避難所の長期化 仮設建設を真剣に急げ

朝日新聞 2011年04月21日

仮設住宅 知恵出して建設急ごう

東日本大震災では、なお10万人を超える人たちが避難所で生活している。衛生面や医療の態勢はまだまだ不十分で、生活はプライバシーに乏しい。心身の不調を訴える人が目立つ。

行方不明の家族を捜し続ける人。農業や漁業をしてきて他の地域に移ることが難しい人。事情は様々だが、住み慣れた土地に、一刻も早く、ゆっくり過ごせる住まいを用意したい。その柱となるのが仮設住宅だろう。

岩手、宮城、福島の3県を中心に、すでに7万戸を超える要望が寄せられている。国土交通省は「できるだけ夏までに完成させたい」としているが、思うように進んでいない。

建設資材が高騰したり、上下水道や電気、ガスの整備にかかわる専門要員が不足したりと、課題は多い。海外からの安い資材を使い、国や他の自治体から応援部隊を派遣するなど、対策を急いでほしい。

難題は建設用地だ。予定戸数の半分も確保できていない。

被災地の多くは山が海に迫り、貴重な平野部は津波に襲われた。国や自治体の公有地だけではとても足りない。

農林水産省は、農地転用に伴う手続きをゆるめ、休耕田や耕作放棄地に関する情報を自治体に提供するよう呼びかけた。

遠方に住む土地の所有者に連絡を取っている市町村も少なくない。一歩進め、所有者がわからなかったり、多くの地主がかかわったりする空き地も使えないか。個人の財産権がからむが、国や自治体が期間限定で借り受け、事後に使用料を払えるよう、法律を整えるのは可能だろう。自治体から要望があれば、取り組むべきだ。

宮城県では、津波の被害が大きかった南三陸町で、被災した小中学校に仮設住宅を建てる方向で検討中だ。内陸部には用地があるが、地元にとどまりたいとの住民の希望が強いためという。万一の場合の避難方法をしっかり検討してほしい。

岩手県では、被災した大船渡、陸前高田の両市に近い住田町が、地元材を使って「木のぬくもりのある仮設住宅」を準備中だ。内陸にある住田町は震災の被害を免れ、力を入れる林業を生かして支援に乗り出す。こうした住宅なら、被災者も入居しやすいのではないか。価格も、大手住宅メーカーによるプレハブ住宅の半額強という。

住まいの確保は時間との闘いになりつつある。避難者に納得してもらい、市町村の垣根を越えて移ってもらうことも避けられないだろう。その前に、官民あげて知恵を出したい。

毎日新聞 2011年04月18日

避難所の長期化 仮設建設を真剣に急げ

東日本大震災で避難した被災者の避難所での生活がすでに1カ月以上を経過、長期化の様相をみせている。仮設住宅建設が難航する一方で、他の自治体の公営住宅などへの移転もなかなか進まないためだ。

プライバシーの維持や衛生上の問題も多い避難所での生活が長引くことは被災者の健康や生活水準を維持するうえで、大きな脅威となる。政府は長期化を防ぐ決意を明確にし、仮設住宅の建設促進などあらゆる手だてを講じるべきである。

津波や原発事故のため、被災者のうち約14万人は今も避難先で暮らす。体育館などで段ボールを家族の「仕切り」とするような生活ではプライバシーも守られず、精神的につらい。高齢者が多いこともあり、生活環境の悪さから持病が悪化したり肺炎で亡くなるなど震災関連死と呼ばれるケースが深刻化している。

政府は7万戸の仮設住宅の建設を目標としており、上積みする方針。だが、震災から1カ月以上たっても着工は9000戸に満たず、進捗(しんちょく)ははかばかしくない。被災を免れた高地などを探すため、適地がみつかりにくいためだ。資材が確保しにくいことも追い打ちをかけている。

新潟県中越地震の際に旧山古志村の住民避難に村長としてあたった経験を持つ長島忠美衆院議員は「避難所生活を2カ月以上続けさせてはならない」と指摘する。来月第1週までに仮設住宅約4500戸完工という現在のペースは遅い。時間との闘いという要素をより強く、意識しなければならない。

政府は自治体と協力し、借り上げ費を公費負担しての民有地利用など、周辺自治体も含めての用地確保に手を尽くすべきだ。資材の調達も増産や輸入を急がねばならない。

それでも仮設の建設が間に合わない場合、他の自治体が提供する公営住宅や宿泊施設などへの2次避難をできるだけ活用すべきだ。避難所に情報が十分に伝わっているか、再点検する必要がある。

劣悪な環境でも住民が避難所を離れないのは、いったんほかの自治体に移れば故郷との結びつきが途絶えてしまう不安からだろう。たとえ半年後であっても、故郷の仮設住宅に戻れる目標がはっきりしていれば、2次避難は進むとの指摘もある。市町村別の詳しい建設スケジュールを早急に示すことが欠かせない。

仮設住宅に入居してからは物資の自力での調達が原則とされることや、通常の入居期間が2年であることが被災者の不安を生む要因にもなっている。今回の津波被災は復旧・復興にかなりの時間を要することは確実だ。こうした原則の見直しも早期に打ち出すべきである。

読売新聞 2011年04月20日

仮設住宅建設 用地と資材の確保に全力を

震災から1か月余、被災地では、現在も13万人以上の人たちがプライバシーのない避難所生活を強いられている。

被災者たちは、仮設住宅への一刻も早い入居を望んでいるが、建設は大幅に遅れている。国と自治体で知恵を絞り、建設を急がねばならない。

東北3県を中心に、被災地では計約7万2000戸の仮設住宅建設が必要とされている。完成した所から順次、入居を始める。

しかし、実際に入居手続きが行われたのは、岩手県陸前高田市の36戸に過ぎない。今月5日に行われた抽選では、入居希望者が殺到して、倍率は32倍に達した。

大畠国土交通相は19日、5月末までに3万戸を提供できるとの見通しを示した。残る4万2000戸についても、できるだけ早く建設のめどをつけてもらいたい。

建設が遅れている原因の一つに、用地不足がある。

津波に襲われた地区は避けたい。瓦礫(がれき)が散乱したままの所も多い。高台の平地が望ましいが、整地された公有地など、建設に適した土地は限られてくる。

阪神大震災でも用地確保は難航した。やむなく兵庫県は4万8300戸の仮設住宅の多くを、被災した市街地から遠い埋め立て地や郊外に建てた。だが、入居希望者は予想通りには集まらず、4000戸以上が空き部屋となった。

ほとんどの被災者は、住み慣れた土地の近くの仮設住宅に入居することを望んでいる。地域コミュニティーの維持や、被災者の生活再建も考慮すべきだ。遠方での建設は、できる限り避けたい。

用地確保のために、農地や工業用地など民有地の使用も検討できないか。従来の土地利用規制を一時的に停止するなど、思い切った対策も必要だろう。

もう一つの問題は、仮設住宅建設に欠かせない合板や断熱材などの資材が不足していることだ。

合板製造で全国の約3割を占めていた宮城、岩手両県の工場6か所が被災し、生産を中止した。

さらに、供給不足や値上がりを見越して、工事業者が必要以上の資材確保に動いたことも品薄に拍車をかけたとみられている。

資材の買い占めなどにより、仮設住宅の建設に支障が出ることはあってはならない。被災地に資材が十分に行き渡るよう、政府は監視を強める必要がある。

ただ、仮設住宅は、あくまで仮の住まいだ。恒久住宅の整備など将来の街づくりに向けた復興計画も併せて検討すべきだろう。

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