G7電話会談 協調介入が円急騰を止めた

毎日新聞 2011年03月19日

円売り協調介入 G7の存在感示す時

大規模な地震、津波、原発事故と戦後最大の災禍に見舞われた日本を、今度は市場の激震が襲った。外国為替市場で対ドルの円相場が一気に6円以上も上昇し、戦後最高値を更新、株式市場も日経平均株価が史上3番目の下落率を記録した。

日本経済の先行きを案じた円売りが活発化しそうな局面なのに、正反対の現象である。「保険会社などが、手元資金を確保するため海外資産を売って円に替えるから」といった説明もあるが、投機マネー主導の色彩が濃い。先進7カ国(G7)の財務相と中央銀行総裁が、急きょ電話会議を開き、円売りの協調介入で合意したのは、適切な対応だった。

円高であれ円安であれ、短期間に為替相場が激変するのは好ましくない。特に日本は今、世界的にも例を見ないような困難のただ中にある。被災地支援、原発事故対応といった目の前の試練だけでも十分大きすぎる。加えて景気の急減速が心配され、先が見えない中で企業は事業の再開や停電回避に全力を挙げている。

そこへ市場の混乱が深刻な追い打ちとなるような事態だけは回避したい。海外の株式市場に波及したことが示すように、世界経済にとっても重大な局面だ。G7が異例の協調介入で合意した背景にはそうした認識があったのだろう。G20(主要20カ国・地域)の台頭で、影の薄かったG7が存在感を発揮した。

G7合意を受けた政府・日銀の円売り介入により、円高はひとまず反転した。株式相場も上昇した。ただ、今後も警戒を続ける必要がある。再び大幅な円高となるようなら、G7は連帯の意志を繰り返し行動で示す必要がある。

今回は急激な円高だったが、円の暴落はもっと恐ろしいかもしれない。資源や食料の価格が世界的に上昇しており、輸入物価の高騰を招くからだ。投資資金の国外逃避にもつながる。為替相場の安定こそが肝心で、政府・日銀には市場の信頼獲得に努めてもらいたい。当局の適切な対処が市場に伝われば、不安心理の拡大を防ぐことができよう。復興の名の下に赤字国債を大量発行し日銀に引き受けさせるといった安易な策は円の信認を失墜させるだけだ。

今回の大震災を受け、海外でも原発への依存度を下げる動きが出てきた。火力発電用の石炭に対する需要増などが見込まれる。政府や電力各社は、石炭をはじめとする今後のエネルギー源の安定確保を目指し、円高を最大限利用するくらいの構えで戦略を練ってほしい。

今は人命にかかわる領域で事態を改善させるのが最優先だ。しかし、今後はこうした中長期的な視点も重要になってくる。

読売新聞 2011年03月19日

G7電話会談 協調介入が円急騰を止めた

行き過ぎた円高の阻止へ、日米欧の先進7か国(G7)が18日、電撃的な円売りの協調介入に踏み切った。

これを受け、前日の為替市場で一時1ドル=76円25銭の戦後最高値をつけた円相場は、81~82円台に値下がりした。東京株式市場にも安心感が広がり、株価は大幅に上昇した。

今回の協調介入は、東日本巨大地震に見舞われた日本を支援するG7の結束を示した形だ。高く評価できよう。

協調介入にあたり、G7は財務相・中央銀行総裁会議の緊急電話会談で共同声明をまとめた。

声明は「為替相場の過度な変動や無秩序な動きは、経済や金融の安定に悪影響を与える」と強調し、「日本からの要請に基づき、協調介入を実施する」と明記した。

個別国の意向に沿った行動であることを明らかにするのは、G7として極めて異例だ。

G7の協調介入は、ユーロ安を阻止する目的で2000年9月に実施して以来、約10年半ぶりだ。日本が昨年9月に円売り・ドル買い介入した時は単独介入で、米欧は同調しなかった。

今回、米欧が協調介入に参加したのは、日本経済の現状に懸念を強めたからだろう。

大震災と、東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響が憂慮される中、円急騰が長期化すれば、自動車などの輸出産業の業績を悪化させ、日本経済がさらなる打撃を受ける恐れが強い。

日本経済の低迷は、世界の為替相場や株式市場の混乱を招き、回復基調にある世界経済にも悪影響を及ぼしかねない。

そうした事態を回避し、日本の震災復興と景気回復を支援することが、世界経済にとっても極めて重要とG7が判断した。

円急騰の発端は、大震災後に円高進行を見込んだヘッジファンドなどの投機筋による思惑的な円買いだった。

金融危機後、ヘッジファンドの規制強化を検討してきたG7としては、こうした行動を見逃すことができない事情もあろう。

ただ、今後の為替相場は楽観できない。通貨当局による円高是正の決意を試すような投機筋の動きが予想されるためだ。政府・日銀は米欧との連携を深め、必要となれば、介入を継続すべきだ。

協調介入に踏み切ったものの、大幅な円高修正を望む日本に対し、米欧がどの程度の円安水準を容認するかは不明だ。相場を注視しなければなるまい。

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