日本相撲協会は、7月10日が初日の名古屋場所を予定通り開催することを決めた。
八百長問題で春場所と夏場所は中止に追い込まれた。1月の初場所以来の本場所開催である。待ちわびたファンの期待を裏切らない充実した土俵を見せてほしい。
相撲協会の放駒理事長は、八百長の全容解明、関与した力士の処分、再発防止の徹底を「3点セット」として本場所再開の条件に挙げてきた。
弁護士らによる特別調査委員会が、八百長を認めた力士や親方の証言を基に、計25人の関与を認定した。相撲協会はこの25人に引退勧告などの処分を下した。
夏場所に代わり、興行色を排して無料公開した5月の技量審査場所では、再発防止に取り組んだ。力士の不審な動きをチェックするため、支度部屋に監視役の親方を配置した。力士が国技館に携帯電話を持ち込むことも禁じた。
技量審査場所では、八百長が疑われる取組は一番もなかったという。相撲協会の取り組みが奏功したとすれば、今後も継続させていくべきだ。
相撲協会を監督する文部科学省は本場所開催に理解を示した。NHKも中継の再開を決めた。
名古屋場所の開催決定は、大方のファンに受け入れられるのではないだろうか。
ただ、これでウミを出し切ったと見るのは早計だろう。
「処分された力士が考案して始めたものではない」。特別調査委の最終報告書は、過去にも八百長が存在していた可能性をこう指摘している。だが、それを特定する証拠の発見にまでは至らなかった、ということだ。
幾度となく八百長疑惑が取りざたされながら、有効な防止策を講じなかったとして、「歴代理事らの責任は重い」とも断じた。
相撲協会はこうした批判を重く受け止め、再発防止に不断の努力を重ねていかねばならない。
八百長問題以外でも、旧弊を一掃する角界全体の改革が、今後の大きな課題である。
特に問題視されているのは、親方として協会に残るために必要な年寄名跡(親方株)の存在だ。高額で売買される実態が、あまりに不透明だからだ。
相撲協会は、年寄名跡のあり方などについて、今秋ごろに改善策をまとめるという。
どこまで大なたを振るうのか、大相撲再生を目指す協会の覚悟が問われている。
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