新型インフル死者 重症化防止の戦略を

朝日新聞 2009年08月21日

新型インフル 大流行に備えた態勢を

新型の豚インフルエンザの感染が、急速な広がりを見せている。

国内の各地で集団感染が増え、推計では1週間に約6万人が新たに感染した。重症になる例も目立ち、先週末以来、死者の報告も相次ぐ。脳症を起こした子どもの入院も続いている。

インフルエンザが夏にこれだけ広がるのは異例だ。新型で、私たちの身体に免疫がないこともあろう。

舛添厚生労働相は「本格的な流行」を宣言したが、大流行となれば規模は今とは比較にならない。4人に1人が感染して、その1~2%が入院するともいわれている。

多くの地域でまもなく夏休みが終わり、新型インフルの感染が多い年代の中高生が学校に戻ってくる。秋冬を前に、備えを急がなければならない。

課題はいくつもある。

まず、新型用のワクチンをどう使うか、方針を決めておくことだ。

年内に用意できるのは、予定より少ない1500万人分ほどに限られる。厚生労働省は9月中に、どんな人から使うかの優先順位を決め、早ければ10月に接種を始める考えという。

ワクチンへの期待は高いが、どこまで有効か、実ははっきりしない。流行がこのまま広がれば、供給が追いつかない可能性もある。そうした限界も考えに入れたうえで、納得のいく方針を急いで示す必要がある。

待ったなしなのは、患者の急増に備えて医療態勢を整えておくことだ。

新型のインフルエンザは、ぜんそくなど呼吸器の慢性病、糖尿病、心臓や腎臓などの病気の人は、免疫力が下がっているので、重症になりやすいことがわかっている。国内で亡くなった人にも、こうした病気が見られた。

妊娠している女性や乳幼児なども、重症化するおそれがあるとされる。

生命に危険が及びそうな人たちは、早めの診断と治療で重症化を防がなければならない。幸い、抗ウイルス薬のタミフルなどを早く飲めば効果があるようだ。ウイルスの診断はすぐにつかないことがあるので、疑わしい場合にはすぐに治療するという姿勢も必要だろう。

感染がさらに広がれば、病院や診療所が患者であふれ、入院が必要な重症患者も急増することが予想される。

厚労省は6月、発熱外来だけでなくすべての医療機関で患者を診るように方針を改めたが、重症患者に対する診療態勢は、まだ不十分だ。

入院が必要になった患者の受け入れ態勢はどうか、人工呼吸器などの設備は足りているか、至急点検して対策を講じる必要がある。

健康な人は軽症ですむことが多いが、肺炎を起こす心配もある。油断せず、引きつづき感染防止と健康管理を心がけたい。

毎日新聞 2009年08月16日

新型インフル死者 重症化防止の戦略を

新型インフルエンザの感染者が増えれば、重症者や死亡者の増加は避けられない。多くの人が軽症で治る一方で、一部に重症化しやすい「ハイリスク」の人がいるからだ。

日本で初の犠牲者となった沖縄の男性も、ハイリスクだったようだ。急性脳症や肺炎で重症化する患者も出てきている。必要以上に恐れることはないが、今後も重症者や死者が出ることは覚悟すべきだ。症例をきちんと検討した上で、感染者の重症化防止にいっそう力を入れなくてはならない。

新型でも季節性でも、ハイリスクと考えられるのは、循環器病や呼吸器疾患、糖尿病、腎臓病などの持病のある人、それに妊婦や乳幼児だ。新型では、持病のない若者や成人の中にも重症化する人がいる。米国では、肥満もリスク因子のひとつと考えられている。

今回、死亡した50代の男性は、慢性腎不全で人工透析を受けていた。過去に心筋梗塞(こうそく)で治療を受けたこともあり、重症化のリスクが高かったと考えられる。

どこで感染したかは不明だが、ハイリスクの人は人ごみや感染リスクのある病院を避けられれば、それに越したことはない。しかし、透析を受ける人などは病院に行かないわけにはいかない。ハイリスクの人が訪れる病院では特に、院内感染を防ぐ手だてを徹底する必要がある。

抗インフルエンザ薬投与のタイミングも検討の余地がある。死亡した男性もそうだが、簡易検査では感染していても「陰性」と出るケースがかなりある。ハイリスクの人に対し、疑わしければ陰性でも投与するのかどうか、指針が必要ではないか。

子供のいる家庭では、急性脳症が増えてきているのが気になるところだろう。家庭や小児科での対応についても、政府や自治体が情報をまとめ、共有しておくことが大事だ。

ワクチンの使い方も重要な課題だ。作成中の新型ワクチンは量に限りがある。誰に優先的に打つか、政府は早く考え方を示し、議論を進めるべきだ。抗インフルエンザ薬も有効活用し、犠牲者を減らす戦略を早急に立てなくてはならない。

日本では現在、夏場にもかかわらず、インフルエンザの拡大が続いている。推計では毎週全国で2万~3万人の患者が発生しているとみられる。秋冬の大流行は避けられないだろう。

