計画停電 説明不足が招いた首都大混乱

朝日新聞 2011年03月15日

計画停電 我慢と共助のときだ

太平洋沿いの被災地で救出活動が続く。数十、数百と遺体が見つかり、つらい現実を突きつけられる。厳しい避難所生活も始まっている。長丁場の助け合いへの決意を、国民全体で共有することが欠かせない。

被災は列島の広範囲に及んでいる。週明けの関東圏は、早朝から混乱に見舞われた。震災で電力不足に陥った東京電力が地域ごとの「計画停電」を発表し、JRをはじめ鉄道各社があわてて運休や間引き運転を決めた。

朝起きてみたら通勤の足がなくなっていた、という人たちも少なくなかった。限られた運行路線では各駅がごったがえした。

それでも多くの駅では人々が辛抱強く列をなし、黙って満員電車に揺られた。がれきの中で十分な暖もなく、一生懸命に家族をさがす被災地の人たちを思えばこそ、「この程度のことで」と自制する気持ちが整然とした行動につながったようだ。

電力が足りなくなることは、大震災の当初から明らかだった。計画停電や節電による生活への影響を甘受してでも協力したいと考える人は少なくないはずだ。だからといって、やぶから棒なやり方ではいけない。

地域と時間を前もって知らせ、家庭や企業に準備を促すことが必要だ。そのほうが混乱を防げるだけでなく、節電の効果も上がるだろう。

停電でとりわけ心配なのは、人工呼吸器など医療機器を必要とする人たちだ。入院患者に限らず、在宅療養している人たちにとっても、停電が長引けば命にかかわりかねない。

混乱を生んだ理由について、東電側は「停電を避けようと最後まで調整したため」と説明した。だが、計画停電をあらかじめ知らせておいた地域で結果的に停電がなかったとしても、それで怒る人は多くないはずだ。事前の周知を優先したい。

東電管内では当面、恒常的な電力不足が続くことに変わりはない。企業も役所も家庭も、みんなで節電に取り組むべきであることは論をまたない。

都心部の銀座では夜になっても商業施設の照明やネオンが目立った。まだまだ節電の余地はある。政府は、企業や学校などに思い切った休業や節電を呼びかけ、どこまで成果が上がるかをまず試してみてはどうか。

ピーク時の消費電力を下げるためには、さまざまな手法を駆使しなくてはならない。

未曽有の災害のただ中で、私たちには不便さや我慢を引き受ける覚悟がある。だからこそ政府に求めたいのは、国民の生命と財産を守り抜き、かけがえのない生活を混乱から救い出すことである。

明確な指針を早く決め、国民の共助の力を大きく引き出してほしい。

読売新聞 2011年03月15日

計画停電 説明不足が招いた首都大混乱

電力不足の非常事態とはいえ、国民への説明を軽視した姿勢は強く批判されて当然だ。

東京電力が管内の1都8県(関東全域に静岡県の一部と山梨県)を対象に、14日から実施した「計画停電」のことである。

対象区域と時間帯をあらかじめ決めて周知し、停電しても混乱が起きないようにする仕組みだ。管内を五つのグループに分け、3時間ずつ電気を止める。4月末まで実施するという。

東日本巨大地震の影響で供給能力が落ち、早期に停電に踏みきらないと、より大規模な停電が起きかねないことは理解できる。

東北地方では完全に停電している地域が多く、東電管内の利用者も一定の不便を耐え忍ぶべきだ、との声もあろう。

だが、対象区域の公表が前日夜にずれ込み、当日の朝になっても内容が二転三転するなど、大混乱を引き起こしたのは問題だ。

政府と東電が、自治体や交通機関と十分協議しないまま見切り発車したのが一因だろう。とても「計画」の名に値しまい。

政府が13日夜、先に計画を国民に訴えるため、東電側の説明を遅らせた、との指摘もある。そうだとしたら、政府の責任は重い。

今後の計画停電の実施に当たっては、政府と東電が協力して関係機関との調整を進めるべきだ。内容をしっかり詰め、早め早めに公表していかねばならない。

東電の供給能力は、春季なら5000万キロ・ワット程度ある。だが、地震で福島第一、第二原子力発電所が機能停止した。太平洋岸の多くの火力発電所も止まった。

新潟県の柏崎刈羽原発も中越沖地震の影響で、フル操業にはほど遠い状況にある。

このため、14日の供給可能な電力は3100万キロ・ワットにとどまるという。一方、需要は4100万キロ・ワットと見られ、1000万キロ・ワット分不足する。これが計画停電に追い込まれた原因だ。

通勤通学の足となる鉄道や、多くの患者を抱える病院なども一律に対象とされた。国民生活に欠かせない機能を担うこうした機関は例外扱い出来なかったのか。

電力需要が急増する夏場には、再び計画停電を実施するという。それまでに電力各社間の融通体制を強化することが肝要だ。

東日本と西日本の電力会社は周波数が違い、簡単には電気のやり取りができない。周波数の変換所の能力を抜本的に高めるよう、電力業界は検討に入るべきだ。

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