福島県内の学校に子供を通わせる保護者たちの間で、原発事故により漏出した放射性物質に対する不安が消えない。
校庭の放射線量が国の示した基準を下回っていても、運動会などの屋外活動を自粛する学校は多い。今夏、学校のプール使用を中止するところもある。
放射線量を低減させるあらゆる手立てを講じ、学校の安全・安心を回復しなければならない。
文部科学省は先月中旬、1時間当たりの放射線量が3・8マイクロ・シーベルト以上あった場合、校庭の利用を制限するという基準を公表した。子供の年間の被曝限度を20ミリ・シーベルトと設定し、逆算したものだ。
「年間20ミリ・シーベルト」は、国際放射線防護委員会が示した原発事故収束時の一般人の被曝限度(年間1ミリ・シーベルト~20ミリ・シーベルト)を参考にしている。通常時の原発作業員の年間被曝量の目安でもある。
だが、子供は放射線への感受性が大人よりも高いとして、国の基準に不安を抱く学校関係者や保護者たちも少なくない。
放射線の専門家である内閣官房参与が、「年間20ミリ・シーベルト」の子供への適用は許し難いとして抗議の辞任をしたことも、不安を拭えぬ一因となっているようだ。
基準を決める際、政府内で安全性について、どのような議論があったのか、文科省は国民が納得できるよう説明を尽くすべきだ。その上で、子供の被曝量を確実に低減させる対策を実行していくことが大切である。
当面の措置として注目されているのが、校庭の表土の除去だ。文科省によると、表土を削って下層の土と入れ替えたり、穴にまとめて埋めたりすると、放射線量が低減する効果が確認された。
福島市など6市村が、計200以上の校庭の表土除去を実施するという。国が費用支援するなどして、自治体が円滑に作業に取りかかれるようにすべきだ。
放射線量を定期的に計測する学校の数を増やし、データを保護者に伝えることも不安の解消につながるだろう。児童・生徒の健康診断の際には、放射線の影響の継続的なチェックが欠かせない。
子供たちが放射性物質にさらされる可能性があるのは、学校にいる間だけではない。
帰宅後の屋外活動を控えれば、放射線の影響は抑えられるが、家に閉じこもってばかりではかえってストレスがたまるだろう。
専門家から意見を募り、家庭や地域での過ごし方についての指針作りを進めたい。
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