八百長相撲処分 再発防止が場所再開の条件だ

朝日新聞 2011年04月03日

八百長処分 「復興場所」で再起を

角界を揺るがした八百長問題が、ひとつの山を越えた。

日本相撲協会は23人の力士らが八百長に関与したと認定し、引退勧告などの処分を科した。事実上、角界からの追放を意味する厳罰である。

土俵への信頼を失墜させた今回の問題に厳しい態度で臨まねば、角界に未来はない。八百長の存在を初めて公に認め、異例の大量処分を言い渡したのは、協会の危機感の表れだろう。

処分を受けて、協会の大相撲新生委員会は近く、再発防止策をまとめる。放駒理事長が本場所再開の条件に挙げた「問題の全容解明」「関与力士の処分」「再発防止策」の3点セットのうちのひとつだ。

3月の春場所の中止以降、協会が思い描いてきたシナリオは5月の夏場所前に3点セットをそろえ、問題を収束させるというものだった。

だが、大量処分で幕内6人、十両9人を含む21人もの力士が土俵を去る事態だ。まだ疑惑が残るため、特別調査委員会の調べは続く。今回の処分で区切りとする青写真は狂った。とても、席料をもらって場所を開ける状態ではない。

この際、夏場所での本場所再開は見送るべきだ。かわりに、大震災の避難所をまわって、無料の「復興場所」を開いてはどうか。

大相撲は元来、寺院や神社などを建立、修繕する寄付を募るための勧進相撲に端を発している。東北は力士が多く輩出する地域で、相撲熱は高い。

校庭やお寺の境内に円を描くだけでもいい。力士同士の勝負はもちろん、子どもらとの相撲も喜ばれるだろう。出直しの一歩の意味もこめ、角界が貢献できることがあるはずだ。

今回の八百長問題の調査は、弁護士らを中心に構成される特別調査委が担った。

当初明らかになった八百長メール以外に物証がなく、関与を認めた親方らの証言に多くを頼った。処分への手順が十分だったとは言えない面もあり、不満を抱く力士らが提訴する動きもある。しかし、協会と力士が泥仕合になれば、捨て置かれるのはファンだ。

角界が今、やるべきことは何か。それは、皆が納得できる再発防止策を作ることだ。ファンが安心して応援できる相撲を、取り戻すのだ。

大きな痛みを伴った今回の大量処分を、角界は、自らの立ち位置を再確認する契機とするべきだ。ファンに支えられファンとともにある大相撲を、もう一度築き上げよう。

毎日新聞 2011年04月02日

八百長力士処分 引き続き厳しい監視を

八百長を認めた力士・親方は「出場停止」、疑惑を認めなかった者は「引退勧告」--。日本相撲協会は1日、臨時理事会を開き、八百長相撲に関与したと疑われる23人の親方、力士に対する処分を決めた。

「故意による無気力相撲」に対する協会の罰則は「除名」から「けん責」まで5段階ある。一番重い「除名」処分は出なかったものの、2番目の「引退勧告」、3番目の「出場停止」を適用した。

今年2月、本場所中の勝ち負けを金銭で売り買いしていたと疑われる携帯メールの存在が明らかになった。協会はただちに外部の有識者でつくる特別調査委員会を設置、委員会はメールに名前が出た現役力士や引退した親方らから直接話を聞くなど真相解明にあたってきた。

今回の処分内容からも調査委の作業が難航した形跡がうかがえる。携帯メールという「物証」があり、早い段階から八百長相撲を認めたのは元春日錦の竹縄親方ら3人だけだった。メールに名前が出て、疑いが濃厚とされた力士や親方の多くは全面否定を続けた。

調査委は疑惑をもたれた力士らに携帯電話の提出を求めるなど、新たな「物証探し」も試みたが、強制力を持たない調査委の要請に応える力士は少なく、しかも消去済みのメールの復元に手間取り、いまだに新たな証拠は出ていない。それでもメールに名前が出た13人を10人も上回る力士を「クロ」認定した調査委の苦労は評価すべきかもしれない。

全面否定しながら「クロ」と認定された力士から強い不満の声が出ている。力士や親方の職を奪うことになるため、裁判で身の潔白を訴える者も相次ぐことが予想される。

八百長疑惑が発覚後、3月の春場所(大阪)は中止に追い込まれた。このまま処分が長期化すると5月8日に初日を迎える夏場所も中止となる公算が大きくなっている。問題の長期化に対し、協会公認の大相撲支援組織である運営審議会や横綱審議委員会からは「ぜひとも夏場所は開催を」と求める声も出ている。

相撲どころで知られる東北地方は今回の大震災で大きな被害を受けた。被災地のお年寄りのためにも大相撲を開催すべきだとの考えもあるだろう。また、強制捜査権を持たない調査委がこれ以上調べを続けても大きな成果が上がる可能性は残念ながら乏しいと考えざるを得ない。

前代未聞の大量処分者を出した今回の「八百長疑惑」。中途半端に調査を打ち切った印象を相撲ファンに与えないためにも協会は引き続き厳しい監視の目を土俵内外に注がなければならない。それが全国の相撲ファンの期待に応える唯一の道だ。

読売新聞 2011年04月02日

八百長相撲処分 再発防止が場所再開の条件だ

角界から八百長を排除する体制を整える。力士への処分をその契機にしなければならない。

日本相撲協会は力士ら23人を大相撲の八百長問題に関与したと認定し、処分を決定した。

「引退勧告」や「2年間の出場停止」などの処分が、現役力士21人と、現役時代の八百長行為を理由に親方2人に下された。現在、三役以上の地位にある力士は含まれていない。

処分は、いずれも事実上の角界追放となる厳罰である。所属する部屋の親方も監督責任を問われ、降格などの処分となった。相撲協会として、八百長に対し、厳しい姿勢を示した形だ。

だが、処分に至るまでの調査が十分だったとは言い難い。

弁護士らで構成する特別調査委員会が、疑惑を持たれた力士への事情聴取を行ったが、当初から関与を認めていた3人のほかに“自供”した力士はいなかった。

問題が発覚するきっかけとなった携帯電話のメール以外には、新たな証拠も見つからなかった。

結局、調査委は3人の供述と実際の勝負結果などを照らし合わせ、関与の有無を判断した。

八百長への関与を否定したまま処分を受けた力士たちには、釈然としない思いもあるだろう。

今後も調査は継続されるが、調査委に強制捜査権がない以上、全容解明は難しいといえる。

放駒理事長は「ウミを出し切るまでは、土俵で相撲をお見せすることはできない」と語ってきた。だが、ウミを出し切れない今の状況では、中止となった春場所に続き、5月の夏場所についても、通常の開催は難しい。

ファンあっての大相撲である。それを考えれば、相撲協会に求められるのは、処分を一つのけじめとして、八百長の再発防止を徹底することではないだろうか。

大相撲では、これまで幾度となく八百長疑惑が取りざたされてきた。しかし、相撲協会は「一切ない」と主張し続け、実態調査すら行わなかった。

まずは、臭い物にふたをする旧来の体質を改めねばならない。そのうえで、再発防止策を示し、ファンの理解を得ることが本場所再開の条件となろう。

土俵の再開を待ち望むファンは多いだろう。東日本大震災の被災地に相撲中継が流れれば、被災者の励みにもなるはずだ。

一日も早く白熱した真剣勝負をファンに見せる。それが相撲協会の責務である。

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