南スーダン独立 欠かせない南北協調と支援

毎日新聞 2011年07月13日

南スーダン独立 PKOに日本も貢献を

南北内戦を経てスーダンから分離・独立した南スーダンを、日本など各国が国家承認した。アフリカ大陸で54番目に独立し、国連に193番目に加盟する国となる。この新国家の国づくりを軌道に乗せるには、国際社会の協力が不可欠である。

松本剛明外相は「可能な限りの支援を行う」と表明し、国連安保理は8000人規模の平和維持活動(PKO)部隊の派遣を決めた。日本政府は、国連が要請する陸上自衛隊の派遣に積極的に応えるべきだ。

分離前の旧スーダンは、アラブ系でイスラム教徒の住民が多数を占める北部が政治・経済の中枢を握り、黒人系でキリスト教徒や伝統宗教の信者が多い南部との対立が繰り返されてきた。83年から20年以上続いた第2次南北内戦では約200万人が死亡した。05年に国連の勧告を受けて包括和平で合意、今年1月の住民投票で分離・独立が決まった。

南スーダンは、有数の産油国だった旧スーダンの油田の8割が集中する資源大国である。しかし、長期の内戦でインフラは未整備のままだ。貧困層が多く、国家建設を担う人材も不足している。多様な部族間の対立もある。国連は、PKO部隊による停戦監視のほか、警察など治安組織の改革、道路や上水道、病院などのインフラ整備を計画している。

政府は陸自派遣の検討を開始したが、カンボジアや東ティモール、イラクやハイチなどの国づくり、復興活動で経験を積んだ陸自が活躍できる場面は多いに違いない。政府開発援助(ODA)の投入も必要である。人的・資金両面の貢献は、東日本大震災で温かい手を差し伸べてくれた国際社会への恩返しにもなる。

一方、日本を含む各国は、南スーダンの国づくりの障害となりかねない問題にも目を光らせる必要がある。南には石油精製施設がなく、パイプラインが油田と北の積み出し港を結ぶが、南スーダンがスーダンに支払うパイプライン使用料や両国の原油収入配分問題は未決着だ。南北境界に位置する油田地帯アビエイは南北双方が領有権を主張し、帰属は決まっていない。5月には同地区で戦闘があったばかりだ。南北の和平継続は、南スーダンの安定の前提である。

また、石油や鉱物資源の権益をめぐる大国の争奪戦が本格化する可能性がある。そもそも南スーダンの独立が実現した背景には、長期にわたる南北の対立という事情に加えて、石油などの資源獲得を目指す大国の国益優先の思惑があった。

豊富な資源は、南スーダンの国づくりの基盤である。その富をめぐる争いが大国間で激化すれば、国家建設の足を引っ張りかねない。特に、米中両国に自制を求めたい。

読売新聞 2011年07月10日

南スーダン独立 欠かせない南北協調と支援

不安な船出である。自力航行が出来るまで国際社会の支援が必要だ。

アフリカ最大の国土を持つスーダンが9日、南北に分かれ、アフリカ54番目の独立国、南スーダン共和国が誕生した。

スーダン国民は過去半世紀間、戦禍と飢えに苦しんできた。政権を独占する北部のアラブ人イスラム教徒と、差別されてきた南部の黒人キリスト教徒らが戦闘を繰り返してきたからだ。

1983年からの第2次内戦では200万人が死亡、400万人が故郷を追われたとされる。

苦難の歴史を考えれば、南部住民には待望の独立ではあろう。

独立への道を開いたのは、2005年に調印された包括和平合意だった。内戦の当事者同士で6年間の共同統治を試した後、共存か分離かを決めるというもので、南部は今年1月の住民投票で、約99%が分離・独立を選んだ。

だが、南北の国境に未画定部分が残っているのは、懸念材料だ。スーダンは産油国であり、主な油田が南北にまたがるため、その帰属が決まっていない。

南スーダンは、油田はあっても、原油の輸送、精製、積み出しを北に頼らざるをえない。過去6年間は、南の油田から上がる収入を南北で折半する取り決めだった。だが、独立後の配分については、交渉が決裂したままだ。

北のバシル政権は和平合意に反して、国境付近の油田地帯に軍を進駐させている。約束通り、国連平和維持活動(PKO)部隊の展開に伴って撤収し、平和的に国境を画定すべきである。

南北スーダンは、互いに新たな協調関係を築き、自立していく必要がある。国際社会は、そのための支援を惜しんではなるまい。

とりわけ中国には南北関係の安定化に努める責任がある。石油資源を狙い、非人道的政策をとるバシル政権を支えてきたからだ。

南スーダンの独立にあたり、国連安全保障理事会は、この国の和平の維持と開発支援のため、新たに8000人規模のPKO展開を決めた。日本は、陸上自衛隊施設部隊の派遣を打診されている。

南スーダンは上水道や道路など生活基盤が未整備のうえ、識字率が低く、人材も不足している。

日本はこれまでも、国際協力機構(JICA)などがスーダン南部で、河川港の整備や農業支援にあたってきた。そうした協力の継続に加え、道路建設など国造りの一端も担う新規PKOへの参加も真剣に検討すべきだろう。

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