2次補正成立 政治の停滞打破へ動く時だ

毎日新聞 2011年07月26日

2次補正成立 政権移行の作業を急げ

「退陣」への環境整備につながるだろうか。菅直人首相が挙げた「3条件」のひとつで、総額約2兆円の震災、原発事故対策を盛り込んだ今年度2次補正予算が成立した。

残る二つの条件である特例公債法案、再生可能エネルギー固定価格買い取り法案の動向が焦点となるが、成立の展望はなお開けていない。震災の本格復興に求心力のある政権が取り組むためにも速やかな首相交代が必要だ。与野党は合意形成に今こそ力を注ぐべきである。

補正予算の審議は全体的に充実していた。がれき処理など震災復旧につけたはずの予算の執行が遅れている実態など、野党側の追及は政府対応のさまざまな問題を浮き彫りにした。やはり国会での論戦は重要だ。

原発事故の賠償の枠組みを決める法案も与野党協議が進展しており、延長国会は残る2条件が焦点だ。このうち最も難航含みなのが今年度予算の赤字国債発行を可能とする特例公債法案だ。自民党は政権公約で民主党が掲げた諸政策の全面的撤回を成立に協力する条件とし、譲らぬ構えをみせている。

民主党は首相や岡田克也幹事長が政権公約の財源面での甘さを認め、子ども手当見直しに応じるなど大幅譲歩で自公両党の理解を得ようとしている。党内には公約見直しに反発する声も出ているが、復興財源を確保するうえでも見直しはやむを得ない。来る民主党代表選で政権公約を総括し、次期衆院選で国民に説明し審判を仰ぐ手順が必要だ。

一方で自民党もいたずらに合意を拒み、政争に走るような対応を取るべきでない。

党内にはこのところ、強硬策で首相を解散に追い込む意見も強まっている。菅内閣の支持率が落ち込む中、首相退陣よりもこのまま衆院選を戦った方が得策という計算が働いているのかもしれない。

だが衆院選は新首相の下、ほとんどの被災地で選挙の実施が可能となり、各党が政策の一定の対立軸を打ち出せる環境で行うべきだ。

首相に本当に退陣を迫るのであれば「3条件」を速やかに決着させ、続投の大義名分を奪うことが最も効果的なはずだ。仮にそれでも首相が地位に居座るのであれば内閣不信任決議案を再度提出し、退陣を迫ることも決して暴挙とは言えまい。

首相と海江田万里経済産業相のエネルギー政策をめぐる発言の食い違いなど、政権のゆるみは限界を来している。本格復興予算となる3次補正を固める時期も近づいている。

政権の幕引きを真剣に急ぐ時だ。そのためにも次期内閣のあるべき姿について、与野党は責任を持って議論を進めなければならない。

読売新聞 2011年07月26日

2次補正成立 政治の停滞打破へ動く時だ

東日本大震災の追加復旧支援策を盛り込んだ総額2兆円の第2次補正予算が成立した。

菅首相の「退陣3条件」の一つが整ったことになる。政治の停滞の打破に向けて、本格的に動く時だ。

最近の菅政権の混迷は、目を覆うばかりだ。

松本龍・前復興相が暴言で辞任し、首相は唐突な「脱原発」方針で電力不足に拍車をかけた。被災地のがれき除去や仮設住宅の建設は遅れ、首相の居座りで、秋以降の外交日程も決まらない。

本来取り組むべき多くの政策が放置され、行政全体が停滞する危機的状況が続いている。

そうした中、民主党の岡田幹事長が2009年衆院選政権公約(マニフェスト)の財源などの見通しの甘さを認め、謝罪した。

残る退陣条件の一つである、赤字国債の発行を可能にする特例公債法案の成立に向け、野党の協力を求めるためだ。

子ども手当の見直しでは、所得制限の具体案も示した。だが、歳出削減は踏み込みが足りず、赤字国債の発行額を極力抑えたい意図がうかがえない。

民主党は1月の党大会で、破綻したマニフェストを見直す方針を決めたが、作業が始まったのは6月だ。あまりに遅い。

見直しには、鳩山前首相らが反対を唱えている。マニフェストを「国民との契約」などと位置づけるから、守る、守らないという、非生産的な議論になる。

マニフェストは、あくまで作成時点の方針や計画であり、内外の情勢の変化に機敏に対応し、適切かつ速やかに変更することは、政治家の責務でもある。

民主党執行部は、8月上旬にも見直しの結論を出すという。菅首相が一向に動こうとしない中、岡田氏らの責任は重い。

今回の謝罪を、特例公債法案を成立させるための「方便」にしてはならない。党内の反対・慎重論を抑え、子ども手当に限らず、高速道路無料化や農家の戸別所得補償などのバラマキ政策の大幅見直しの具体案を明示すべきだ。

自民、公明など野党も、参院で多数を占めている以上、反対のための反対では困る。子ども手当の修正協議などで、民主党がより踏み込んだ案を示したら、積極的に合意点を探る責任がある。

それが、「ポスト菅」政権に向けての与野党協議を充実したものにするだろう。震災復興を急ぎ、日本の政治を前に進める方向への大局的転換が求められている。

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