領土問題や歴史認識をめぐって、きしみがちな関係も、東日本大震災で改めて気づかされた「隣国の絆」を土台にすれば、豊かな協力の実りにつながる。
こんな思いを、東京で開かれた日中韓サミットで強くした。
4回目の今回は、日本の復興を支援し、防災や原子力安全の分野で協力を強めることをうたう首脳宣言を発表した。
中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領は会議に先立ち、菅直人首相とともに福島市の避難所で被災者を見舞った。風評被害に悩む福島県産の農産物を笑顔で頬張っても見せた。
原発事故はいまだ収束せず、余震が続く中での訪問である。日本の安全性を世界に訴えたい首相の強い働きかけがあったにせよ、両首脳とも危機に立つ日本との関係を重視した判断だったに違いない。
両国は震災の発生直後から、日本に救援チームを送り、毛布や食料、ガソリンなどの物資を提供した。支援の輪は市民レベルにも広がり、募金活動やチャリティーコンサートなどが各地で催され、日本の人々を励ましてくれた。
日本は戦後、両国に対し、経済支援や災害時の救援活動を重ねてきた。今度は「日本が助けられる」番だった。こうした経験を通じて、3国は隣国として「お互いさまの関係」を一歩深化させたといえる。
新たな協力分野として、原子力の安全対策はとくに重要だ。いま韓国は21基、中国は13基の原発を運転している。両国ともさらに、電力に占める原発の比率を高めていく計画だ。
原発事故による放射能汚染の被害は、1国だけにとどまらない。一衣帯水の隣国同士であれば、なおさらである。
福島の事故の教訓をしっかりと共有し、それぞれが安全対策に万全を期すことが肝心だ。同時に、緊急時の相互通報の仕組みも整えておく必要がある。
広大な国土を持つ中国には、太陽光や風力発電の巨大な潜在力がある。今後は日本が韓国とともに、中国での自然エネルギー開発を進める技術支援をする道もあろう。
菅政権の成長戦略の柱だった外国人観光客の誘致や農産物の輸出は、原発事故で強い逆風にさらされている。
温首相が今回、日本からの食品輸入規制の一部緩和や日本への観光ミッション派遣を発表したとはいえ、前途は険しい。
日本の復興にとって、成長するアジアの需要を取り込むことは不可欠だ。日中韓の協力関係をそのテコにしよう。
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