ギリシャ追加支援 これから試練の本番だ

朝日新聞 2011年07月23日

ギリシャ支援 ユーロ圏全体で守れ

欧州連合(EU)を揺るがす財政危機の最大の地震源であるギリシャが再び窮地に陥り、ユーロ圏17カ国の首脳が協議し、1590億ユーロ(約18兆円)規模の2次支援策をまとめた。

昨年5月の1次支援が行き詰まり、善後策が必要になった。ギリシャは財政引き締めで経済が収縮。歳入減や利払いで、政府の資金繰りの展望が再び閉ざされたのだ。

2次支援のポイントは、民間銀行にも協力を求めた点だ。最大の支援負担国のドイツが「民間銀行にも応分の負担を求めないと国民が納得しない」と譲らず、盛り込まれた。

ギリシャ国債を持つ銀行には新たに発行される長期の同国債への借り換えに「自主的に」応じてもらう玉虫色の措置だ。しかし、これが一種の債務不履行(デフォルト)に当たる可能性がある、と米国の格付け会社が警告して話がもめた。

デフォルトした国債は、欧州中央銀行(ECB)が融資する際の担保として認めないため、多くの銀行が資金繰りに窮する。同時に、すでに支援を受けているポルトガル、アイルランドの国債の信用も揺れる。スペインやイタリアにも財政不安が飛び火しかねない。そんな「7月危機」への懸念が募った。

ユーロ圏首脳会議は結局、格付け会社の警告を退け、当初の方針を貫いた。格付け会社がこれを正式にデフォルトと見なすかどうかで当面の影響は分かれる。たとえデフォルト扱いになっても、欧州中銀はギリシャ国債を担保として認めるべきだ。EUとも連携して、金融危機は断じて防がねばならない。

2次支援は時間稼ぎであり、問題の先送りに過ぎない。本来はギリシャの財政問題を金融市場の荒波から切り離し、ユーロ圏全体の信用で守りながら更生を図るべきだ。その中でギリシャの自助努力で返済できる範囲に債務を減額する。損失は加盟国が実力に応じて分担するほかないのではないか。

一連の支援論議の中で、その方向への芽も育ちつつある。欧州安定化基金が問題国の既発の国債を買い入れることができるようにした。基金は資金調達のため、主要国の信用をテコに債券を発行している。これは将来の欧州共同債につながる形と見ることもできる。基金債で問題国の国債を置き換え、問題国の財政再建はユーロ圏の政府間の監視の下で進めればいい。

このような支援の延長線上に、通貨はひとつだが財政はバラバラというユーロの根本的な矛盾を解く方策もある。

毎日新聞 2011年07月23日

ギリシャ追加支援 これから試練の本番だ

がけっぷちまで追い詰められて、欧州が再びギリシャの救済策をまとめた。これまでの支援は、市場で資金を借りられなくなったギリシャ政府に欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)がつなぎの融資を行うというものだったが、今回初めてギリシャの借金そのものを軽くする方策に踏み込んだ。

資金繰り支援の追加だけでは持たないという現実に対処しようとした点は前進だ。発表直後の市場の反応も悪くなかった。円の急騰など欧州以外に動揺が広がり、制御不能の混乱へと発展する恐れもあっただけに、ひとまず安心感が広がった形だ。

しかし、これでユーロ圏の債務危機が過ぎ去ったと信じる人は恐らくいないだろう。救済策がどのように機能するのか、本当に信用回復につながるのか、疑問は数多く残る。

今回の追加支援で最も注目されたのは、ギリシャ国債を保有する民間金融機関にまで負担が及ぶかどうかだった。四つの“自主的な”協力案が盛り込まれたが、償還期間が長い国債との交換や元本を大きく下回る値段での売却など、いずれも何らかの負担を求めている。

貸手に不利な形で返済計画が事実上見直されることになり、格付け会社が「債務不履行(デフォルト)」との判定を下した。今後、どういう影響が及ぶのか、警戒は崩せない。

欧州の首脳らは、今回のような民間の負担はギリシャ向けに限定されると強調した。同様の損失を免れようと金融機関が他のユーロ加盟国の国債を売り急ぎ、債務危機が一気に連鎖する可能性があるからだ。こうした連鎖の回避が、ギリシャ支援で重要なポイントとなっていた。

問題は「ギリシャは例外」を市場がどこまで信用するかだ。欧州はすでに1年半以上、債務危機への対応に追われているが、後手後手の一時しのぎを繰り返した結果、信用をすっかり落としてしまった。

ギリシャが再度、追加支援を必要とする事態は来ないのか、他のユーロ加盟国の国債がデフォルトとなることはないのか、今後市場が揺さぶりをかけてくる可能性は十分ある。

その時試されるのが、今回機能の拡充が決まった欧州金融安定化基金だ。サルコジ仏大統領は、安定化基金が欧州版IMFともいえる欧州通貨基金(EMF)の出発点になると訴えた。ユーロの信用の後ろ盾として機能するよう、早期に詳細を詰めてもらいたい。ユーロ加盟国の納税者の理解も不可欠となる。

ユーロの安定は欧州だけでなく、世界全体の関心事だ。一つ対応を間違えば、世界経済を混乱の渦に巻き込みかねないということを加盟国の指導者は肝に銘じてほしい。

読売新聞 2011年07月23日

ギリシャ支援 独仏主導で危機拡大を防げ

財政危機が再燃したギリシャに対する欧州連合(EU)などの第2次支援策がまとまった。

これでひとまず信用不安は一服しそうだが、前途は多難である。独仏など主要国が主導し、欧州の財政不安を早急に払拭させるべきだ。

通貨ユーロを導入しているユーロ圏17か国の首脳会議は21日、難航していたギリシャ支援策でようやく合意した。

EUと国際通貨基金(IMF)が、1090億ユーロ(約12兆円)の金融支援に踏み切る。

焦点だった域内の民間金融機関の関与を巡っても、保有するギリシャ国債を不利な条件で借り換えるなどの負担に応じ、資金繰りを支えることで決着した。

支援総額は1590億ユーロ(約18兆円)に達し、EUなどが昨春決めた第1次支援策の1100億ユーロ(約12兆円)を大きく上回る。

ギリシャ危機は、わずか1年で再燃した。国債の新規発行による資金調達が難しくなっている。債務問題を抱えるイタリア、スペインなどにも信用不安が拡大し、ユーロの下落傾向が続く。

独仏などが、民間金融機関にも負担を求めて結束し、大型の追加支援策をまとめたのは、妥当な判断と言えよう。

しかし、課題はなお山積しており、危機をいつ収束できるか、先行きを楽観できない。

何より、歳出カットや公務員削減など、ギリシャの自助努力が不可欠だ。今度こそ、巨額支援を生かしながら、財政再建に努めねばならない。

当面の懸念材料は、格付け会社がギリシャ国債の一部を債務不履行(デフォルト)扱いにすると発表したことの影響だ。

1999年にユーロが発足して以来、ユーロ導入国のデフォルト扱いは初めてだ。今後、ユーロが急落したり、欧州各国の国債利回りが軒並み、上昇したりする恐れがある。

市場の混乱を防ぎ、ユーロへの信認を維持するには、今回のギリシャ支援策を着実に実施することが重要だ。それは世界経済の安定にも寄与する。

欧州当局は15日、域内主要銀行に対する特別検査結果を発表し、8行が資本不足と判定した。

だが、この検査は、ギリシャに対する金融機関の負担を反映していない。資本不足行はさらに増えるのではないか。

欧州当局は、こうした金融機関の資本増強を促し、金融市場の安定を図る必要がある。

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