復興基本法案 政官一体の体制を再構築せよ

毎日新聞 2011年06月11日

復興庁 置くのなら現地重視で

やっと枠組み合意である。東日本大震災の復興体制を定める復興基本法案が修正され衆院を通過、今国会成立の道筋がついた。復興行政の司令塔として復興庁を早期に設置することで民主、自民、公明3党が歩み寄った。

震災からおよそ3カ月を経て合意に至ったが、新組織を置いた場合、各府省と業務が重複し「屋上屋」を架す懸念がつきまとう。権限の一元化に加え、東北地方への本庁設置も含めた現地重視の制度設計に配慮しなければならない。

それにしても、体制づくりにあまりに時間を要した。政府が提出した法案は全閣僚で構成する「復興対策本部」を置くもので、新たな行政組織については付則で1年以内の法整備を盛り込むにとどめていた。これに対し自民、公明両党は新組織による復興行政の一元化を明確にするよう求めていた。

結局、民主が大幅に譲歩し、法案の本則で復興庁の早期設置を定め、企画・立案のみならず独自の予算や人員による施策実施の権限も持たせることにした。新庁設置には新たな立法措置が必要だ。政府は始動のメドを来年4月としている模様だが、遅すぎる。年内発足を急ぐべきだ。

この件に限れば2大政党が復興の枠組みで合意し、責任を共有したことは評価できる。だが、復興庁が実効性ある組織となれるかどうかは不安がある。

まず国土交通省、農水省など既存府省との二重行政の懸念だ。最近設置された消費者庁にしても、権限が不十分で各省ににらみを利かせにくい弱さがある。ひとたび設置を決めたからには復興特区構想の推進などに備え、府省の壁を越える強い権限を持たせるべきだ。さもないと中途半端なお荷物になりかねない。

東京と現地で機能をどう振り分けるかも課題だ。復興担当相が置かれた場合の補佐など中央の組織・機能は極力抑え、できるだけ多くの役割を被災地に近い現地組織に委ね、地元の民間スタッフや自治体職員を活用してはどうか。

たとえば復興庁本部を仙台市に据えれば、復興に長期的に取り組む本気度が被災地にも伝わる。出遅れを挽回するためにも大胆な発想が必要だ。

一方で復興に必要な資金の調達について、修正案は他の公債と区別した「復興債」を発行することも定めた。償還財源を明確にするためにも理解できる手法だ。

本来であれば、復興税の是非やあり方を含め具体的な議論を与野党が進めていなくてはならない時期である。どんな器を作っても肝心なのは復興行政の中身であり、それを進める政治の安定である。

読売新聞 2011年06月11日

復興基本法案 政官一体の体制を再構築せよ

震災から3か月も経過しており、あまりに遅いと言わざるを得ない。

東日本大震災の復興の基本理念や体制を定める復興基本法案が、民主、自民、公明の3党による共同修正を経て、ようやく衆院を通過した。来週中にも成立する運びだ。

難航していた法案修正協議が決着したのは、政府・民主党が自公両党の主張をほぼ丸のみしたからである。ねじれ国会を打開するため、与野党が法案成立で足並みをそろえた点は評価できる。

民主党はさらに、野党に譲歩し、協力を求めることが必要だ。

基本法案の柱は、首相と全閣僚による「復興対策本部」を設置し、各府省を通じて復興事業を実施する体制を築くことだ。

来年、関連法案が成立すれば、対策本部に代わって、「復興庁」が新設され、企画立案と実施の両方を担う。府省との「二重行政」にならないよう、権限を明確化し、効率的な組織にすべきだ。

官僚の知恵や経験をどう生かすかという視点も重要だ。

菅首相は、これまでの震災対応で、次々と会議を設け、指揮命令系統の混乱を招いた。被災自治体の支援も不十分で、がれきの除去は著しく遅れ、仮設住宅の建設も軌道に乗っていない。

基本法案が成立した段階で任命される「復興相」の下、政官一体で、復旧・復興に取り組めるよう、態勢を立て直す必要がある。

復興財源について、基本法案が、復興債の発行と、その償還の道筋を明らかにすることを明記したのは妥当である。

しかし、復興に必要な予算は巨額に上ると予想されている。与野党は、国民に広く薄く負担を求める消費税など、財源措置を検討しなければならない。

法案は、特定地域の規制緩和や税制優遇などを図る「復興特区制度」の創設も求めている。大胆な発想で復興を後押しすべきだ。

菅首相は10日の参院予算委員会で、8月中旬以降も続投したいとの意向を示唆した。だが、自民党の谷垣総裁は、首相の退陣が「協力の前提だ」としている。

一度退陣を口にした首相が居座り続ければ、復興ばかりではなく、国政全体が停滞する。基本法案成立を機に退陣すべきだろう。

民主党内では「ポスト菅」の駆け引きが始まった。野党や官僚組織から信頼される人材こそが、次のリーダーにふさわしい。

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