リビア軍事介入 虐殺防ぐための正当な行動だ

毎日新聞 2011年03月21日

リビア軍事介入 新たな泥沼にせぬよう

北アフリカ・リビア情勢はついに国際的な軍事行動に発展した。国連安保理がリビア上空に飛行禁止空域を設定する決議を採択したのに続いて、仏軍機がリビア領内でカダフィ政権の軍用車両を空爆し、米英軍はトマホーク巡航ミサイルで対空防衛施設など約20カ所を攻撃した。

きわめて重大な局面である。私たちは、反政府運動を抑圧するカダフィ大佐の辞任を求めるとともに、国際社会による拙速な軍事行動を戒めてきた。しかし、大佐は辞任や抜本的な改革を決意するどころか、強硬手段で市民を攻撃し続けた。

そんな状況に終わりが見えず、人道危機が深刻化している以上、飛行禁止空域の設定はやむを得ない。攻撃の詳細は明らかでないが、決議に沿って欧米軍がカダフィ政権軍を攻撃したのも、正当な行為とみなされよう。カダフィ政権は決議に従うと表明したはずだ。軍事介入を招く行動を直ちにやめるべきである。

採択された決議には「カダフィ政権の攻撃の脅威にさらされるリビア市民を守るあらゆる方策をとる」との文言が盛り込まれた。飛行禁止空域は90年代にフセイン政権のイラクやボスニア・ヘルツェゴビナに対して設定されたことがあり、今回はカダフィ政権側が航空機を使って市民を攻撃することを防ぐ措置だ。

軍事作戦は、19日に英仏独首脳とクリントン米国務長官、アラブ連盟代表などがパリで多国間会合を開いた後に実行された。カナダとイタリアも作戦に参加し、アラブ首長国連邦とカタールも監視活動に加わるという。カダフィ政権はアラブ世界からも見放された格好だ。日本政府も軍事介入を支持している。

しかし、軍事介入によってリビア情勢が改善されるかどうか、疑問をぬぐえないのも確かだ。米オバマ政権は限定的な軍事作戦と位置付けて地上軍の投入を否定した。99年の北大西洋条約機構(NATО)によるユーゴスラビア空爆に関して、最後まで地上軍派遣を拒んだクリントン政権の姿勢に似ている。

リビア側の被害は明らかでないが、死者48人という報道もある。カダフィ政権側は「長い戦いになる」と反発しており、国際的な要求に沿って、反政府派の拠点ベンガジなどへの進撃をやめるとは考えにくい。欧米としても、限定的な軍事介入で効果が上がらなければ、さらに大規模な軍事行動が必要になろう。

約40年リビアに君臨してきたカダフィ大佐の辞任を重ねて求めたいが、辞任を促すにはアラブ連盟や友好国による説得も必要だろう。イラクとアフガニスタンに続いて新たな泥沼に踏み込まないために、国際社会の賢明な協力が必要だ。

読売新聞 2011年03月21日

リビア軍事介入 虐殺防ぐための正当な行動だ

内戦状態にある北アフリカのリビアに、米英仏軍主力の多国籍軍が軍事介入した。

カダフィ政権側の戦車や装甲車を仏軍機などが爆撃し、防空施設を英米軍が巡航ミサイルで攻撃した。

今回の作戦は、国連安全保障理事会の決議1973に基づく正当な人道的介入である。決議は、政権側の攻撃にさらされる市民を保護するため、リビア上空に飛行禁止空域を設けるなど「占領以外のあらゆる措置」を認めている。

リビアでは、カダフィ圧政の打倒に立ち上がった反体制派が、地中海沿岸地域の東半分を一時掌握したが、軍備で圧倒する政権側が巻き返し、反体制派の拠点ベンガジが陥落寸前となっていた。

ベンガジ陥落に伴う虐殺を回避するためには、軍事介入はやむを得ない選択だった。

安保理決議の採決では、中国、ロシア、ドイツ、インド、ブラジルの5か国が棄権した。しかし、反対票を投じなかったことで暗黙の了解を与えたとも言えよう。

ドイツの場合、作戦参加国の負担を減らすため、アフガニスタンでの任務を拡大するという。軍事介入の賛否をめぐって世界が二つに割れているわけではない。

カダフィ氏は欧米の軍事作戦を「第2の十字軍」だと非難している。キリスト教徒の十字軍がイスラム世界を蹂躙(じゅうりん)した史実を引き合いに出し、アラブの国々の反発をあおろうという魂胆だろう。

だが、今回の作戦は、イスラム教徒の対米不信を招いた2003年のイラク戦争とは異なる。

軍事介入を求めたのは、圧政に苦しむリビア国民であり、アラブ連盟も支持した。根本的に構図が違うのである。

カダフィ政権は、安保理決議後に停戦を約束しながら反故(ほご)にし、徹底抗戦の構えに転じた。しかし残された道は、即時停戦と東部からの撤退以外にはあるまい。

今回の作戦は、仏英両国が主導し、米国が追随する形になった。仏英両首脳が介入を急いだ背景には、独裁政権崩壊の先例となったチュニジアやエジプトへの対応で後手に回り、国内外の批判を浴びた苦い経験もあるのだろう。

日本政府が、政権側の暴力即時停止を求める立場から軍事行動に支持を表明したのは、当然だ。

産油国リビアで混乱が長期化すれば、原油価格が高騰し、世界経済のみならず、大震災からの復興を目指す日本にも影響する。日本は、リビアの早期安定化にも協力を惜しむべきではない。

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