また、東京にオリンピックを招致したい。石原慎太郎都知事がきのう、そう表明した。
落選した2016年大会につづく挑戦で、20年の開催をめざす。「大震災からの復興」をキーワードに、9年後に立ち直った日本を世界に見せようと訴えていくという。
日本オリンピック委員会(JOC)は、すでに会場計画がある東京の再挑戦を歓迎し、一部の競技を被災した東北地方で実施するプランも温めている。
「平和」を旗印に意欲をみせていた広島市は市長交代で撤退しており、この夏までの国内選考は、東京が正式に名乗りを上げればすんなり決まりそうだ。
だが、13年9月の開催地決定をめざして走り出す前に、確認しておくべきことがある。
まずは、国民、とりわけ都民は開催を望んでいるのか、だ。
招致活動だけで100億円規模の巨費が飛び交う。それなのに前回はあまり盛り上がらず、国民も都民も支持率は50%台にとどまった。最終選考に残った4都市で最も低かった。あのときと、世論に変化があるようには見えない。
東京都には招致のために積んできた基金が4千億円ある。これだけの資金を未来に生かす方法はいくらもある。それを五輪につぎ込んでいくには、世論の支持を確かめてほしい。
もうひとつは、東日本大震災後のこの国のあり方を、どう考えるのかである。
石原知事は「東京が日本のダイナモ(発電機)になる」と主張する。たしかに、1964年の東京五輪のころ、日本は首都を中心に経済的な発展の上り坂を駆け上がっていた。
だが、五輪に合わせて再び都心の基盤を整えれば、いま以上に東京一極集中をすすめかねない。首都圏を大地震が襲うことも想定されるなか、いま求められているのは、もっと多極分散型の国づくりではないか。
ただ、招致の客観情勢は、南米初のリオデジャネイロ(ブラジル)に屈した前回よりは期待が持てるかもしれない。アフリカ初の看板で有力視された南アフリカが先ごろ断念したため、いまのところのライバルは前回の東京大会の1回前の開催地だったローマくらいなのだ。
ひとつの山場は7月に来る。18年冬季五輪の開催地が決まるのだ。3回連続で挑む平昌(ピョン・チャン)(韓国)が勝つと、18、20年と冬夏連続でアジアで開くことへの抵抗感が国際オリンピック委員会(IOC)に生まれかねない。
招致に乗り出すかどうか。まずは都議会の議論に注目する。
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