チェルノブイリ 25年の教訓を生かせ

朝日新聞 2011年04月24日

チェルノブイリ 福島事故で教訓新たに

チェルノブイリ原発事故の発生から26日で25年になる。広大な放射性物質の汚染地では苦難が続いている。福島第一原発でも重大事故が繰り返された今こそ、旧ソ連で起きた悲劇の教訓をしっかり生かしたい。

事故の被害はなお甚大だ。地元ウクライナでは、原発から半径30キロが居住禁止のままだ。

時間をおいてがんなどが発症する放射線被害の特徴から、事故が原因の死者を国際原子力機関(IAEA)は、今後の数も含めて4千人と推定する。だが専門家の間には、汚染地の広大さから数十万人の死者が出るとの見方もあるほどだ。

住民の移住や健康対策、経済への打撃などで、事故発生から30年間に受ける被害総額をウクライナは約15兆円、放射性降下物が大量に落ちた隣国のベラルーシは約19兆円と見積もっている。ベラルーシでは、国内総生産の実に5倍近い額だ。

事故炉に残る核燃料などを封じ込めてきたコンクリート製の「石棺」改築などにも、国際社会は2200億円を負担する。

日本では政府や産業界が「事故はソ連の炉だから」と違いを強調し、原発建設を積極的に推進してきた。今からでもチェルノブイリ事故の貴重な経験を学び取り、福島の事故対応にも反映させていくべきだ。

この節目にウクライナでは先日、原発の安全性をめぐる首脳級の国際会議が開かれた。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は福島の事故も受けて、原子力安全基準の徹底見直し、地震、津波等の自然災害やテロに対する核施設の保安強化などを訴えた。

原発を当面使い続けるうえで当然すぎる指摘だ。しかし、原発をめぐる世界の状況は四半世紀で大きく変化している。

チェルノブイリ事故では、共産党支配下での秘密主義や非効率な管理体制が重大な背景となった。いま原発は、共産党支配を維持する中国やベトナム、多くで強権的な長期支配の続く中東諸国に広がりつつある。こうした地域での原発の安全確保には、透明性や説明責任を担保する体制の確立が不可欠だ。

原発に対するサイバー攻撃の問題もある。核開発疑惑が指摘されるイランで、核関連施設に制御装置を混乱させる攻撃を受けた疑いが出たことで、脅威は現実化した。福島の事故の後で米政府などは、原発をはじめ産業・軍事面の重要施設が抱えるサイバー攻撃に対する脆弱(ぜいじゃく)性を警告し始めている。

国際社会は原発をめぐるこうした新たな事態にも、早急に取り組んでいく必要がある。

毎日新聞 2011年04月23日

チェルノブイリ 25年の教訓を生かせ

福島第1原発の事故が収束しない中で、1986年4月26日に旧ソ連(現ウクライナ)チェルノブイリで起きた世界最大の原発事故から間もなく25年を迎える。今も放射能汚染で周囲30キロは居住禁止区域のまま。被ばくが原因とみられる子供の甲状腺がんなど、周辺住民の健康被害も続いている。日本も過去の悲劇から目をそむけず、謙虚に教訓を学ぶ姿勢が求められる。

無論二つの事故を単純に比較することはできない。チェルノブイリでは原子炉自体の爆発と火災で大量の放射性物質が大気中にまき散らされた。福島では原子炉を覆う格納容器から放射性物質が漏れたが、原子炉が破壊されたわけではない。大気中の汚染レベルも10分の1以下とされる。旧ソ連政権は原発職員ら31人の死者を出して約10日で原子炉を封じ込めたが、日本では事故処理の手法も安全への考え方も違う。一方、原子炉1基の事故だったチェルノブイリと違って福島では4基でトラブルが起き、海洋汚染も加わった。

原発事故の放射能汚染は同心円状に広がるのではなく風向きなど気象条件にも左右される。チェルノブイリでは原発から北東に300キロ離れた地点まで高レベルの汚染が広がっていたことが判明している。日本も今後、原発周辺のさらにきめ細かい汚染調査に取り組まねばならない。

チェルノブイリ周辺では今も住民の健康被害が報告されているが、ソ連末期の社会混乱など精神的ストレスの影響も指摘され、被ばくとの因果関係は証明できないと切り捨てられる例が多い。長期被ばくがもたらすがんによる死者数も、推計した国際機関によって4000人から1万6000人まで幅がある。低線量被ばくの影響評価が異なるためだ。福島原発の放射性物質漏れも「ただちに健康への影響はない」とされるが、住民への長期にわたる健診と追跡調査を怠ってはなるまい。

放射能への誤解が生む避難住民への差別、住み慣れた故郷からの退去を拒む人たち、原発閉鎖に伴う代替電源の確保や住民の再就職などは、いずれの事故にも共通する問題だ。周辺地域の汚染除去への取り組みやナタネ栽培による土壌浄化の試みなど、事故後の対策でもチェルノブイリを参考にすべき事例は多い。

日本で起きた「想定外」の事故は国際社会にも衝撃を与えた。チェルノブイリ事故から25年にあたって19日、ウクライナで開かれた首脳級の国際会議で、日本の高橋千秋副外相は、福島原発事故の早期収束と、検証結果などの情報公開を約束した。事故の教訓を国際社会と共有していくことで新たな国際貢献につなげるよう望みたい。

読売新聞 2011年04月26日

チェルノブイリ 今こそ「史上最悪」に教訓学べ

旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で、「原発史上最悪」と言われる事故が起きてから、26日で25年を迎えた。

東京電力福島第一原発の事故収束が難航している今こそ、教訓を学びたい。

チェルノブイリの事故は、運転操作の誤りが原因だ。炉内で爆発的な核反応が起き、火災も発生した。放射性物質が吹き上げられ、欧州など広範囲が汚染された。

大量の放射線被曝(ひばく)で作業員ら28人が死亡した。周辺の子供たちに甲状腺がんが多発するなど、健康への影響が不安を広げた。

日本政府は、この事故を、運転規則違反と旧ソ連型原発の構造上の欠陥による「人災」とし、日本の原発は安全と強調してきた。

結果的に、この認識は甘かったと言わざるを得ない。

福島の事故は状況が異なり、放出された放射性物質の量も桁違いに少ない。だが、共に国内外に深刻な影響が及んだ。技術に完璧はない、と改めて認識すべきだ。

原発の安全性を向上させる国際基準作りが検討されている。日本は福島第一原発の事故データを速やかに提供するなど、積極的に関与して行かなければならない。

旧ソ連は、原発事故の5年後に崩壊した。共産党の事故対応のまずさが一因とされる。情報の秘匿が国民の不信を招いた。

福島第一原発事故でも、政府の情報公開に内外から不満が出ており、丁寧な説明が求められる。

チェルノブイリの事故は事後処理のあり方にも問題を残した。

壊れた原子炉は、今なお解体のめどがつかない。放射性物質の漏出を封じるため建設されたコンクリート製の覆い「石棺」は、老朽化して雨漏りしている。地下水の汚染も止まらない。

覆いの追加工事が予定されているが、費用は約10億ドル(約820億円)と見積もられている。

周辺30キロ・メートルは居住や立ち入りが制限されたままで、放射性物質の汚染は、この外にも広がる。

福島第一原発を、こうした「負の遺産」にしてはならない。当面は冷却機能の回復が急務だが、政府と東電は、解体や撤去の方策も早期に検討するべきだろう。

原発は大事故が起きると被害は甚大で、原状回復に長い時間がかかる。これが最大の教訓だ。

一層の安全性向上への取り組みと、そのための資金投入を惜しむことがあってはならない。

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