多くの人にとって季節性並みとはいえ、誰がハイリスクかはっきりしない部分もある。あなどらず、早期に診断・治療を受けることが重症化を防ぐことにつながる。自分は軽症でも、人にうつさないための注意も欠かせない。大量の感染者に対応できる医療体制の整備も急務だ。

産経新聞 2009年08月22日

新型インフル 限られたワクチン有効に

新型インフルエンザの流行が本格化し、ワクチン接種に関する議論がようやく始まった。ワクチンには「流行の拡大を防ぐ」「重症化しやすい人を守る」という2つの目的がある。十分な供給量が確保できれば2つは両立できるが、新しい病原体の感染症ではそれが困難な場合が多い。

厚生労働省によると、国内で年内に製造できる新型インフルエンザのワクチンは1300万~1700万人分にとどまる見通しだ。希望者すべてに対応できる量ではないので、接種の優先順位について、国民の多くが納得できる基準を打ち出す必要がある。

今回は患者の大多数が1週間程度で回復しているが、糖尿病、心臓病など基礎疾患を持つ人や妊婦は重症化しやすく、死亡のリスクも高くなる。この点を考え、「重症化しやすい人を守る」ことを優先させるべきだろう。

厚労省が20日に開いたワクチン接種に関する意見交換会でも、対策の専門家や基礎疾患を抱える患者団体の代表から、重症化のリスクの高い人や医療従事者への接種を優先させるべきだとの発言が相次いだ。意見交換会はもう一度、開かれる予定なので、厚労省はその意見も踏まえ、10月末とされる接種開始の前に具体的な優先順位を示してほしい。

国内の新型インフルエンザの患者数は5月以降、切れ目なく増えてきた。全国5千の定点医療機関の報告は、すでに季節性インフルエンザの流行開始の目安である「1」を超えている。舛添要一厚労相が「本格流行」を宣言したのも、広く国民に注意を促す時期に来たとの判断からだろう。

ワクチン接種は大流行に備えた重要な対策の一つだが、すべてではない。早期の治療で妊婦や基礎疾患を持つ人の重症化は防げる。流行の拡大スピードを遅らせ、医療機関に一気に患者が集中するような事態を避けることも大切だ。小さなことだが、うがいや手洗いの励行がその点では大きな効果につながる。

新型インフルエンザにかかった人が外出を控え、自宅で療養することは、他の人への感染の機会を減らすことにもなる。体調が悪ければ無理して出勤せず、回復するまで休む。企業がそれを徹底すれば、感染防止効果は大きい。ワクチンのみに頼るのではなく、総合的な対策の積み重ねが重要なこともこの際、認識しておきたい。

産経新聞 2009年08月19日

新型インフル死者 重症化しやすい人を守れ

新型インフルエンザにかかった50代と70代の男性が、沖縄と神戸で相次いで亡くなった。治療可能な感染症で死者が報告されることは、新型インフルエンザに限らず残念である。重症化のリスクが高いとされる人たちへの早期の治療提供など、流行の特徴にあわせた対策の重要性を改めて認識しておきたい。

今回の新型インフルエンザの症状の強さは、毎年冬に流行する季節性インフルエンザとほぼ同程度で、これまでにかかった人も大多数は1週間ほどで回復している。ただし、糖尿病や心臓病などの持病を抱える人、妊婦、幼児などは重症化するおそれがある。亡くなった男性2人は腎臓疾患で人工透析を受けていたという。

わが国の新型インフルエンザ対策はこうした重症化のリスクの高い人を守ることに重点を置こうとしている。方針としては間違っていない。問題はいかにそれを具体化していくかだろう。

ワクチンに関しては当面、供給量に限りがあるので、重症化しやすい人たちに優先的に接種していくことが必要だ。

それと同時に大切なことは、早期に治療を受けられる条件を整えることだ。持病を抱える人や妊娠した女性は定期的に医療機関に通院していることが多い。発熱などの症状にどう対応するか、主治医と相談しておくこともリスクを下げることになる。

わが国では対策の初期段階で、病原ウイルスは一歩たりとも国内に入れないといった過度な水際作戦が強調された。このため、かえって社会的な不安が増幅され、医療機関にも混乱が起きた。

その混乱の影響か、流行の推移について、第1波の流行は下火になり、秋以降に第2波が訪れるといった見方をする人もいる。

だが、感染報告の推移を見ると下火になどなったわけではなく、まだ本格的な流行とはいえない状態の中で、感染がじわじわと広がってきたことがわかる。重症化のリスクの高い人たちへの感染の機会も当然、増えてくる。

インフルエンザのような感染症で、完全に感染の機会を封じることは困難だが、感染しても早めに抗インフルエンザ薬を服用できれば、重症化のリスクは大きく抑えられる。リスクの高い人には躊躇(ちゅうちょ)せず、早めに薬を提供する。そうしたことを医療機関に徹底しておくことも必要だ。

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