朝日新聞 2011年07月22日
電力不足 西日本も、さあ節電だ
政府は関西、北陸、中国、四国、九州の電力5社に対し、20日になって急きょ、この夏の節電を要請した。
東京、東北電力管内のような強制力のある電力使用制限令ではないが、この夏は列島あげて節電に全力をあげなければならない事態になった。
西日本でも電力不足が懸念されるのは、定期検査で停止中の原発の再稼働が見込めないなか、関電の原発と中国電の火力発電所がトラブルで止まり、電力需給の見通しが一気にひっぱくしたからだ。
西日本には震災で壊れた大規模発電所はないし、同じ周波数の地域が広く、電力の融通もしやすい。それでも昨年並みの電力需要があれば、5社合計ではピーク時に電力不足に陥りそうだという。とりわけ、発電量の約5割を原発で賄ってきた関電が深刻だ。
原発の再稼働をあてにしているうちに、政府も電力会社も対策が後手に回ったのは明らかだ。節電体制づくりの準備不足という点では、西日本の方がむしろ厳しい展開と言える。
ただ、今からできることは限られている。当面はありとあらゆる節電でしのぐしかない。
要は、暑さの厳しい時間帯に電力使用が集中しないようにすることだ。そのためには、地域や職場、家庭で相談して、工夫を凝らしていく必要がある。
もともと、西日本は大震災の被災地から遠い。企業の中には東日本の電力不足を見越して、わざわざ西日本へ生産拠点や管理部門を移したところもあるくらいだ。地震の実感がないぶん、住民は「なぜ節電なのか」という思いだろう。
それでも、節電が不可欠な現実と向き合わねばならない。
何より効果的な節電をするには、政府や電力会社が供給能力や需要動向に関する情報をきちんと開示することだ。
とくに最も不足が心配される関西ではいま、政府が「10%以上」、関電が「15%」、自治体でつくる関西広域連合が「5~10%」と、ばらばらな目標値を設定している。
これでは、住民は本当に足りない電力がどのくらいなのか、どれだけ暑さを我慢しなければならないのか、わかりにくい。
ただでさえ、計画性を欠いた政策変更を繰り返す政府と、九電のやらせメールに象徴されるような企業体質を引きずる電力会社に対し、国民の不信感は募っているのだ。
もっと根拠のある数字と、納得できる説明が要る。それが夏を乗り切る最低条件になる。
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毎日新聞 2011年07月23日
関西の節電要請 電力供給の実態示せ
関西で電力不足による節電要請が混乱を招いている。政府は東京電力や東北電力管内のような強制力は伴わない形で、西日本の企業や家庭に節電を求めた。関西電力管内では10%の具体的数値を掲げたが、既に関電が15%、自治体で構成する関西広域連合が5~10%の節電を呼び掛けており、三つの目標値が混在する事態となっている。政府や関電は根拠となる明確なデータを示し、もっと分かりやすく説明すべきだ。
電力不足が拡大したのは、定期検査で停止している原発の再稼働のめどが立たない中で、大飯1号機がトラブルで止まったためだ。高浜4号機と大飯4号機も相次いで定期検査に入り、その結果、福井県にある関電の原発11基のうち7基が停止することになった。
これにより8月の予想最大電力に対する供給力不足は6・2%となる。政府はこれに最低限必要とされる予備率3%を加え、10%の節電目標をはじき出した。
一方、関電は6月に15%の節電を要請したが、計算の根拠にあいまいな点があったことや、自治体や企業などへの説明が不十分だったこともあり反発を招いた。だが、政府が10%の節電を求めた後も、15%は変えていない。
東大阪市などを中心に関西には中小企業が多いが、10%以上の節電を実行すると、生産に大きな影響が出るところも多く、死活問題だとの声もあがっている。
大口利用者である企業の対応も定まらない。関西の鉄道各社は、大幅な節電となると間引き運転の実施も考慮しなければならないが、関電の姿勢がはっきりしないため、方針を決めにくい状態だ。
地元の自治体は、関電や政府への批判を強めている。大阪府の橋下徹知事は、関電の節電要請は「原発を再稼働させるための脅しだ」と反発している。政府の要請にも、自治体との協議がなかったとして不快感を示す。
関西広域連合は関電の要請前から家庭やオフィスに5~10%の節電をするよう提唱しており、各自治体もそれぞれの事情に合わせて計画を立てている。地元や企業との調整なしで、いきなり目標数字を挙げて節電を要請する関電や政府のやり方は稚拙と言わざるを得ない。
原発の再稼働や節電要請を巡っては、政府の場当たり的な対応に国民の不信感が高まっている。関西に限らず、全国的に電力供給の実態はどうなっているのか。需要がピークを迎える8月を前に、政府は企業の自家発電による「埋蔵電力」も含めた現状を明らかにし、利用者の理解を得る努力をしなければならない。
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