被災者支援 避難先でのケアが必要

朝日新聞 2011年03月26日

被災者支援 情報をくまなく届けたい

東日本大震災から半月がすぎ、犠牲者は1万人を超えた。2万人近い人々の安否がなお分からない。まさに戦後最悪の自然災害である。

春とは思えぬ底冷えのなか、25万人の被災者が各地で避難生活を送っている。そのうち3万人は住み慣れた土地を離れ、県外に移った。

原発事故の影響で役所ごと住民が県外に避難した自治体もある。

岩手県陸前高田市で大津波に襲われた伊藤信平さん(75)夫妻は、長男の住まいに近い兵庫県三田市の市営住宅で暮らしはじめた。

町内会長もつとめた伊藤さんは後ろ髪を引かれる思いだ。「落ち着いたら戻りたい。でも陸前高田から生活支援の情報は届くだろうか」

遠隔地に移った多くの被災者が、こうした不安な思いを抱いている。

阪神大震災では、兵庫県外に移り住んだ人に仮設住宅の募集や災害援助金などの情報が届かず、もとの地域に戻れなかった例も少なくない。

生活を立て直す時に、避難した場所や状況の違いで格差が生じないようにしたい。自治体は被災者の避難先などをいち早くつかみ、支援情報がもれなく届く仕組みをつくる必要がある。

兵庫県西宮市が開発した支援システムが活用できる。住民基本台帳をもとに、一人ひとりの被災時やけがの状況、避難先、学校名などの情報を一括して登録する。

「被災者台帳」ともいえるこのソフトは、生活再建に欠かせない罹災(りさい)証明書の発行や義援金の交付などに役立つ。財団法人・地方自治情報センターのサイトから入手できる。

岩手、宮城両県は震災後、被災情報の整理に住基ネットを使えるよう県条例を改正した。住民基本台帳を管理するサーバーが流されても、住所氏名といった住基ネットの情報に避難先など必要なデータを加えることができる。

だが実際には、行政機能がマヒした被災自治体はシステム整備に手が回らないだろう。被災地外の自治体や企業、ボランティアの応援が欲しい。

避難してきた人を受け入れた自治体が、被災自治体に代わって情報を届ける方法も考えたい。

神戸市が今回始めた避難者登録制度は参考になる。市営住宅の入居者を登録し、被災自治体と連絡をとりながら、郵便などで情報を届ける。親類宅などに身を寄せる人は自ら登録に足を運んでもらう。

被災地を離れて暮らす人はこれからも増えるだろう。原発事故もあり、避難の長期化を覚悟しなければならないかもしれない。

住み慣れた地域とつながっている。そう実感できれば生活を再建する気持ちも強くなる。心の通った暮らしができるよう環境を整えたい。

毎日新聞 2011年03月25日

被災者支援 避難先でのケアが必要

衰弱したお年寄りや家族らがフロアを埋め尽くし、要介護高齢者は廊下でおむつを替えられていた。埼玉県内の特別養護老人ホームに勤務する職員はさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)を訪れ言葉を失ったという。発熱して脱水症状を起こしている人、意識レベルが低下している人など5人の高齢者と家族2人をそのまま車に乗せ、自分の特養ホームに連れていった。その翌日から地元の行政職員が治療や保護の必要な人を収容可能な福祉施設へ移し始めたが、当初は医師や弁護士、司法書士らが被災者から話を聞いているだけだったという。

千葉県内で特養ホームや訪問看護ステーションを経営する事業者は窮状を知り、県を通して被災者の受け入れを申し出た。千葉県の調査で同県内の各施設合わせて計約600人を保護できることがわかったが、被災地の自治体と連絡が付かず、厚生労働省の調整も進まない。

被災者の中には高齢の人が多い。救助されて命は取り留めても、避難所で食べ物や水が十分にないとあっという間に健康状態が悪化する。狭い場所で寝たきりや座ったままでいると要介護度も急速に進む。避難した先で必要なケアに結びつかなければ再び生命が脅かされることになるのだ。受け入れ可能な施設や病院は全国にたくさんあるが、被災者とのマッチングがうまくいかないままではせっかくの善意も生かされない。

亀田総合病院(千葉県鴨川市)は福島県いわき市の老人保健施設「小名浜ときわ苑」のお年寄りと職員計184人を丸ごと引き受けた。同苑の嘱託医師や職員らはお年寄りらとともに病院近くの「かんぽの宿鴨川」に滞在し日常的なケアを提供している。いわき市は一時的に市の「飛び地」とみなし、介護保険の費用負担などもいわき市内で生活している時と同様の扱いにするという。亀田総合病院は医療面のバックアップだけでなく県や市との連絡調整も行っている。

被災地の自治体の機能回復が遅れている現状では、施設あるいは避難所を丸ごと移転させ、受け入れ先の施設や病院が地元自治体と協力してケア体制を整えることは有効だ。被災地の自治体ごと遠隔地の自治体が分担して受け入れることも検討してはどうか。さいたまの特養ホームは身元証明がないまま高齢者を保護した。同行した家族の滞在費も現在は施設側が負担している。だが、制度は後付けで調整していくしかない。国も全面的に支えるべきだ。

被害が甚大なだけに避難生活が長期化しそうな人は多い。被災した人々に第二のふるさとを創造するくらいの思いで取り組むべきだ。

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