大阪教育大付属池田小学校の児童殺傷事件から8日で10年がたった。
包丁を持った男が学校に押し入り、当時1、2年生の児童8人を殺害、教師ら15人に重軽傷を負わせた衝撃的な事件だった。
襲われた教室の児童たちは高校生になった。いまだに心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ生徒もいる。心の傷を癒やす、息の長いケアが必要だ。
この事件が社会に突きつけたのは、学校の安全をいかにして守るか、という問いである。
国が導入した施策の一つに、防犯監視システムの整備がある。防犯カメラやセンサー、インターホンなどのいずれかを配置している学校は3年前の調査で、全国の7割近くに上る。
ただし、機器を取り付ければ不審者の侵入を防げるというものではあるまい。毎年、学校施設への侵入事件は1500件を超す。
池田小事件の2年後には、京都府宇治市の小学校に包丁を持った男が侵入し、児童2人にけがをさせた。防犯カメラもセンサーもあったが、カメラは常時監視しているわけではなく、センサーも「うるさいから」と、切っていた。
教職員らの監視の緩みが、防犯上の“死角”を作る。大切なのは、子どもを守るという日頃の意識や万一への備えであろう。
事件当時、池田小にいたある教師は、転任先で安全性を高めるための提案をし、受け入れられた。サンダル履きの教師を、不審者に迅速な対応ができないとして、運動靴に履き替えさせた。
教室が1階にあると、不審者に侵入されやすいため、上の階に移動させたという。
通学路の安全確保も欠かせない。事件後、人通りのない危険な場所を記した安全マップ作りや、住民たちで登下校時の子どもを見守る地域が増えた。
その地図や取り組みも、現状に合わなくなってはいないか。常に再点検が求められよう。
池田小は昨年、世界保健機関(WHO)から、「インターナショナル・セーフ・スクール」に認証された。国際的に「安全な学校」とのお墨付きを得た。
特に評価されたのは、全学年を対象とした「安全科」の授業だ。不審者への対応訓練のほか、水難事故を想定し、着衣のままプールに入る。火災訓練では発煙装置を使い、床をはって避難する。
犯罪や自然災害から身を守るすべを、子ども自身に学ばせることも重要である。
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