鳩山外交の本質はやはり「脱米入亜」だと受け取られないか。
北京で行われた日中韓首脳会談で、鳩山首相は「今までややもすると米国に依存し過ぎていた」と述べた上で、「日米同盟は重要だと考えながら、アジアをもっと重視する政策を作り上げたい」と表明した。
首相の意図は、自民党政権下の外交を「米国依存」と印象づけ、政権交代による外交姿勢の変化をアピールしよう、ということなのだろう。
首相は、先の訪米の際は日米同盟が基軸だと強調していた。
だが、北京での発言は「日米同盟は重要だと考えながら」と前提をつけてはいても、首相の目指す「東アジア共同体」構想は、外交の重心を米国からアジアに移すもの、と解釈されかねない。
日本外交の基本はあくまでも日米同盟基軸である。誤解を招かないよう、首相には繰り返し強調してもらいたい。
東アジア共同体構想について、首相は首脳会談で、日中韓3国が核となって推進することを呼びかけた。具体的には経済連携の強化や青少年交流、大学間交流の促進を提案した。
しかし、経済連携ひとつ取ってみても、日本の経済連携協定(EPA)交渉は停滞気味だ。
特に韓国とは交渉が中断してから5年近くが経過している。農産物自由化への日本の消極姿勢が一因と言われている。
対韓EPA交渉は、東アジアとの経済連携を進めるうえでの試金石である。首相は、交渉再開に向けた環境整備を外務、農水両省などに急がせるべきだ。
北朝鮮の核問題は、6か国協議の早期再開に向けて関係国で共同して取り組むことを確認した。
国連安全保障理事会の制裁決議による「圧力」を維持しながら、6か国協議による「対話」を通じて、北朝鮮を核放棄のプロセスに引き込むことが大切だ。
日本は、制裁決議の実効性を保つため、北朝鮮貨物検査法案を早期に成立させる必要がある。だが、政府内では、臨時国会に提出する法案を絞り込むため、貨物検査法案の提出を来年の通常国会に先送りする声が強まっている。
制裁決議の提案国である日本がそんな優柔不断な態度では、中国や韓国に対して、厳格な決議の履行を迫れるはずはなかろう。
首相は、貨物検査法案を臨時国会で成立させるよう、指導力を発揮すべきである。
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