角界から八百長を排除する体制を整える。力士への処分をその契機にしなければならない。
日本相撲協会は力士ら23人を大相撲の八百長問題に関与したと認定し、処分を決定した。
「引退勧告」や「2年間の出場停止」などの処分が、現役力士21人と、現役時代の八百長行為を理由に親方2人に下された。現在、三役以上の地位にある力士は含まれていない。
処分は、いずれも事実上の角界追放となる厳罰である。所属する部屋の親方も監督責任を問われ、降格などの処分となった。相撲協会として、八百長に対し、厳しい姿勢を示した形だ。
だが、処分に至るまでの調査が十分だったとは言い難い。
弁護士らで構成する特別調査委員会が、疑惑を持たれた力士への事情聴取を行ったが、当初から関与を認めていた3人のほかに“自供”した力士はいなかった。
問題が発覚するきっかけとなった携帯電話のメール以外には、新たな証拠も見つからなかった。
結局、調査委は3人の供述と実際の勝負結果などを照らし合わせ、関与の有無を判断した。
八百長への関与を否定したまま処分を受けた力士たちには、釈然としない思いもあるだろう。
今後も調査は継続されるが、調査委に強制捜査権がない以上、全容解明は難しいといえる。
放駒理事長は「ウミを出し切るまでは、土俵で相撲をお見せすることはできない」と語ってきた。だが、ウミを出し切れない今の状況では、中止となった春場所に続き、5月の夏場所についても、通常の開催は難しい。
ファンあっての大相撲である。それを考えれば、相撲協会に求められるのは、処分を一つのけじめとして、八百長の再発防止を徹底することではないだろうか。
大相撲では、これまで幾度となく八百長疑惑が取りざたされてきた。しかし、相撲協会は「一切ない」と主張し続け、実態調査すら行わなかった。
まずは、臭い物にふたをする旧来の体質を改めねばならない。そのうえで、再発防止策を示し、ファンの理解を得ることが本場所再開の条件となろう。
土俵の再開を待ち望むファンは多いだろう。東日本大震災の被災地に相撲中継が流れれば、被災者の励みにもなるはずだ。
一日も早く白熱した真剣勝負をファンに見せる。それが相撲協会の責務である。
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