空洞化」が加速する恐れがある。
政府は、空洞化防止に向けた総合対策を打ち出すべきだ。
原発の再稼働による電力不足の解消や、国際的にみて高い法人税率の引き下げは急務である。
主要国・地域との自由貿易促進などの通商政策では、韓国などライバルに出遅れている。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加決断も急がねばならない。
この記事へのコメントはありません。