10年近く続いた長い戦争も、ようやく終わりへの道筋が見え始めたということだろう。
オバマ米大統領が、アフガニスタン駐留米軍の撤収計画を発表した。年内に1万人、来年夏までにさらに2万3000人が戦地を離れる。
残る米軍6万8000人も、アフガン治安部隊に権限を移譲するのに伴って、順次、帰国させていく方針という。治安支援に部隊を派遣している英独仏など他の国々も本格的に引き揚げる予定だ。
撤収は、何よりアフガニスタンにおける治安確保を大前提としなければならない。テロの温床となる破綻国家に逆戻りすることがないよう、現地の状況を見極めながら、慎重に進めてもらいたい。
オバマ大統領は、ブッシュ前政権が始めた二つの戦争のうち、イラク戦争を「間違った戦争」と批判し、米軍の撤収を実行した。アフガニスタンでの対テロ戦争は「必要で不可欠」として、逆に米軍兵力の増強で対処してきた。
撤収開始は、この増派が一定の成果をあげたことによる。
確かに旧支配勢力タリバンの攻勢は弱まった。アフガン治安部隊も30万人近くまで増え、治安権限の移譲も一部で始まっている。
10年前の米同時テロの首謀者で国際テロ組織アル・カーイダの指導者ウサマ・ビンラーディンを、潜伏先のパキスタンで米特殊部隊が殺害したことも、撤収への大きな要因となった。
だが、今回の撤収計画には不安も残る。
米国内には、長引く戦争に厭戦気分が募っている。かさむ一方の戦費、景気の低迷、高止まりする失業率への不満や不安。大統領自身、今後は、他国よりも米国の再建に焦点をあてる、と内向き傾向を強めている。
自らの再選がかかる来年秋の大統領選に向け、財政悪化を回避したいという思惑もあるだろう。
米国が兵力縮小を急ぐことによって、再びタリバンが勢いづくようなことにならないか。
タリバンを圧倒する軍事力を維持しつつ、治安確立へ努力を倍加すべきだろう。アフガン政府とその治安部隊を強化し、隣接するパキスタンとも協力して対テロ掃討を徹底する必要がある。
日本は民主党政権に交代後、人的貢献の代わりに、アフガニスタンに巨額拠出することで、地域安定化へ側面支援をしてきた。
だが、その効果は大して上がっていない。今後の実効ある使い道を真剣に探るべきである。
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